SherLockが『murffin AUDITION 2019
』グランプリの先に見た思わぬ未来と
、初の流通作品「アイカワラズ」に込
めた愛と叫びを語る

SUPER BEAVERsumikaマカロニえんぴつetcが所属する、murffin discs主催の新人オーディション『murffin AUDITION 2019』で見事グランプリを獲得した、スリーピースギターロックバンド・SherLockが、初の流通作品となるEP「アイカワラズ」をリリースした。大阪の音楽専門学校で出会った3人が2016年に結成、関西のライブシーンで着実に活動してきたSherLockが、もがきながら掴んだ光と、予想だにしなかった未曽有の事態。人生に巻き起こる喜怒哀楽を歌にした4曲の結晶には、濃密なこの1年の揺れ動く感情がみずみずしく刻まれている。答えは分からなくとも、叫ぶことはできる。フロントマンである比嘉琉久(Vo.Gt)が、自身のルーツやバンドのヒストリー、運命の大舞台から新作の制作秘話までを語る、SherLock入門編をここに!
●俺たちに可能性を見出してくれた期待に応えたい●
SherLock
――コロナ禍によって活動をクールダウンせざるを得ない期間があって、自分にとっての音楽とか、バンドについて考えることも多かったんじゃないですか?
俺はこの期間、逆にそこからちょっと離れていた部分はあるかもしれないです。特に4~5月とかはスタジオにすら入れないし、メンバーとこんなに会わないことは出会って以来なかったんですけど、あんまり深刻に考えないようにしていたというか、料理とかちょっと違うことで気を紛らわせたりして。周りの友達のバンドとかがリモートでライブをし出して、そういう映像をSNSでちらほら見るようになってからは、すごく……ライブがしたいなぁという気持ちは強くなりましたね。
――華々しく『murffin AUDITION 2019』で優勝した後に、まさかこんなことになるとは。
そうなんですよ! 今年は大事な1年だと思って気合いが入りまくっていたのに……それこそ『murffin night 2020』というイベントで、バンドを始めた頃から目標にしていた東京・新木場STUDIO COASTのような大きいステージにやっと立てると思って、今年の初めはそこを目指して頑張っていたところもあったので。それが中止になったときのショックはすごくデカかったですね。
――その運命のオーディションにたどり着くまでの話もさかのぼって聞きたいんですけど、高校生まではずっと沖縄にいて、それから大阪の音楽専門学校でメンバーと出会ったと。
まぁ東京に行くより大阪の方が若干近いし(笑)、親戚も住んでいたので親も安心ということで。家族はみんな音楽が好きで、親が家で音楽を聴いていた影響もあるんですけど、中学3年生の頃に新しく赴任してきた音楽の先生がギターが得意で。同級生は昼休みに体育館で球技とかをして遊んでいたんですけど、俺はそんなタイプでもなかったので1人でよく音楽室にいたんですよ。そうしたらその先生が、「ギター弾いてみる?」と。簡単なコードの押さえ方を教わったらハマっちゃって、親にアコースティックギターを買ってもらいました。歌うのは元々好きだったので、その頃はずっと1人で弾き語りをしていましたね。
――その先生は、比嘉琉久の音楽人生のキーパーソンですね。
その先生に出会っていなかったら今、音楽をやっていないと思います。あと、ギターを触り出した時期にBUMP OF CHICKENと出会って衝撃を受けて。当時はすごく聴いていましたし、今でも変わらずリスペクトしているアーティストですね。ただ、そこから人前でやる勇気がなかなか出なかったのですが、高校3年生の頃に軽音楽部で初めてバンドを組んだとき、ボーカルがいなかったので、仕方なく俺が歌うことになったんです(笑)。その後、文化祭等に出だしたら楽しくなってきて……という感じですね。
――人前で初めて歌ったときはどう思いました?
聴いてくれた人の反応もポジティブで、そんなふうに思ってもらえるとは想像もしていなかったので、すごく嬉しかったですね。その頃にはもう、絶対に音楽に関わる仕事がしたいなと思っていたので、音楽の専門学校に行こうと。何なら中3のときにギターを触った時点で、「あ、俺はもうこの道でいくのかな」みたいに思っていたところもちょっとありました。曲を作り出したのはSherLockを組んでしばらくしてからで、そもそも俺と(升國)巧生(Ba)が、同じ専門学校の夜間部で。授業で巧生と初めてセッションしたときから、巧生が俺の横で弾いているときが一番楽しいなと思っていましたね。それから学内でバンドメンバーを募集するイベントがあって、昼間部だった(木岡)裕太(Dr)が声をかけてくれて。
――そして、バンド名を決めるときに漫画『名探偵コナン』を読んでいたら、シャーロック・ホームズが出てきてそこから名前を頂いたと。『murffin AUDITION 2019』で優勝する前から、いろんなオーディションに応募はしていたんですか?
