ヤユヨ、デビューミニアルバム『ヤユ
ヨ』をボーカル・リコが語るーー期待
を超えられる準備も常にしておきたい

昨年末に観た「さよなら前夜」のMVがとても印象に残っている。自由に伸び伸びと歌って演奏していて、凄く衝動的なエネルギーを感じた。なのに曲調は特に速いわけでもなく、ミディアムテンポのイメージがあった。8月5日(水)にCDリリースされる(配信は6月10日(水)より開始)デビューミニアルバム『ヤユヨ』もミディアムやスローな曲調がほとんどだ。このテンポ感で衝動を感じるのが良いなと思ったのと、20歳の彼女らによる楽曲が42歳の私にも何の違和感も無く響くのが不思議であり嬉しかった。その様に感じる事が出来たのは、人間誰しもが経験する日常がしっかりと描かれているからだろう。本来なら6月10日(水)にCDがリリースされるはずだった本作だが、その原因にもなったコロナにおける自粛期間についても訊いている。まだまだインタビュー数も少ないので、じっくりゆっくりインタビューを進めていったが、ボーカルのリコは的確に答えてくれた。是非とも読んで頂き、まずは配信やサブスクなどでヤユヨの音楽を味わって欲しい。
ーー初めてお話するので、色々とお伺いしたいのですが、去年の1月に結成されたばかりですよね。という事は、まだまだインタビューも数少ないですよね?
3回目か4回目ですけど、全然慣れないですね。がんばります!
ーーハハハ(笑)。まず最初に好きになったり、夢中になったバンドを教えてもらえますか?
あんまり私はバンドを知らなくて。それに最初はバンドじゃなくて、歌手になりたかったんです。いわゆるシンガーソングライターになりたくて。小5の時にaikoさんが出したベストアルバムを、近所の人に貸してもらったのですが、聴いてみたら凄く良くて……。それがキッカケですね。で、aikoさんを聴いていくうちに、後ろで音を鳴らしている人たちがバンドだという事を知るんです。それでバンドに興味を持つようになりました。
ーー実際にバンドをやるようになったのは、いつ頃ですか?
高校の軽音楽部ですね。そこから楽器にも興味を持つようになりました。最初は帰宅部でしたが、やっぱり歌を歌いたいなと思って。基本はピンボーカルとしてだったのですが、実際に後ろでバンドで演奏してもらったら、バンドって凄いと思いましたね。
ーー帰宅部だったのに、そこから新たに入部しようと思うのは相当ですよね。
文化祭でぺっぺ(Gt)のバンドのライブを観て、カッコ良いなと思い「入りたいんだけど」と相談しました。高校入学の時におばあちゃんにアコギは買ってもらってはいたんですよ。
ーーそれでも最初はピンボーカルだったんですね。
初めてエレキギターを買ったのは、去年の6月か7月ですからね。
ーーつい最近じゃないですか!
バンド始めても結局、歌う事にずっと集中していましたからね。まぁ元々、上手にギターが弾けなかったので、ぺっぺに弾いてもらっていました。でも、ギター2本のほうが幅は広がるので、「七月」(6曲目収録)が出来た時くらいに、ぺっぺの弾くギターの単音が好きだから、私はコードを頑張ろうと思って「買いに行く!」とぺっぺに言ってから買いに行きましたね。今となっては、メリットしか無いなと思います。ギターを弾かない曲もあるんですけど、ギターを弾く時とギターを弾かない時、どっちもあるボーカルもなかなか良いなと。
ーー自分で作詞作曲をするようになったキッカケは何だったんですか?
めっちゃ恥ずかしいんですけど、大学受験の時に勉強が嫌だなと思って、歌詞を書いていたんです。いったん言葉だけ書いて、そこからフフンと歌うくらいだったんです……。でも、バンドとして本格的にやり始めようとなったタイミングで、今までの歌詞は全部捨てたので、その時のは今は1曲も残ってないです。まぁ、ひとりだけでは何も出来ないですし、高校の時もコピーばっかでしたしね。
ーーそこから自分の世界をメンバーに提示するのは勇気いりますよね?
