木村拓哉『Go with the Flow』収録曲
から魅力に迫る、歌声に色気とクール

<『Go with the Flow』収録曲コラム第2弾>
 木村拓哉にとって初のワンマンライブとなった『TAKUYA KIMURA Live Tour 2020 Go with the Flow』が映像化され、24日に発売された。同ライブでは、稲葉浩志森山直太朗ら豪華ミュージシャンが制作にかかわったアルバム『Go with the Flow』が引っ提げられた。「流れに乗って前に進む」という共通テーマが設けられたライブ、そしてアルバム。その収録曲にフォーカスすることで“歌手・木村拓哉”の今に迫りたい。前回は1曲目を飾る「Flow」、そして2曲目の「One and Only」。今回は3曲目「I wanna say I love you」について触れてみたい。

「I wanna say I love you」

作詞・作曲:Uru、編曲:富樫春生

 『Go with the Flow』は1曲目のインストゥルメンタル楽曲「Flow」、そしてリードトラックのストレートなロックナンバー「One and Only」と進み、1st作品らしい自己紹介のようなアプローチで、アルバムらしい流れを見せてくれる。そして3曲目「I wanna say I love you」は、木村の色気をたっぷりと感じさせるバラードソングだ。

 木村の声はややハスキーな低音域が豊かで抜けがあるという特徴的な部分もあるが、クセがないという、ある種の相対する魅力があり、唯一無二の色気とクールさを持つ。「I wanna say I love you」は、そんな木村の声を優しいバラード調のアンサンブルのなかで存分に味わえるトラック。

 イントロでは口笛を、各バースではバリトン寄りの音域を、Aメロではさりげないファルセットを、 “落ちサビ”にあたるセクションでは、リバーブなどのエフェクトは最小限におさえられたクリアな木村のボーカルなど、様々な歌唱の表情をみせている。この楽曲の木村の歌唱面にフォーカスすると、サウンド面、アレンジ面の妙技も浮き出てくる。

■「直球の色気」と「揺らぎのアレンジ」のコントラスト

 木村のボーカルは、ビブラートやボーカルフェイクを多用するよりかは、地声に近い歌声でストレートに響かせるというスタイルだと感じられる。そのボーカルは「I wanna say I love you」のアンサンブルと相性がぴったりだ。

 サウンド面を考察すると、メインパートはアコースティックギター。そして、うっすらと揺らぐオルガンの音色。ダイナミズムの広いピアノ。リズムセクションはパーカッションの人間味溢れるグルーヴが前面に出ている。エレキギターの音も温かく揺らぎ、クラップのリズムも少しレイドバック(ゆったり)している。

 この楽曲は、打ち込みではなく、人の生演奏による温かみが包み込むような愛を生んでいる。意図的に揺らがされた音色やリズムが生み出すノスタルジックなアンサンブルが、色気が香る木村のボーカルを明瞭に際立たせているのだ。

 特にサビの木村のボーカルは、1番は語りかけるように、2番は優しく力強く、“落ちサビ”は慈しむような色気を、ラストのサビは心を解き放きなっているように感じられる。各サビのセクションで木村の異なる歌唱の表情に注目すると、この楽曲をより深く楽しめる。

 また、作詞・作曲を手掛けたUruによる美しくキャッチーなメロディと、歌詞の<君に似合う花束を探しに来たんだ>、<君のいない未来なんてないんだ>というフレーズを木村が歌唱すると、なんともストレートに楽曲に馴染む。

 木村の男らしい色気と愛が滲む歌唱を、人間味あふれる揺らぎのアレンジが最大限まで引き出している。「I wanna say I love you」の魅力ポイントとしては、この点が非常に大きいのではないだろうか。このトラックは“色気があって優しいキムタク”をたっぷりと感じさせてくれる。

 木村の魅力を存分に味わえる本作。今回は「I wanna say I love you」について触れたが、次回は『Go with the Flow』収録の別のトラックの魅力について迫りたい。【平吉賢治】

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