SHISHAMOがホームタウン・川崎からの
ツアー再現オンラインライブで届けて
くれたもの

SHISHAMO ワンマンツアー2020春「今だけは天使みたいに大事にしてね」振替オンラインライブ!!!

2020.6.28 カルッツかわさき
『SHISHAMO ワンマンツアー2020春「今だけは天使みたいに大事にしてね」』は、本来3月から5月にかけて開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止の為に中止になった。そこでツアー内容を完全再現したライブが6月28日夕方16時から、『「今だけは天使みたいに大事にしてね」振替オンラインライブ!!!』と題して、イープラスのライブストリーミングサービス・Streaming+にて有料配信された。開催場所は、バンド結成の地であり、ホームタウンとも言える神奈川県川崎市にあるカルッツかわさき。3月6日のツアー初日が開催場所だったホールである。
楽屋裏的な話になるが、本番直前、宮崎朝子(Gt/Vo)がスタッフ全員を前に挨拶をした。そこで無観客ライブが初めてである事と4ヶ月ぶりのライブである事が話された。普段とは違う状況と環境への戸惑いも若干感じられたが、それをどう乗り越えてくれるかが、個人的には楽しみでしかなかった。有料配信が開始され、まずは、いつものライブの前の様に影アナと呼ばれるスタッフによる注意事項のアナウンスが行われる。実際、このとき現場では、とある出来事が起きたが、それは後々、宮崎の口から明かされる。
SHISHAMO・宮崎朝子
登場SEが鳴る事も無く、ベッドがある暗いセットに宮崎ひとりで現れ、ベッドサイドの灯りを着け、ベッドに座り、マイクを通さず、そのままの声で「今だけは」が歌われる。今年1月にリリースされたアルバム『SHISHAMO 6』の収録曲であり、「今だけは(demo.朝子宅にて)」というタイトルであったが、その雰囲気を再現した様な演出。そんな粋な始まりにドキドキする。そして、セットは壁に時計が掛けられ、窓からは東京タワーが見える夜の部屋にチェンジ。松岡彩(Ba)、吉川美冴貴(Dr)も加わり、「またね」、「真夜中、リビング、電気を消して。」が演奏されるが、1曲目が弾き語りだった事もあり、よりダイナミックさとパワフルさを感じる。ドーンとくる勢いの凄みに、やはりバンドサウンドは良いなとしみじみしてしまう。
SHISHAMO
本日1回目のMCで、緊張なのか宮崎が「どうも、どうも」と少し笑いながら繰り返す。そして、ここで「大丈夫だよね、これ?! 放送されてますよね?! 実は影アナ一度配信されてなかった!」と、先述のとある出来事をカミングアウト! 言わなければバレなかった事ではあるが、そこを隠さず言っちゃうのも彼女らしいし、配信とはいえ、生の現場であるライブならではの出来事だったのではないだろうか。「緊張する!」とも素直に話し、「最後まで、この緊張とけないかも知れないけど、その様を楽しんで下さい」とも伝える。この発言からもライブ感は充分に伝わったと想う。Twitterで行われていた最初3曲のセットリスト予想がひとりだけ的中していた話題では3人でワチャワチャと楽しく盛り上がるが、4曲目「天使みたい」ではセットイメージが朝の部屋にチェンジし、しゃぼん玉が飛ぶ中、しっとりと緩やかに歌われる。曲間、ブレイクで息遣いを聴かせるのもリアルで良かった。
SHISHAMO・宮崎朝子
SHISHAMO・松岡彩
5曲目「すれちがいのデート」ではセットがビル群の中、東京タワーがそびえ立つ昼の外の風景にチェンジ。今年頭の前回のツアーでも感じたが、宮崎のギタープレイがどんどんかっこよくなっている。「ギュイーン!!」とギターを鳴らす様が本当に絵になる。それと本当に4ヶ月ぶりのライブなのかと想うくらいに吉川と松岡のプレイも冴え渡っていた。軽快なサウンドの「フェイバリットボーイ」を支えるリズム隊ふたりのプレイは心地よかった。「水色の日々」で宮崎と松岡が吉川を観ながら、丁寧に音を合わせていく姿も素敵であった。
SHISHAMO・吉川美冴貴
SHISHAMO