自分ひとりだけで作っていたものを、バンドとなるとメンバーに見せるわけなので、とても恥ずかしいですよね。それに私は、ぺっぺと、はな(Ba.Cho)と今のサポートドラムが組んでいたヤユヨの前身バンドに入れてもらった感じなので、今までの曲は潔く捨てて新しい気持ちで作れました。曲を捨てるのは、ちょっとだけ名残惜しかったですが(笑)。
ーー高校を卒業しても、同じメンバーで続けていらっしゃいますよね。
実は卒業のタイミングで、一度続けることを断っているんです。ぺっぺは当時から「本格的にバンドを組むんやったら、大学には行かへん!」みたいな熱量でバンドをやっていて。まあ結局大学には行くんですけど(笑)。そのときの私には、そこまでの自信も、実力も無かったし、大学に行きたい気持ちもあったので、その時は断りました。でも、やっぱりバンドがやりたくなって、メンバーを自分でも探したりしたのですが、人見知りすぎて駄目で。じゃあもう高校時代にトップレベルで仲良くて、音楽の趣味も合っていたぺっぺしかおれへん! と泣きつきました。ぺっぺは私の声を最初から気に入ってくれていましたし。
ーー2019年1月結成で、ここまで曲が書けるのも凄いと思うんですよ。
歌詞から書くんですけど、書いているうちにニヤニヤしてくるというか、ゾーンに入るというか、組み立てていくのが、めっちゃ楽しいんですよ。メロディーを作るのが一番楽しいですね。ひとりごとを言いながら、自分の気持ちいいとこを探しながら作っていく感じです。
ーーメロディーを先に作るミュージシャンが多いですけど、歌詞が先なんですね。
ぺっぺも歌詞が先なので、意識したことなかったですね。でも「七月」は最初の<ベッドサイドの二人の世界は>という歌詞とメロディーは同時に作ってから順番に組み立てていきました。
ーー「七月」の歌詞がとても好きで。特に<暑さに魘されている>という部分、敢えて「魘されている」という表現を難しい漢字で表すじゃないですか。あれが凄く良いなと思って。
恥ずかしいんですけど、本当に7月でもクーラーつけずに窓を閉め切って眠るんですよ。途中で「暑っ!」となって窓閉めきっている事に気付いて、バッと開けるというつらい夏を過ごすんですけど、その辛さと、人間関係において好きすぎてつらいとか気まずいと思ってしまうことで、ふたりの時が幸せじゃないと感じてしまう時の辛さを結びつけたくて。漢字に関しては、漢字に出来るところは漢字にしようと。意味にこだわったりする時もありますが、この場合は何も考えていないですね。見てくれがいいなと(笑)。
ーーなるほど(笑)。辛いといえば最近自粛生活が続いています。いまの状況で曲作りに影響はありますか?
どうしても歌詞は、友達とか関わった人の言葉とか、家に帰る道や駅、普段観た景色とかからキャッチして出来ていくので、自粛生活が続くと難しくなりますね。自粛の最初の頃は本を読んだり映画を観たりしていましたけど、特に何も歌詞には繋がらなくて。自分とは違う日常世界を観るのは楽しいですけどね。私は日常のものを歌詞に入れていくので、この自粛で作るものに変化は出てると思います。既に自粛の間に歌詞も書きましたし、何曲かはメンバーと共有しています。
ーーこの自粛で出来上がった曲を聴けるのは、本当に楽しみです。ライブも早く観たいですね。
ありがとうございます。でも、この自粛期間にほんまやったらあったはずの東京初ライブとか、初サーキットライブとか、全部無くなってしまったので、ヤユヨの記憶が薄れるのではと思ってしまいますね。でも、この期間に知って下さった人もいるでしょうし、とにかく自粛明けのライブを期待してくれている人がいるならば、その期待を裏切らないようにしたいです。期待を超えられる準備も常にしておきたいですね。
ーー改めて、お伺いしたいのですが、結成してから、このスピード感で活動できている事は想像できなかったですよね?