自分たちでCDをレコーディングしていたとき、先に録り終わったリズム隊の2人が待ち時間に片っ端からいろんなオーディションに応募して、そこで唯一引っかかったのが『murffin AUDITION 2019』だったんですよね。前の年も応募はしていたんですけど何も反応がなかったので、まずネット投票の審査に進んだだけでもテンションが上がって、3人とも浮かれていましたから(笑)。
――ただ、最後のライブ審査は、あんまり手応えがなかったみたいですね。
俺はそうでもなかったんですけど、2人は帰りの車の中で落ち込んでいましたね(笑)。「まぁでも、最終審査に進めただけでもすごいよ!」と何の期待もせず大阪に帰ったので、結果が来るまでそのこと自体忘れていました(笑)。そうしたら裕太に電話がかかってきて、すぐにSherLockのグループLINEにその連絡が入って……もうビックリしました。最初は言葉が出てこなかったですね。意味が分からなかったです。「え、何で?」みたいな(笑)。
――優勝して、いろいろと話が進んでいくわけじゃないですか。そのときはどんな気持ちだったんですか?
グランプリの知らせを聞いた直後は「やったー!」でよかったんですけど、そこからはプレッシャーですね。murffin discsからリリースできるクオリティの曲を、果たして作れるのだろうかと……曲作りのスタジオで結構ピリついたこともあったし。でも、俺たちに可能性を見出してくれた期待に応えたい気持ちは、やっぱりありましたね。
●やっぱり愛に一番心が揺さぶられるというか、感情を動かされる●
SherLock
――グランプリを経て、満を持してリリースされたEPが「アイカワラズ」で、過去曲の再録2曲と新曲2曲で構成されています。
とりあえず過去に作った曲は、murffin discsからリリースする=より人目に付くということで、今までに作ってきた曲の中から生き残った、大事な曲たちも発信したいなと。新曲に関しては、これまで応援してくれた人たちに新しいSherLockを見せたい気持ちもあったので、半々ずつ入れて。今回は名刺代わりというのもあったんですけど、曲を作っているときは単純にやりたいことをやっただけですね。それが果たして受け入れられるのかは、自分たちを信じるしかなかった感じです。
――何が正解かは分からないけれど、分からないからこそ、自分たちの好きなこと、やりたいことをちゃんとやろうと。
まさにそうですね。いろいろ先輩方に相談もして、好きなようにやってきたのを認められて、かつそこに可能性を見出してもらったからこそ、変わらずそれを貫かないといけないなと思います。
――SherLockでは基本的に作詞したメンバーがメロディやリフをスタジオに持ってきて、そこから3人で広げていくことが多いと。1曲目の「杪夏」は巧生くんの作詞ですけど、ボーカリストとして他人の書いた言葉で歌うことに関してはどうです?
やっぱり自分が思ったことではないので、最初の頃はそれをうまく歌ったり表現するのが難しかったんですけど、今は自分に照らし合わせて解釈したり、意味は変えずに言い回しをちょっと変えたりして、感情移入できるようにアレンジするので、あんまり気にならなくなりました。巧生はまっすぐな歌詞を書く人なので、そこをいい意味で濁したりして調整するのも面白いです。
――「杪夏」は恋愛における後悔というか、失わないと気付かない男のデフォルト設定の感情が描かれていて(笑)。SherLockの楽曲は愛をテーマにしているものが多いですけど、答えが分からなくても、それでも愛を歌いたくなるのは何なんでしょう?
何だろう……? やっぱり愛に一番心が揺さぶられるというか、感情を動かされる。そういう刺激を受けると言葉が出てきますよね。いろいろと答えを探していく中で、自分の考えがすごく出てくる。それを共有したい気持ちになるんですよね。
●いろいろあるんですよ、生きていたらやっぱり(笑)●
SherLock
――2曲目の「ハクイキ」は琉久くんの作詞で、寒い夜にふと思ったことを書いたと。「ハクイキ」にも次の「誇り」にも通じるのは、やっぱり焦りや戸惑いというか。どちらも新曲だけあって、さっき話した『murffin AUDITION 2019』で優勝したことによって生まれたプレッシャーが感じられますね。
それはすごくありますね、周りの目もやっぱり変わりましたから。興味を示してくれる人たちが増えたのはいいことではあるんですけど、それと比例してプレッシャーも感じるので。
――今までのノーマークぶりから打って変わって(笑)。
そうなんですよ、本当に! ずっとバンドを続けていきたいとは思っていましたけど、今までは全く何も起きなかったので(笑)。そこから一気にドンと大きい波が来たので、戸惑いはやっぱりありましたね。
――「誇り」って人生の指針を決めるものだし、人となりをすごく表す言葉だと思いますけど、琉久くんがこのタイミングで「誇り」について歌いたいと思ったのは?
