劇団Patch、連ドラ形式で行われるZo
om生演劇『ロックダウンスパイ』を語
るーーこれから変化していく演劇の新
しい魅せ方と楽しみ方

「演劇で関西から日本を元気に」という志のもと、2012年に結成された劇団Patch。結成から8周年を迎える2020年は8(パッチ)YEARとして様々なイベントを開催する予定だった。しかし現在の新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、一部公演が中止に。そんななか急遽決定したのが、Zoom生演劇『ロックダウンスパイ』だ。5月29日(金)より6月28日(日)までの毎週金〜日、22時より「生配信」でオンライン演劇を実施するという新しい試み。それも1公演完結ではなく、演劇では珍しい1話〜5話まで、いわゆる連続ドラマ方式での配信で、リアルの演劇では実現しにくいことが詰まった公演となる。今回、SPICEでは『ロックダウンスパイ』本番初日直前に、出演する劇団Patchの中山義紘、松井勇歩、そして演出を務めるA・ロックマン(大熊ひろたか)の3名にリモートでインタビューを行い、オンライン形式の稽古とはどういったものなのか、そもそもZoom演劇とは何なのか、そしてこの形式を通して見える演劇の新しい可能性について話を訊いた。
『ロックダウンスパイ』稽古風景
ーー早速ですが、まず今回このZoom生演劇『ロックダウンスパイ』を行おうと決められた経緯をお伺いしてよろしいですか?
A・ロックマン:今回の一連で舞台が中止になっているなか、「Zoom演劇」に出会って。どんどんいろんなことやりたいと思ってる時に、縁があって脚本の高殿さんとお話しする機会があったので、話していくうちにアイデアがたくさん出たんです。ただ、これを誰とやったら良いんだろうかと。なかなかイメージに合う方がいなかったんですが、高殿さんから劇団Patchの名前が出たんです。以前関わったこともあるし、イメージにも合っていたので是非一緒にやろうということで実現しました。
ーー劇団Patchは、8年前にA・ロックマンさんの脚本で公演を行ったという関係がありますよね。
中山:そうなんですよ。劇団Patchが結成して、初めてお客さんの前で行うイベントでA・ロックマンさんのコント作品を上演させて頂きました。でも、実はちゃんとお顔を合わせたのは今回が初めてなんです。
ーーそうなんですか!
松井:というかまだオンラインでしかお会いしてないので、まだ直接ご挨拶はできてないです(笑)。
ーーお会いしてないのに、一緒に演劇を作るというのは新しい形ですね。
中山:本当にまさかの形です。
ーー今回、初顔合わせを24日に行い、その週末の29日に本番初日を迎えるというスケジュールだったとお伺いしました。この短期間で演劇を一つ作るというのは、なかなか無いですよね。
A・ロックマン:そうですね(笑)。ただ、そこに関しては感覚がおかしくなってるかもしれません。というのも、このZoom演劇をやろうという話を、後輩芸人のスパローズの大和くん、放送作家の天野慎也さんと3人で話し合う機会があって。でも「これ面白い企画だけど、誰よりも早くやらないと意味ないよね。」と、そこから大急ぎで脚本書いて、キャストも集めて、稽古も3日間でギュッと詰めて、すぐ本番! みたいな形で、本当に一週間弱で第一回目のZoom生演劇ができたので、「一週間あればできる」と思ってしまってます(笑)。
ーー出演者側として、実際このスケジュール感で演劇を作るというのはどうなのでしょう。
中山:いつでも、どんな作品でも、突き詰めようと思えば時間は足りないと思っているので、時間内でやるしかないというのは変わらないです。ただオンラインで演劇を作るというのは初めての経験なので手探りな部分が多かったですね。例えば目線の動き一つ取っても、不自然な動きをしてしまうと変に意味を持ってしまうとか。今までの舞台とは、また違ったところに注意しないといけないのが楽しいです。
松井:短期間での作品作りはオンラインならではだと思います。稽古場に行かなくても顔を合わせて稽古ができますし、自分の演出を自分の手が届く範囲で思いきり作り込めるので、短期間でも深堀りできます。あと、限られた画角の中でいろいろ考えて「こういうことができます」という提示を、リアルの舞台より演出家さんに伝えるのが楽しいです。
中山義紘(劇団Patch)
ーー演出を通してA・ロックマンさんは、劇団Patchにはどのような印象を持たれましたか?
