ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B
’wayミュージカル非公式ガイド【20
20年夏編】
前号の時点では2020年の「4月12日まで」だった劇場の閉鎖期間が「9月6日以降まで」に延長され、『アナと雪の女王』のように再開を待たずにクローズを決めた公演もあり、またそんなことより今は「BLACK LIVES MATTER」でしょ的な雰囲気も漂い、さらにはブロードウェイにも影響力を持つであろう英国のプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュ氏が自身のウエストエンド作品の再開を早くても2021年と明言したり……。この連載もさすがに「いつも通り」とは言っていられない状況になってきたため、絶対的“ナマ信者”の筆者としては少々不本意なのだが、しばらくは配信舞台にスポットを当ててみることにする。
5月に新たな演劇系配信プラットフォーム「Broadway on Demand」が誕生したり、ディズニープラスの『ハミルトン』のように、特に演劇系ではないサブスクが舞台映像を配信する例が増えてきたりもしているが、やはり現状、最も多くのオン/オフ・ブロードウェイ作品が観られるのは古参ブロードウェイサブスクの「Broadway HD」( https://www.broadwayhd.com/ )と言って良さそう(筆者調べ)。ラインナップは随時変わるようだが、6月25日現在「ミュージカル」カテゴリーに上がっている40作のうち、今回は“予習復習に最適”という観点からオススメしたい3作品をピックアップしてみた。なお、あくまで舞台を観た身としてのオススメであって、映像化作品としてのクオリティには基づいていない点をご了承いただきたい。
『メンフィス』BW版(2009)、『ダディ・ロング・レッグズ』オフBW版(2015)、『悪魔の毒毒モンスター』日本版(2020)の各パンフ
■『ダディ・ロング・レッグズ』
井上芳雄&坂本真綾主演による日本版がすこぶる好評で、9月にもシアタークリエでの再演が予定されているミュージカルのオフ・ブロードウェイ版。本作が面白いのは、世界初演こそアメリカだが、ウエストエンドやオフ・ブロードウェイ進出よりも日本初演のほうが早かった点で、演出のジョン・ケアードも「このミュージカルは日本で誕生した」と公言している。実際、どちらも観た筆者の感想も「日本版のほうがなんか好き」。それでも、“観比べる”というのが楽しい体験であることは間違いないので、再演の前に“復習”してみては。
■『メンフィス』
日本版は再演ですら3年も前なので、“復習”と言うにはあまりにも時期が遅いのだが、黒人差別を扱った作品であるとのタイムリーさを汲んでピックアップ。同じく人種問題を扱う『ヘアスプレー』の作者たちが、今後は白人俳優のみによる上演は許可しない旨の声明を発表し、それがほぼアジア人俳優しかいない日本にはどう適用されるのか、物議を醸したことは記憶に新しい。この声明の是非を問うようなセンシティブなことをするつもりはないのだが、声を大にして言いたいのは、役の設定に合わせた様々な人種・出自の俳優たちが一堂に会するブロードウェイの舞台も、自分と同じ文化を共有する俳優たちが母国語で演じてくれる日本版の舞台も、別物だけど私にとっては同じくらいありがたくて尊いよ!ということ。山本耕史(白人役)と濱田めぐみ(黒人役)の熱演を思い浮かべながらこのブロードウェイ版を観たなら、きっと同じように感じていただけるのではないか、と思いたい。
■『悪魔の毒毒モンスター』
舞台で観たものをピックアップすると宣言しておきながら最後だけすみません、この3月に池田テツヒロ演出、福田悠太主演で上演された日本版しか観ていない『毒毒』を。オフで上演されていた頃から気になってはいたのだが、オン作品を優先して観逃がしており、キャストの魅力が生きる演出になっていた日本版を観ながら“観比べ欲”がムクムクと湧いていたのだった。配信というのは、こんな時にはありがたい形態なのかもしれない。
Broadway HD内「ミュージカル」ページのスクリーンショット
【2019-2020シーズンの新作】
*情報は6月25日時点のもの
■開幕延期中の作品
『Caroline, or Change』
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2019-2020-season/caroline-or-change/
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2019-2020-season/caroline-or-change/
『Flying Over Sunset』
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/
■いったん始まっていた作品
『David Byrne’ s American Utopia』
ミュージカルに近いコンサート。いったん閉幕後、秋の再演が発表されていたが、果たして。
https://americanutopiabroadway.com/
ミュージカルに近いコンサート。いったん閉幕後、秋の再演が発表されていたが、果たして。
https://americanutopiabroadway.com/
『Girl From the North Country』
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/
【動画】『ムーラン・ルージュ!』の最新動画。最後のメッセージが泣けます
【ロングラン作品】
■日本で既に上演された/されている作品
■日本未上演の作品
【動画】『ハミルトン』OFFICIAL TRAILER
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