観劇の予習に! 2020年秋冬上演予定
ミュージカルの映画版3選/ホーム・
シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ
1-2-3 [vol.26]

おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者たちが激オシする「My Favorite 映像」の3選です。(SPICE編集部)
ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3[vol.26]<ミュージカル映画編>
2020年秋冬上演予定ミュージカルの映画版3選​ by 松村蘭(らんねえ)
【1】『プロデューサーズ』(2005年・映画版)
【2】『NINE』(2009年・映画版)
【3】『レント』(2005年・映画版)​

劇場に行きたい! でも行けない! じゃあ今できることは? ……次の観劇のために予習をしておくことだ。
というわけで、2020年秋冬に日本で上演予定の3つのミュージカル作品、『プロデューサーズ』『NINE』『RENT』をそれぞれ映画化したソフトをご紹介する。純粋にミュージカル映画として楽しむもよし、ストーリーや曲をしっかり頭に入れて観劇に備えるもよし、今年出演予定のキャストに脳内変換して想像を膨らませるもよし。いずれもミュージカル映画として素晴らしい作品なので、ご家庭で思う存分楽しんでほしい。

【1】ひたすらにミュージカルへの恋しさ募る『プロデューサーズ』(2005年・映画版)
映画『プロデューサーズ』 予告編

「ああ、ブロードウェイでミュージカルが観たい」
エンドロールを観ながら、多くの人がそう思うのではないだろうか。
ミュージカル映画『プロデューサーズ』(2005年)は、トニー賞12部門を受賞した同名の大ヒットミュージカルを基に映画化した作品。ミュージカル版で演出を手掛けたスーザン・ストローマン自身が映画の監督も務めている。さらに、本作にはミュージカルのオリジナルキャストが4名出演(ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ゲイリー・ビーチ、ロジャー・バート)しており、ミュージカルの舞台の要素が色濃く反映されている。
ちなみに元祖『プロデューサーズ』は、意外なことにミュージカル作品ではない。元々はコメディ映画の巨匠として知られるメル・ブルックス監督/脚本の1968年の映画作品で、こちらはアカデミー脚本賞を受賞している。
物語の舞台はもちろん、ニューヨークの劇場街ブロードウェイだ。
主人公は二人の男。かつては“ブロードウェイの王様”と呼ばれたが、今は落ち目のプロデューサーのマックス・ビアリストック(ネイサン・レイン)。そしてブロードウェイのプロデューサーになることを密かに夢見る、冴えない会計士のレオ・ブルーム(マシュー・ブロデリック)。
ある日、レオが帳簿確認のためマックスの事務所を訪れた際、「ミュージカルは大コケした方が儲けられる」ことに気付く。マックスとレオは、最悪の脚本・最悪の演出家・最悪のキャストを揃えて一晩で打ち切りになるような駄作を作り、リオへ高跳びするという無茶な計画を立てるのだが……。
ストーリーはバックステージもののドタバタコメディ。決してお上品とは言えないネタや直接的な表現も多く、登場人物全員の癖がやたらめったら強い。
マックスはニューヨーク中の老婦人に最後のロマンスを与え、それと引き換えに資金を受け取るのが常套手段。レオは臆病でヒステリー持ち。精神安定のお守りとして、赤ちゃんの頃から青い毛布の切れ端を肌身放さず持っている。
そんな二人が計画を進める中で登場するのが、ヒトラーに心酔するドイツ人脚本家フランツ・リープキン(ウィル・フェレル)、女優志望だがスウェーデン訛りの強いセクシー美女ウーラ(ユマ・サーマン)、明るいショーが得意なゲイの演出家ロジャー・デ・ブリー(ゲイリー・ビーチ)など……強者だらけだ。
この破天荒なキャラクターたちの織りなす喜劇を観ていると、「そうそう、ミュージカルってやっぱり最高だよね」と思えてくるから不思議である。きっと作品の随所にブロードウェイミュージカルへの愛が溢れているからなのだろう。ミュージカル好きの方は、ぜひその目で確かめていただきたい。
日本版のミュージカル『プロデューサーズ』は、2005年と2008年にマックス役を井ノ原快彦(V6)、レオ役を長野博(V6)のコンビで上演されている。そして2020年11月東急シアターオーブで、なんと12年ぶりに上演予定だ。マックス役は井上芳雄、レオ役は吉沢亮と大野拓朗のダブルキャスト、演出は福田雄一が務める。
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【2】ワイン片手にくつろぎながら映像美に酔いたい『NINE』(2009年・映画版)
映画『NINE』予告編
かつて、これほどまでに映像美にこだわったミュージカル映画があっただろうか。
イタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニの自伝的映画『8 1/2』(1963年)を原作に、脚本アーサー・コピット、作詞/作曲モーリー・イェストンという、ミュージカル『ファントム』でもお馴染みのコンビが生み出したブロードウェイ・ミュージカル『NINE』。そのミュージカル作品を、3度のアカデミー主演男優賞受賞経験を持つ名優ダニエル・デイ=ルイス主演で映画化したのが、今回ご紹介するミュージカル映画『NINE』(2009年)だ。監督はブロードウェイで振付家としても活躍していたロブ・マーシャル。他に『シカゴ』(2002年)や『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018年)などの監督作品がある。
ダニエル・デイ=ルイス演じるイタリアの色男グイド・コンティーニは、天才映画監督であり脚本家。10日後に新作映画の撮影を控えている。既にタイトルと主演女優も決まっている。だが肝心の脚本がない。
そう、グイドはいわゆるスランプに陥っているのだ。