想像していなかったです。すごく苦労するだろうなと覚悟をしていましたから。ぺっぺとも、この早さは怖いよねとは話してます。もちろん嬉しいですけど、「どうしよ?! 出来るかな?!」という気持ちもありますね。エレキを弾き始めたのも最近で、使い方も正直まだわかってないですし。まだまだ実力も無いと感じてますし、下積みも無いので、大丈夫かしらという怯えはあります。逆に「やったんで!」みたいな気持ちもありますけど。
ーー去年末に「さよなら前夜」のMVを観た時、凄いエネルギッシュな衝動を感じたんですよ。あの伸び伸びさが本当に良くて。
あれは結構ライブ通りというか、基本的にあんなテンションで、いつでもやれるようには心がけていますね。楽しさを強要するつもりはないんですけど、楽しさをアピールする事は、ライブでもビデオでも意識しています。ライブ以外の場では「どうしよ?!」と言ってますけど、結局始まったらニコニコしてます(笑)。
ーー楽器が上手にこした事は無いんですけど、個人的に楽器の上手さが衝動を上回るのは好きじゃなくて。そういう意味ではヤユヨは、しっかりとした衝動を感じたんですよ。
嬉しいです。楽器が上手と思われるよりは、楽しそうに思われたいし、聴いている人を巻き込みたいんですよね。
ーー曲調についてもお伺いしたいんですけど、「今度会ったら」が他の楽曲とはまた違い、リズム感、ビート感があって好きなんです。
一番初めは、ある時から口ずさんでいた<全部大好きだったのに>という歌詞があって、それを曲にしようと思って。あと、「ジャッジャッジャッ」というリズムの曲が自分たちの中で、あまり無かったので作ってみようとは思っていました。「今度会ったら」は、自分が気持ちよく歌えるメロディーとテンポの範囲の中で、速い方だと思って作っています。聴いてみると全然速くは無いんですけど、これ以上速いと私が合わせられないですね(笑)。
ーーハハハ(笑)。たしかに「今度会ったら」は、ヤユヨの楽曲は全体的にミディアムやスローが多いので、その中では異色に思えました。
基本はスローやミディアムがしっくりくるんです。自分たちが好んでいる曲が、そういう感じですし。自分の耳に残って、自分が歌いたくなるのが、ミディアムというイメージがあります。だから、「今度会ったら」が限界のテンポです。あれ以上、速いと適当に歌ってしまうかも知れないです(笑)。
ーーお話を聞く限り、速い曲は相当苦手なんですね(笑)。
コピバンをしている時に、速い曲を歌うのが上手くないと思ったのと、何か納得できていない事に気付いたんです。それに速いのは気持ちよく歌えるイメージより、わかりやすくキャッチーというイメージですね。メロディーにこだわり持つなら、速すぎるのはやりにくのかなと思います。
ーー最後『ヤユヨ』というアルバムタイトルについてもお伺いしたいです。1stアルバムに自分たちのバンド名をつけるバンドって好きなんですよ。
最初、私的には違うタイトルにしたかったのですが、何も思いつかなくて。考えてるうちに1stとか解散の時に、バンド名が使われがちだよねとなってぺっぺが「『ヤユヨ』というタイトルはどう?」と言ってきたんです。
ーーそもそもヤユヨというバンド名は誰が考えたのですか?
ぺっぺが付けました。実は最初、このバンド名が好きじゃなかったんですよ(笑)。私はもっと後先考えず、大喜利じゃないですけど、もっと変なネタみたいな名前にしたくて。だから一旦ヤユヨにして、1年活動してみて、気になったら変えればいいやと思っていたんです。だけど1年の活動の中で「ヤユヨです」という言ってるうちに、名前も広まりましたし、愛着が湧いてきました。なので今回の『ヤユヨ』というタイトルは納得です!
ーー本当にタイトルも内容も良いファーストミニアルバムだと思います。今日はゆっくり話が聴けて良かったです。ありがとうございました。
取材・文=鈴木淳史

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着