8月16日@改名1周年記念特別配信ライブ『仮想げんじぶ空間:case.2』 photo by 笹森健一

8月16日@改名1周年記念特別配信ライブ『仮想げんじぶ空間:case.2』 photo by  笹森健一

原因は自分にある。、
今後の飛躍を確信させた
改名1周年記念特別配信ライブ

観る者やシーンに常に衝撃を与え続けたい――。そんな想いのもと、昨年7月7日に活動を開始し、その1ヶ月後に現グループ名へと改名した7人組エンターテインメントユニット・原因は自分にある。が、改名1周年記念特別配信ライブ『仮想げんじぶ空間:case.2』を8月16日に開催した。配信プログラムは7月に続く2回目となる彼らだが、緻密に編集されたスタジオライブ映像と生配信トークを組み合わせた前回と違い、今回はほぼ全編をステージ上でのライブパフォーマンスで構成。イヤフォンで視聴すると立体的な音で楽しめる3D音響も使用しながら、より臨場感を追求したコンテンツで思春期ならではの驚異的な成長ぶりを示し、観た者に今後の飛躍を確信させた。

ピアノの音が躍る軽快なオーバーチュアが流れ、前回の配信ライブでも登場した似顔絵イラストを交えたムービーでメンバーが紹介されると、デビュー時の衣装を基調としたシックな装いに身を包んだ7人がステージに勢ぞろい。そのままスタイリッシュな空気感を引き継いで、2ndシングル「嗜好に関する世論調査」の性急なカッティングギターの音色から、2nd配信ライブの幕は開いた。ステージ後ろの巨大モニターに大映しされる“2択"の文言を繰り返す中毒性の高いナンバーは、文学的な詞世界とオルタナティブなバンドサウンドという彼らの個性を凝縮しており、いわば“げんじぶ"の名刺的作品と言えるもの。加えて、7人を射抜くようにステージ上下から放たれる閃光のような照明が、従来のダンスボーカルグループとは全く異なる、“げんじぶ"独自の哲学的な世界観を際立たせてゆく。

続いて4月に配信された「嘘から始まる自称系」が、さっそくパフォーマンス初披露されたのも嬉しい驚き。ピアノとギターを軸にしたジャジーな楽曲で見せる、ピタリと揃ったシンクロ性の高いダンスは、後のMCで杢代和人が語った通り「繊細さと力強さを意識」したものだった。ドローンを駆使して7人の至近距離へと迫るカメラワークもスリリングで、主人公の葛藤を語る前衛的リリックが投影された床の上で踊るメンバーを真上から捉えたアングルは、中でも衝撃的。通常の生ライブでは決して目にできない、こんな光景を目撃できるのも、まさしく配信ライブならではだろう。バックショットでの締めくくりもクールで、ライブと連動してのコメント投稿では“かっこよすぎる!"とファンも興奮を隠さず、「僕、この曲が大好きで、本当に早くパフォーマンスしたかった!」という大倉空人の言葉にも納得だ。

MCでは“原因は自分にある。"というグループ名になって1年が経ったことを報告し、長野凌大が「最初に聞いたときはビックリしましたね。僕なんて“すぐ慣れる"とか言ってたんですけど、正直一番ビックリしてた(笑)」と告白する場面も。それに大倉が「もう、この名前じゃないと嫌だ」と笑顔で返すと、続く「Up and Down」では、なんとステージが曲名通りにアップアンドダウン! 歌詞の通り“陽炎"のような赤い光が揺れて、夏の終わりを思わせる切ない空気感のなか、左右真ん中と五分割されたステージに7人が散らばり、それぞれが上昇・下降を繰り返して、実にダイナミックなフォーメーションを展開してゆく。そしてエモーショナルな歌唱を聴かせた武藤潤の後ろ姿にスポットが当たると、彼のフィンガースナップに合わせて硬質なピアノの音が鳴り、切り替わったカメラが捉えたのは歌いながらカメラに迫る杢代の姿。そこからステージ下の広々としたフロアを舞台に、紫色の艶めかしい光を浴びて贈られた未発表の新曲「In the nude」は、知られざる“オトナのげんじぶ"を見せるものだった。ラップ調ボーカルを代わる代わる畳みかけるスイングジャズな曲調はもちろん、豪奢なシャンデリアを背景にソファやテーブルを巧みに使った洒落たパフォーマンスも、ジャケットを脱いでシャツ1枚で魅せる俊敏なダンスも、すべてが大人の色気たっぷり。果ては“ウインク"という歌詞でカメラにウインクしてみせたり、バレエ出身の吉澤要人がフォーマルな動きでトキめかせたり、14歳の桜木雅哉が唇を指でなぞってニヤリと微笑んでみせるのだから、コメント欄も“息ができない!"“過呼吸になる"と阿鼻叫喚だ。平均年齢16.7歳のグループが、ここまで身も心も熱くしてくれるとは誰が想像しただろう。