本日2回目のMCでは、吉川と松岡が曲間のブレイクのタイミングを合わせるときに松岡が凄い緊張していたので、吉川が励ますつもりで笑顔を投げかけたが、その意図が伝わってなかったと、ふたりで一生懸命話す。なのに、「どうでもいい!」と宮崎が一刀両断するのも、3人独特の仲良さが伝わってきて好きだった。そして、個人的に凄く良いセットだなと感心しながら観ていた東京タワーのセットについても、宮崎が丁寧に説明する。『SHISHAMO 6』のジャケットが東京タワーをバックに3人が並ぶ写真であった事もあり、「絶対に東京タワーが欲しくて、作ってもらった!」と明かす。天使をイメージしたという3人それぞれデザインが違う白い衣装についても話し、宮崎いわくベッドシーン(?!)からの始まりなど、今回のツアーはこだわりが強かったからこそ、中止になったが配信にしてでも観てもらった事を画面の向こうの観客たちに語りかけた。
SHISHAMO・宮崎朝子
9曲目「二酸化炭素」では夕方の部屋にセットがチェンジされ、<きっとこの部屋の息苦しさは 私達二人の二酸化炭素のせい>という歌詞の如く、部屋の壁を照らすライティングで、その息苦しさや気だるさが表現されていて、本当に見応えがあり素晴らしかった。本日3回目のMCでは、ジム通いが好きな吉川が最近、ジムに通えていないという話からデッドリフトというトレーニング方法について話す一幕も。その流れから宮崎が松岡と太り方の捉え方の違いについて、「太るというのは目に見えて太ってくるの! 松岡に太ったと言われると気が動転する!」と謎の熱弁へ! 何でもない日常の出来事を話すMCを、長いにも関わらず全く飽きさせる事なく興味を持たせてしまうのも彼女たちの魅力でもあるし、その緩さを演奏が始まった途端に凛とした空気に切り替えてしまうのも彼女たちの不思議な魅力である。
SHISHAMO・松岡彩
12曲目「キスをちょうだい」ではセットが夜の外の風景へとチェンジして、ビル群も東京タワーもライトアップ。星空も輝き、とても綺麗で見入ってしまった。楽曲のポップ感も何とも言えないくらいキュートだった。『SHISHAMO 6』では異色のナンバーである「ひっちゃめっちゃか」。何が異色かというと、宮崎のポエトリーリーディングの様な独特のラップの際立ちが凄いのだが、本人いわく「おしゃべり」という事らしく、その表現自体にも嫌味のない突飛なセンスしか感じない。
SHISHAMO・吉川美冴貴
ラストナンバー「曇り夜空は雨の予報」を前にして、宮崎が「次が最後の曲です! 『え~!!』が聴こえてくる!」と話したが、全国各地の画面の向こうでは、その声が本当に響いていたはず。配信ライブとはいえ、臨場感はとてつもなかったはずだ。ずっと私は観客席の最後尾で観ていたが、演出上の都合でアンコールは、今回の観客の皆様と同じく配信画面で観る事になった。その1曲目「明日も」のイントロが鳴った瞬間、眩しすぎるくらいの、その祝祭感に思わず泣いてしまった。個人的にも4ヶ月ぶりのライブレポートで、観る前は生で観れる事もあり、リハから泣いてしまうのではなんて呑気に想っていたが、実際は良い意味で、心地よい緊張感の中、ずっと平常心で冷静に観る事が出来た。それが会場の中ではなく、画面越しに変わった瞬間にも関わらず、そんな状況と環境をも余裕で一瞬にして飛び越えてくる楽曲の力強さに改めて驚いた。<良いことばかりじゃないからさ 痛くて泣きたい時もある>という歌詞は、特に今のこの時期、いつも以上に刺さりまくった。この曲を聴いて、画面越しの彼女たちに自分を重ね、明日も走り抜こうと想った人は多かったのではないだろうか。
SHIASHAMO
5月に配信リリースされた「妄想サマー」、「明日はない」と新曲を立て続けに披露して、〆のナンバーは「恋する」。イントロでキャノン砲によるテープが観客席に向けて放たれた。今回のツアー全国各地で実際に放たれるはずだった、それぞれの土地の方言で感謝の言葉がメンバー直筆で記された特製テープ。今回は全国各地の人に届くようにと全ての種類が混ぜられていた。
SHISHAMO
最後の最後まで、このツアーの込められた想いを細部にまで存分に感じる事が出来た有意義な配信ライブだったと想う。いつ通常通りのライブが再開されるが、まだまだわからないのが現状だが、とにかく待ち続けるしかない。どんな形であろうとSHISHAMOの音楽が絶対に鳴り続ける事も、今回の配信ライブで証明されたわけだし、とにかく待ち続けよう。

取材・文=鈴木淳史 撮影=河上良

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