繊細な詩情をダイナミックに躍動させ
るグルーヴ。Unknöwn Kunの創造性と
は【SPICE×SONAR TRAX コラム vol.
6】

瑞々しく、煌めくようなサウンドスケープと、フューチャーベースの躍動感。そこに、美しくも芯の強さを感じさせる心地よい歌声が泳ぐ。資生堂アネッサの2020年CMタイアップソングとしてオンエアされている「Stay Forever」は、極めて現代的なポップミュージックの時代性を捕まえながら、楽園の夏に想いを馳せる楽曲だ。蛯原友里出演の同CMが公開されたのは今年3月だが、コロナ禍に苛まれることになった2020年夏に向けて、この生命力に満ち溢れた素晴らしい楽曲が生み出されていた事実には、一縷の希望を感じずにいられない。
さて、この「Stay Forever」を手掛けたのは、Unknöwn Kun(アンノウンクン)というアーティストだ。〈Kun〉は敬称の〈君〉の意で、つまり「Unknöwn Kun君」と呼ぶ必要はないらしい。プロフィールには「これは彼がUnknöwn(未知な、知られていない)からFamöus(有名)になる軌跡を辿る物語」と記されている。〈ö(ウムラウト付きのO)〉を、あたかも口を開けたユーモラスな表情の絵文字に見立てるかのように、Unknöwn Kunは自身のSNSアカウント上でもこの文字を多用している。
その名が示すとおり、Unknöwn Kunは出身地や経歴、素顔などが謎のベールに包まれたアーティストだ(日本人であることのみ公にしている)。オフィシャルYouTubeチャンネルでは2018年1月に初めて「So Call Me Baby」のリリックビデオを公開し、5月に1st EP『Unknöwn Kun』をデジタルリリース。2019年10月には初の全国流通盤となるEP『Whö is Me?』を発表し、彼の手掛けた楽曲は『バズリズム02』や『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』といった番組でも流れることになった。
映像ディレクションを担当するIMAGOとタッグを組んだミュージックビデオの数々は、実写あり、アニメーションありと作風はさまざまだが、音楽と同じようにセンシティブかつ雄弁なビデオばかりだ。SEKAI NO OWARI「スターゲイザー」のカバー動画も、注目を集めた。インターネットの情報が溢れ返る時代に敢えて匿名性の高い活動方針を選び、作品そのものの存在感を強調することで、一点突破的に認知度を高めているのである。
では、Unknöwn Kunの音楽の魅力とは何なのだろう。他アーティストへの楽曲提供やアレンジも行ってきた彼は、まず優れたメロディメイカーであり、シンガーであり、そして繊細な詩情を鮮やかに描くことのできるソングライターだ。しかしそれだけではない。彼がこれまでに発表してきた楽曲の多くに共通しているのは、ハウスやダブステップ、トラップなどの、所謂DJミュージックのマナーが採用されているという点だ。ここ数年、海外のポップソングではすっかり主流となったスタイルだけれども、プリセットの強力なグルーヴ感とダイナミズムが、歌心に満ちた楽曲をブーストしているのである。
「Stay Forever」でもそれは然りで、得も言われぬ夏の高揚感や、永遠に続いて欲しいと願う切なる想いを、目まぐるしく跳ね上がるリフレインのグルーヴ感が後押ししている。文字通り「心躍らせる」ために必要なフレッシュなサウンドが、その歌声と、歌詞と、しっかり手を取り合っているのである。ダンス音楽としての機能性ばかりではない。あくまでも歌の情緒を伝えるために、Unknöwn KunはDJミュージックのマナーをフルに活用しているのである。全編英語詞の「Stay Forever」は、ただ使われている言葉がそうだからという意味ではなく、「ソングライティングの素晴らしさとDJミュージックの利点を融合させる」という点で、正しく現代の世界基準に到達している楽曲なのだ。
7月8日にリリースされるCDシングル『Stay Forever』は、先に発表されていた「ロストシープス」などを含め全3曲を収録。困難な時期にも、Unknöwn Kunはこの夏を渾身の力で煌めかせ、色づかせてくれるはずだ。
文=小池宏和
Unknöwn Kun「Stay Forever」

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