A・ロックマン:個人のお芝居は当たり前のように上手です。あと、みんな持ってくるプランがしっかり的を得てるのが凄いです。稽古の度に映る画面に新しいものが増えていたりとか、そういう細かいところのアイデア出しをすごく積極的にやってもらえるんです。
中山:大変ですけどね(笑)。当てられた役をこの画面内でどう成立させようかめっちゃ考えます。そんなことは、今まであんまり生の舞台では考えてこなかったものなので新鮮です。でもこの経験は今後にも活かせることでもあるので、自分のレベルアップにも繋がっていると思います。
松井:確かに、稽古始まって画面を付けた時に小道具だったり、背景に装飾が増えているメンバーがいると共演者としても「なるほど、このキャラはそういう役作りでいくのか」となりますね。普段だったら言葉を交わしてすり合わせたりするところを、背景を見るだけでなんとなく感じることができるのが面白いです。ただ、さっきA・ロックマンさんは的を得てると言ってくださってましたが、「え? それあってる?」みたいな突拍子もないことするメンバーもいて。
A・ロックマン:アプローチの仕方間違えてるメンバーおったら、全員がその画面見てるから公開処刑みたいな空気になるんです(笑)。
ーーなるほど!(笑) 今回お芝居、連ドラ形式という形で、一回25分を週末3公演、それを5週連続で行うという、リアルの演劇ではなかなか実現しにくいことがたくさん詰まっています。稽古のスケジュールも、もちろんいつもとは違ってきますよね。
A・ロックマン:これもZoom演劇だからこその特性を活かした感じですね。稽古は各話あたりの一週間のスケジュールでいうと、月曜日に半分、火曜日にもう半分を稽古して、水曜日に通しながらブラッシュアップしていき、木曜日には整ったものを何度も通して音響、照明などの効果を調整し、金曜日に本番というスケジュールでやっていきます。
ーー怒涛の一週間ですね。かなり大変な一ヶ月になりそうです。
A・ロックマン:でも、実は稽古時間的には3時間とかで終わっているんです。
中山:対人ではなくてiPhoneとかパソコンと向き合ってやってますし、長時間画面を見る演出なので、いつもと違って目がめちゃくちゃ疲れるんです。
松井:今回演出で、お客さんと目が合うように、カメラに目を合わせてセリフを言うのが基本で。本番中、それこそ視線一つで意味が変わってくるので、カメラから目を離せないんです。だから目への負担が(笑)。あと、メンバーが急にその日に考えてきた新しい演出をしても「誰か画面の端で激しく動いてるけど、目線動かされへんから見られへん!」みたいなことが起こるんです。
中山:大事なリアクションに気づかなかったりね。
松井勇歩(劇団Patch)
ーー役作りは普段の時に比べて違いはありますか?
中山:そこまで違いはないです。強いて言うなら、この役はどんな部屋に住んでるんだろうとか、細かい部分を想像することが増えたぐらいですね。
松井:僕も違いはそこまで感じないですが、自己プロデュースする部分が増えたなとは思います。普段の役作りよりも、外見の作りこみをする作業が少し増えました。
ーーこの新しい試みをするにあたって、どうしてもこの「Zoom演劇」という形に少し抵抗がある方もいらっしゃるのではないかと思います。改めてこの「Zoom演劇」の魅力を教えて下さい。
A・ロックマン:今回こだわってるのは「生」という部分なんです。収録したものを配信するというのは、今いろんなところで行われていますが、演劇の一番の醍醐味は「生だからこそのライブ感」だと思っていて。しかもこの形だとそのライブ感をどこにいても味わえる。例えば、ご飯食べながらでも、移動中でも、東京にいても、大阪にいてもサイトにアクセスさえすれば、すぐに同じ時間を共有できるのが魅力です。
ーー今回はスパイの活動をリアルタイムでハッキングしているという設定ですし、まさに時間の共有という部分ではフィットしていますね。
A・ロックマン:演劇は覗き見だと思っているんです。よくコントと演劇の違いの話をする時に、一番の違いは客席との距離感だと思っていて。コントは演じながらお客さんにアピールすることが多い。対して演劇は演じている人を覗くという距離感で観るもの。そういう意味では今回の「Zoom演劇」というのは究極の覗き見という新しい体験ができます。
ーー出演者の目線から見た「Zoom演劇」の魅力はどういった部分にありますでしょうか?
中山:僕も最初は「Zoom演劇ってどういうこと?」というクエスチョンマークから入ったのですが、実際やってみて、新しさを感じました。演劇というコンテンツの中で、「Zoom演劇」という一つのジャンルが新しく生まれたという認識ですね。本当に一度観ていただいたら絶対に魅力は伝わると思いますし、きっと「これはこれでありやん」となる作品になってる自信はあります。Patchの劇団員が作った予告編がTwitter等に上がってるので、まずは見てもらって興味を持って頂けたら嬉しいですね!
ーー松井さんはいかがですか?
松井:……もう二人が本当に言いたいこと全部言ってくれたので、何も残ってないです!
中山:何か言えや(笑)!
一同:ハハハ(笑)。
松井:確かに携帯で演劇が見れるっていうのはすごい画期的だなと思います。……こちらからは以上です!
演出:A ・ロックマン(大熊ひろたか)
ーー今回の劇団Patchの挑戦は非常に楽しみです。まもなく幕が上がりますが、最後に『ロックダウンスパイ』の見どころをお願い致します!
A・ロックマン:約一ヶ月間、生配信で週末3公演。しかも続きものという、演劇界でもやったことないことばかりです。本当に初モノづくしなので是非新鮮なうちにご賞味頂ければと思います。
中山:ここ数ヶ月、出演予定だった舞台が中止になってしまって、すごく芝居欲というか表現したい欲が溜まったまま過ごしてきたので、その表現欲のフラストレーションを爆発させたいと思います。是非、僕たちの爆発を見届けてほしいです。
松井:劇団Patchの新しい可能性、そして演劇の新しい可能性がたくさん詰まった作品になってると思います。2ヶ月間ずっとお芝居がしたい欲を溜め込んでいたので、そのパワーを存分にこの作品にぶつけて、皆さんに届けたいと思います。そして、リアルな舞台が再開されても、この「Zoom演劇」という形は、新しい楽しみ方の一つの選択肢としてあり続けるようなコンテンツになると思うので、その……ね。
A・ロックマン:ビックリするくらいまとまってないやん!
松井:全然まとまらんかった。良いこと言おうとしたら無理でした(笑)。
A・ロックマン:Wi-Fi環境悪いんかと思ったわ。
松井:とにかく出演者全員で楽しみたいと思います。これから一ヶ月間、毎週末を楽しみにしていてください!
ーー本日はありがとうございました!
Zoom生演劇『ロックダウンスパイ』
取材・文=城本悠太

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