もっと自分に、バンドに誇りを持って歌いたいというか、自分の居場所を探している感じはあります。自分にとって誇れるものは何だろうと考えて……結局、まだ自分の中にそれはないというか、まだ迷っている感じはありますね。
――琉久くんのTwitterをさかのぼって、その人となりやバンドをめちゃくちゃ表しているなと思ったのが、「どうしたら良いのかとか 結局わからないものはわからないけど わからないまま叫び続けよう」という呟きなんです。
確かに呟きましたね。今こうやって改めて言われると、ちょっと照れくさいですけど(笑)。
――他にも「ドMです 追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮するタイプです」とか、いろいろツイートしていましたけど(笑)。
ハハハ!(笑) それは『murffin AUDITION 2019』を振り返っても、やっぱり普段のライブとは違うし、審査員の方たちにジーッと見られている中で、いつものパフォーマンスができるのかと思ったけど、いざステージに立ったら割といつも通りに、何ならちょっと調子がいいぐらいだったんですよ。それを見た巧生に「琉久ってここぞというときに良いの出すよな」と言われて、やっぱり追い込まれた方が力を発揮できるタイプなのかなぁと(笑)。
――ただ、『murffin AUDITION 2019』優勝という音楽人生における大きな転機はあれど、やっぱり嬉しい楽しいだけの1年じゃないと。だって手にケガもしていましたよね?(笑)
あれは風に煽られたドアに指を挟まれ……いろいろあるんですよ、生きていたらやっぱり(笑)。でも、そういう日々の出来事も曲のかけらになっていくので面白いですよね。
●これからも自分たちの好きなことを貫いていきたい●
SherLock
――最後の「イツノヒニカ」も再録ですけど、この歌詞は巧生くんとの共作で。あなたのためとか君のためとは歌えても、<いつだって僕は 僕のために歌う>って、案外言えないことじゃないかと。
自分を可愛がったほうが、結果、周りの人のためにもなるんじゃないかと俺は思っていて。例えば誰かを笑顔にしたいときも、その人が笑顔になると自分が嬉しいからそうするわけで。やっぱり自分がダメになっちゃったら全部ダメになるし。まずは自分を一番大切にしたいと考えて、それで周りの人も幸せになったらWin-Winなんじゃないかという考えのもと、出来上がった曲ですね。
――今の時代の生き方にすごくフィットした発想だと思います。あと、構成的にはシンガロングが印象的な曲ですけど、再録にあたってレーベルのスタッフや友達にも参加してもらったと伺いました。プロフェッショナルな方たちとのレコーディングはどうでしたか?
まず、楽器、機材のセッティングやチューニングなどをやってくださるテックと言われる方々がいてくれたことにビックリして、環境的にもやりやすかったですし、何よりエンジニアの星野(誠)さんがいろいろ教えてくれて。「こういうこともできるよ」とか、「この曲は今こんな状態だから、もっとこうした方がいいんじゃない?」みたいなアドバイスをもらったりして、とても勉強になりましたね。歌録りが全部終わって、最後にみんなで聴いたときにもすごく達成感があったというか、やり切ったというか……緊張感が一気に解けた感じはありました。やっぱりずっと気を張って集中していたので。
――とは言え、レコーディングに二日酔いで遅刻してきたこともあったんですよね? 新人なのに度胸あり過ぎでしょ!(笑)
ハハハ!(笑) 「打ち上げまでがライブだ!」ぐらいのスタンスで活動してきて、そういう場でつながることも教わることもたくさんあったので、レコーディング前日のライブが楽しくてちょっと呑み過ぎちゃって……もう絶対に同じ失敗はしません!(笑)
――そういう意味では、いい先輩がいっぱいいますよ、murffin discsには(笑)。世はこういう状況ですけど、現時点でSherLockとしてやっていきたいことというか、どういうバンドになりたいと思います? 個人的にすごくいいなと思ったツイートが、「めちゃくちゃ売れても 「何でこんな奴らが??」 って思われるくらいなら 全然売れてなくても 「なんで売れねぇんだ??」って思われる方が俺は良い」というツイートで。とてもらしいなぁと。
いい意味で変わらずに行きたいというか、今の雰囲気、らしさを崩さずに、これからも自分たちの好きなことを貫いていきたい。今の時点でファンでいてくれる人たちの期待を裏切りたくないし、そういう人たちのために頑張りたいのはあります。
――そんな1人1人と出会っていけば、それがいつの日にか1万人になり、2万人になっていくかもしれない。そう考えたら、「アイカワラズ」=「相変わらず」であり「愛変わらず」というタイトルもドンピシャですね。
だから、曲がいいと思ってくれたなら、ぜひ会いにきてほしいです。今はこういう状況なのでなかなか難しいとは思いますけど、やっぱりライブを主戦場にしたいし、実際に見てくれたらもっと好きになってもらえる自信はあるので。いつか会えると信じているし、俺たちも必ず会いに行くので!
SherLock
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=日吉“JP”純平

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