GREAT3のデビューアルバム
『Richmond High』は
名うての3人の瑞々しい
アンサンブルが詰まった秀作
初期衝動を発揮したかのようなサウンド
M2「Fool & the Gang」であればラスサビ終わりからアウトロまでのアンサンブル。とりわけベースラインが奔放で、サウンド全体がグイグイ来る。歌が終わっても美味しい箇所がもうひと山あるといった感じだ。M5「エデン特急」やM6「Madness Blue」もそう。M5では歌のある部分はそれを覆い隠すことなくネオアコ調のサウンドが流れていくのだが、間奏やアウトロでは3ピースが重なり合う様が強調されていく。M6はワイルドなギターが歌に重なるところがM5とは異なる感じではあるものの、サウンド全体が尻上がりにグルーブを増していく様子が、これまた強調されている。極めつけはM12「Under the Dog」であろう。間奏のギターソロからアウトロにかけての演奏は実に迫力がある。この辺のグルーブをLed Zeppelin的と言いたくなってしまうのは筆者の引き出しのなさを恥じるところではあるが、そう彷彿させるほどにカッコ良いアンサンブルであるとご理解いただきたい。
いずれも、メンバー3人が輪になってキャッキャッ言いながら演奏している姿を想像してしまうような、そんなサウンドだ。先ほども述べたが、のちに多くのアーティストのプロデュース、サポートをすることになる名うてのミュージシャン3人であるからして、この時点でもロジカルに楽曲を制作することもできたであろう。歌メロが立っているのなら、あえて抑制の効いたアンサンブルもナンボでもできたと思われる。しかし、そうではない楽曲が『Richmond High』にはいくつもある。語弊がある言い方かもしれないが、あまりこねくり回さず、考えず過ぎず、バンドの初期衝動に沿ったかたちで音を出している印象が随所にあるのだ。後年、現在のベーシスト、Janが加入したエピソードとして、[後任のベーシストを探している際に、白根の「シド・ヴィシャスのような(テクニックうんぬんより図抜けた存在感がある)奴は、どうか?」という提案を受けた片寄がjanに声をかけ、加入へと至った]という話があるそうである([]はWikipediaからの引用)。それがGREAT3の本質であるとするならば、『Richmond High』でもある程度、意図的に初期衝動に沿った作り方をしていたのは間違いないだろう。
TEXT:帆苅智之