最後期のザ・ラスカルズが
本気でロックした
『アイランド・オブ・リアル』
アトランティック後期のアルバム
6thアルバム『シー』(‘69)でもチャック・レイニー、ロン・カーター、ヒューバート・ロウズ、ジョー・ブシュキンら、前作と同様ジャズ系のサポートミュージシャンが参加している。この作品ではフェリックスの書いた曲が増えているが、この頃既にエディはグループに対する熱意が薄れてきていたのかもしれない。よく練られた曲が並ぶ良いアルバムだと思うが、セールス的には失敗している。7th『ラスト・アルバム(原題:Search And Nearness)』(’71)は、レコーディングの途中でエディとジーンの二人が脱退したが、もはやラスカルズはフェリックスのソロプロジェクトみたいなものなので、前作と比べてもサウンドの変化はない。前作がセールス的に振るわなかったため、このアルバムがアトランティック最後の作品になることは事前に分かっていた。コロンビアへの移籍がすでに決まっていたせいか、アトランティックがプロモーションをしなかったから、結果としてこのアルバムも売れなかった。前作同様ゴスペルからの影響が感じられ、重厚なサウンドに仕上がっていて内容は良い。
コロンビア移籍から解散まで
コロンビア移籍第1作『ピースフル・ワールド』(‘71)は2枚組の大作で、フェリックスのお気に入りのヒューバート・ロウズをはじめ、ジョー・ファレル、ロン・カーター、アリス・コルトレーン(ジョン・コルトレーンの妻)、ラルフマクドナルド、チャック・レイニー、ジェリー・ジェモットなど、ジャズ/フュージョン界から豪華なメンバーが参加している。バジー・フェイトンのギターはすでにフュージョン的なテイストを感じさせており、彼の非凡な才能は光っている。
本作『アイランド・オブ・リアル』
について
収録曲は11曲(のちにCD化に際して2曲ボーナストラックが追加された)。バジーが1曲、ポップウェルが1曲提供している他はフェリックスの曲で、これまで以上の充実した楽曲群になっている。アープ(Arp)が効果的に使われており、70年代中期にリリースされたポップソウル系の作品(ネッド・ドヒニー『ハード・キャンディ』(‘76)やアベレージ・ホワイト・バンド『カット・ザ・ケイク』(’75)など)でもアープが使われているのは、本作の影響かもしれない。
本作は売れなかったが、それは時代を先取りしすぎていたからだと思う。フィフス・アヴェニュー・バンド、オハイオ・ノックスのような東海岸産のポップ感覚とタワー・オブ・パワー、アベレージ・ホワイト・バンドを思わせるファンクサウンド(これはポップウェルの参加が大きい)が同居したようなサウンドは、本作より数年遅れて登場するAORやフュージョンの先駆と言えるものだ。フェリックスが頭に描いた都会的で瀟洒なサウンドは、売れるにはまだ早すぎた(バジー・フェイトンのギタープレイも新しい)のである。本作『アイランド・オブ・リアル』は、翌年の73年にリリースされたホール&オーツの『アバンダント・ランチョネット』と並んで、僕にとっては忘れられない革命的なサウンドを持ったアルバムである。
TEXT:河崎直人