デビュー時から独自のルーツ志向を
突き進むロス・ロボスの
『ハウ・ウィル・ザ・
ウルフ・サヴァイヴ?』
本作『ハウ・ウィル・ザ・
ウルフ・サヴァイヴ?』について
本作の収録曲は全部で11曲。ロック、テックスメックス、サザンソウル、アパラチアントラッド風などのナンバーが収められている。どの曲もスタンダードかと思うぐらい親しみやすいメロディーを持っており、アレンジも文句なしだ。
アレンジについてはT・ボーン・バーネットのこだわりのプロデュースならではの仕上がりである。元ルーツロッカーのバーネットは本作のプロデュースで業界筋に認められ、重要作品のプロデュースを任される存在となる。今やプロデューサーとしてはアメリカ音楽界でドン・ウォズと並ぶビッグネームだろう。バーネットはコーエン兄弟の映画ではしばしば音楽監督を務めており、ジョージ・クルーニー主演の『オー・ブラザー』のサントラは700万枚以上のセールスとなり、2002年のグラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞している。
前作同様、セサル・ロサスの伸びやかなボーカルとデビッド・イダルゴのハイレベルのギターワークは健在だ。また、イダルゴのウエスタンスウィング風のラップ・スティールとフラコ・ヒメネスに影響を受けたと思われるアコーディオンも素晴らしい。彼はロック界の優れたギタリストとして記憶されるべき人材だ。
アルバムにはもちろんスローなナンバーも収められているが、どれもリズムのメリハリが効いており、聴いているだけでエネルギーに満ちていく感じが味わえる。本作のすごさは、音楽は楽しいものだということを再認識させてくれるところにあると思う。
なお、このアルバムはジョー・ストラマーの愛聴盤となり、クラッシュの前座でロス・ロボスが起用されることが増え、認知度がかなり高まった。
本作以降、実験的な名作『キコ』(‘92)や『コロッサルヘッド』('96)など、意欲作を次々にリリースし、ロス・ロボスはアメリカのロックグループの最高峰と言われるまでになるのであるが、僕は音楽を本当に楽しんでやっている初期の彼らが好きだ。
TEXT:河崎直人