精神的にも体力的にも追い込まれた彼は、ついに記者会見の場から逃げ出してしまう。していることは正直情けないのだが、グイドが高級車アルファロメオを颯爽と乗りこなす様は悔しいほどにかっこいい。ローマから海沿いの街アンツィオのホテルへ向かう道中、淡いブルーのオープンカーがイタリアの街並みに実によく映える。
『NINE』はミュージカル映画ではあるのだが、登場人物が歌い踊りながら物語が展開していくというシーンはあまりない。ストーリーが進む中で、ときおり空想の世界としてミュージックビデオのようなショー・シーンが展開されるという演出だ。
ショー・シーンはいずれも絢爛豪華で目が離せない。大掛かりなセット、大勢のキャスト、華やかな歌とダンス、スタイリッシュなカメラワーク……監督自身が振付も担当しているだけあって、力の入れようが半端じゃない。
本作をより一層華やかに彩っているのが、グイドを取り巻く女優陣だ。グイドの妻はマリオン・コティヤール、愛人にペネロペ・クルス、ミューズはニコール・キッドマン、記者のケイト・ハドソン、少年時代の思い出の女ファーギー、さらに衣装デザイナーにジュディ・デンチ、母親にはソフィア・ローレンときた。こうして名前を並べるだけで目眩がしそうな顔ぶれのスターたちが、それぞれのグイドとの愛の形を見せてくれる。
日本では2020年11月に東京・TBS赤坂ACTシアター、12月に大阪・梅田芸術劇場メインホールにて、演出家藤田俊太郎✕主演城田優の初タッグで上演予定だ。2020年5月時点で、主演の城田を除くキャストはまだ明かされていない。一体どんな女優陣が集うのか楽しみだ。
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【3】中毒性のある音楽と胸に響くメッセージで何度も観たくなる『RENT』(2005年・映画版)
映画『Rent』 (2005) - Trailer
1日1日を大切に、一生懸命生きているだろうか。ふと立ち止まって自分にそう問いかけたくなる、それが『RENT』だ。
1996年、ジョナサン・ラーソンの作詞/作曲/脚本でオフ・ブロードウェイにて初演されたミュージカル『RENT』は、その年のトニー賞ミュージカル部門最優秀作品賞をはじめ数々の賞を受賞。今もなお世界中に“レントヘッズ”(RENT-heads)と呼ばれる熱狂的ファンを生み出す程人気を誇る作品だ。ここでは、そのオリジナルキャストであるアンソニー・ラップ、アダム・パスカル、イディナ・メンゼルらが出演し、クリス・コロンバスが監督を務める映画『RENT』(2005年)を紹介する。
映画の冒頭、暗闇にタイトルが映し出される。ピアノ前奏と共に8つのスポットライトが舞台上に灯り、8人の若者の姿が浮かび上がる。この演出からもわかるように、本作は群像劇だ。ニューヨークの若き芸術家たちが懸命に生きる姿を通し、貧困、HIV/AIDS、ドラッグ、LGBTといった多様なテーマを描き出す。
彼らは歌の中で問いかける。「52万5600分という時間 人生の1年をどうやって計る?」
物語は1989年のクリスマスイブからはじまり、1990年のクリスマスイブで終わる。作中に登場する曲は冒頭の「Seasons of Love」をはじめ、ミュージカル史に残る名曲揃いだ。とてもここに全ては書ききれないが、ピックアップした曲と共にキャラクターやストーリーを抜粋して紹介したい。
映画で「La Vie Boheme」が歌われるLife Cafeの外観。ニューヨーク旅行時に筆者が撮影。
ニューヨークのイーストヴィレッジにあるビルのロフトに、映像作家のマークとロックミュージシャンのロジャーが住んでいた。二人とも夢はあるが貧しく、家賃(RENT)すら払えない生活を送っていた。
そんなある日、下の階に住むSMクラブのダンサー・ミミが、1本のろうそくを手にロジャーの部屋を訪ねてくる。彼女はろうそくに火をつけてほしいと言うが、実はそれはただの口実。ロジャーの気を引きたいミミと、自殺した恋人のことが忘れられないロジャー。二人の恋の駆け引きが展開される「Light My Candle」は、細かい設定は違えどプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』の劇中シーンと酷似している。『RENT』は1830年頃のパリを舞台にした『ラ・ボエーム』を、1990年頃の荒廃したニューヨークに置き換えた作品でもあるのだ。
マークとロジャーの友人の大学講師・コリンズは、ドラァグクイーンのドラマー・エンジェルと出会い恋に落ちる。二人がニューヨークの路上を駆け回りながら歌う「I'll cover you」は、何度観ても心が洗われる美しいシーン。貧しさも、性別も、人の目も関係ない。純粋に相手を思いやる気持ちが眩しいほどに溢れている。
ところかわって、華やかな婚約パーティー会場へ。婚約したのは二人の女性。美貌と自信を持つパフォーマーのモーリーン(マークの元恋人)と、ハーバード大卒の弁護士ジョアンヌ。少々奔放過ぎる性格のモーリーンに振り回されるジョアンヌは、婚約パーティーの場でのモーリーンの振る舞いに腹を立て、ついにケンカが勃発。「Take Me Or Leave Me」と歌い上げながら二人とも一歩も譲らず、女同士の熾烈な戦いが繰り広げられる。
『RENT』の登場人物に共通するのは、一瞬一瞬を全力で生きているということだ。このことは、作品に込められた「No Day But Today(あるのは今日という日だけ)」というメッセージにも通ずる。本作は20年以上前に生まれた作品だが、そのメッセージは決して色褪せることなく、現代社会を生きる私たちの胸に強く響く。
日本では2020年3月に来日公演が中止となったが、振替公演が同年12月に東京国際フォーラムホールCで予定されている。また、日本版はキャストを新たに東京・シアタークリエにて11月に上演予定だ。
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文 = 松村蘭(らんねえ)

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