しかし、イラストバージョンの“げんじぶ"メンバーによるMC映像では、年齢相応のはしゃぎっぷりも全開に。ここでは3D音響によりイヤフォンで聞くと声が立体になる仕掛けが施されているということで、まずは吉澤の低音イケボが耳元で響き、「分身じゃあ!」とふざけた武藤の声が上下左右から登場するなど、その効果のほどを証明してゆく。そして「僕たちがキュンキュンさせちゃいます」と、順に甘い台詞を囁いていくが、小泉光咲の「もう眠くなってきちゃったな」からは「一緒に…寝よ」(大倉)、「早く起きろよ」(武藤)、「あっ、やっと起きた」(吉澤)と続いて、少々趣旨から外れてしまうのもご愛敬。子供と大人の狭間を軽やかに行き交う、そのしなやかさもまた、今のげんじぶの魅力に違いない。

それを実証するかのように、メンバーカラーを反映した小粋な最新衣装に着替えての「ジュトゥブ」では、パステルカラーのグラフィック映像に加えて、歌詞を書いたボードや天使の輪など、小道具を用いたスペシャル演出で全力の“可愛い!"をアピール。“僕、君、あなた"を意味するタイトルといい、サビ終わりの“メルシ シェリ(=ありがとう、愛しい人)"という歌詞といい、随所にフランス語が盛り込まれたポップチューンにふさわしく、エスプリを利かせてチャーミングに魅了する。一転、先月配信されたばかりの「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」では、シェイクスピア作品に登場するセリフやモチーフ、タイトルが盛り込まれたリリックと、スタイリッシュなダンスパフォーマンスで、同じラブソングでも可愛いだけではない、ドラマティックなイメージを提示。アンニュイに、アダルトに、キュートに、ロマンティックに。曲ごとに移り変わる彼らの多彩な表現力は、新曲が投入されるたびに、その幅を広げている。

活動2年目に突入するにあたり、今の勢いを自覚して「非常事態ではありますけど、ずっと成長していく年にしていきたい」と大倉が語れば、それぞれが決意表明。「1年目よりも印象に残るパフォーマンスやライブをしたい」(小泉)、「パフォーマンス一つひとつを、より大事にしていきたい」(桜木)、「皆さんと一緒に過ごす時間を増やせるように頑張って、たくさん思い出を作る年にしたい」(武藤)と順に告げるなか、「SNSや配信がある今の時代だからこそのつながり方を模索し続けて、この環境に感謝しながら進んでいきたい」という長野の前向きな視点は、とりわけ印象的だった。また「ファンの皆さんの大切さに気付けたので、2年目は僕たちからファンの皆さんに新しいことを発信する原因となっていきたい」(杢代)、「周りの方々の支えあっての僕らなんだと身に染みたので、感謝を忘れずに高みを目指して頑張っていきたい」(吉澤)と感謝も伝えたところで、「これからもずっとファンの皆さんと一緒に、夢に向かって歩き続けたいという想いを込めて」と武藤が前置いて歌い始めたのは「時速3km」。“君と一緒に歩いていきたい"というメッセージの詰まったミドルバラードは、まさしくファンに対する彼らの心情をそのまま表したもので、天井から差し込む眩しい光を浴びながら想いを込めて歌い、踊る7人のパフォーマンスは、明らかな進化を遂げていた。その姿はファンの心を揺さぶり、“泣ける"“涙腺がヤバい"とのコメントが続々。そんな温かな空気を切り裂くように始まったのが1stシングル「原因は自分にある。」で、背後のモニターと床に映し出されたリリックの狭間で躍動する7人は、ステージを激しく飛び交うどんな光よりも輝いていた。

「こうして1年を迎えられるのも、こうやってライブができるのも、本当に皆さん、アナタのおかげだと思っています。今はまだちっちゃいかもしれませんけど、いつか絶対大きな背中を見せるので、これからもついてきてください」

アウトロで長野がそう告げると、最後はキメポーズのシルエットで配信ライブは閉幕。始まりから終わりまで、徹頭徹尾ぬかりない演出に照明、ステージングは、単に歌とダンスのみならず、楽曲の物語込みで前衛的な世界を創り上げてゆく彼らの魅力を最大限引き立てていた。その姿を360度余すところなく捉えることのできるカメラワークといい、配信ライブという形態と恐ろしく相性のいい“げんじぶ"は、本当の意味で新時代のアーティストと言えるのかもしれない。さらに、自粛期間で会えない時間が長いぶんだけ、その成長ぶりに驚かされるのも、成長期真っただ中にある彼らならではの強み。8月29日には国内最大級の夏フェス『a-nation online 2020』への出演も決まり、時勢を味方につけた“げんじぶ"の勢いは止まらない。

photo by 笹森健一
text by 清水素子

【セットリスト】
M1. 嗜好に関する世論調査
M2. 嘘から始まる自称系
M3. Up and down
M4. In the nude
M5. ジュトゥブ
M6. シェイクスピアに学ぶ恋愛定理
M7. 時速3km
M8. 原因は自分にある。
8月16日@改名1周年記念特別配信ライブ『仮想げんじぶ空間:case.2』 photo by  笹森健一
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