NYの大停電をモチーフにした“ロマン
ティック群像劇”ミュージカル『Fly
By Night〜君がいた』が開幕!

1965年11月9日にアメリカとカナダを中心に実際に起こった大停電をモチーフにした、ロマンティック群像劇ミュージカル『Fly By Night〜君がいた』が、2020年9月1日、東京・三軒茶屋のシアタートラムで開幕した。9月19日からは横浜・赤レンガ倉庫でも上演される。出演は、内藤大希、青野紗穂、万里紗、遠山裕介、内田紳一郎、福井晶一、原田優一の7名。
本作は2014年にNYのオフブロードウェイで上演され、2015年ドラマ・デスク・アワードの4部門でノミネートされた。原案はキム・ロゼンストック、脚本・作詞・作曲はウィル・コノリー、マイケル・ミットニック、キム・ロゼンストック、そして今回の日本語上演台本・訳詞・演出を板垣恭一が手掛けた。なお、今回の公演は、劇場公演だけでなく、全20ステージの生配信もおこなわれていく。
この舞台の様子を写真と共にお伝えする(※以下、配慮はしておりますが、若干のネタバレを含みます)。
ミュージカル『Fly By Night』
まずはストーリーを押さえよう。舞台は、1964年11月9日から、大停電が起きた1965年11月9日までの1年間を描く。
母の葬儀を終えたハロルド(内藤大希)と、その父・マックラム(福井晶一)。ハロルドは母の遺品の中にギターを見つけ、形見として持ち帰ることに。一方のマックラムはすっかり気を落とし、妻が好きだった「椿姫」のレコードを聴きながら、毎日を無為に過ごすようになる。
ミュージカル『Fly By Night』
ちょうど同じ頃。姉のミリアム(万里紗)と、妹のダフネ(青野紗穂)は、人口1000人ほどの田舎町サウス・ダコタで暮らしていた。ダフネは、女優を目指して、ニューヨークに行くことを決意し、一人では心許ないからとミリアムを説得。姉妹は一緒にニューヨークで暮らすことになる。
行動的なダフネは、洋服店で働きながら、舞台のオーディションを受ける日々を過ごすが、あるとき、サンドイッチ屋で働いていたハロルドと恋に落ちる。
その一方、ミリアムは星や宇宙が好きな内気なタイプ。そんな彼女が唯一他人とつながれるのは、カフェでウェイトレスをしているときだった。
ミュージカル『Fly By Night』
ある日、ダフネがオーディション会場で、若手劇作家のジョーイ(遠山裕介)に見初められ、新作ミュージカルの主役に抜擢される。そのリハーサルに明け暮れるうち、ダフネとハロルドはすれ違い始める。
ミリアムは、突然現れた占い師(原田優一)に未来を予言されるが、その中に出てきた条件に合致するのは、なんと、ハロルド。彼女は自身の気持ちに戸惑い、ニューヨークを離れて、田舎へ逃げ帰る。
サンドイッチ屋のオーナー・クラブル(内田紳一郎)はきょうも、優柔不断なハロルドに発破をかけている。そして、孤独を募らせたマックラムはある決心をする。
ミュージカル『Fly By Night』
そして、舞台の最後。1965年11月9日、大停電が起きて−−−−。
実際に起きた大停電をモチーフとした「ロマンティック群像劇ミュージカル」。停電というハプニングが起きて......と聞いてドタバタ喜劇なのかと思いきや、全くそうではない。大停電が起こるのは、舞台のクライマックスのみ。それまで長い時間をかけて描かれるのは、ハロルド、ダフネ、ミリアムの三角関係や、ハロルドとマックラムの親子関係など、あくまで登場人物たちの人間模様だ。
ミュージカル『Fly By Night』
この舞台の面白いところは、時系列や舞台の場面設定が複雑に入り乱れることだろう。冬のニューヨークから、夏のサウス・ダコタになったり、数ヶ月を早回しでみてみたり......。相当に入り乱れるものの、ナレーター(原田優一)の解説と、演出の板垣恭一の手腕により、観客が混乱に陥ることは回避されることだろう。むしろ、時系列や場所がズレていくことで、登場人物たちのつながりや関係性がより色濃くフォーカスされるつくりになっているように感じられる。
ミュージカル『Fly By Night』
なお、時系列が入り混じることについて、演出の板垣は「この舞台のテーマでもある、ある種のはかなさ−−『FLy By Night』という英語を僕は「刹那の」とか「束の間の」という風に解釈していますが−−僕たちは、そういう断片的なものをかき集めて、一つの人格を生きている気がする。時間が行ったり来たりしているのは、それを補足する説明になるのかなと」と以前の取材で語っている。
ミュージカル『Fly By Night』
登場人物は6人+1人という、少人数のミュージカルだが、“群像劇”らしく、一人ひとりの背景や思いがストーリーの中にしっかり描かれている印象だ。優柔不断なハロルド、行動力のあるダフネ、内気なミリアム......と、それぞれの俳優に当て書きしたのかと思えるほど配役がぴったりなので、ぜひ注目してもらいたい。そして、登場人物それぞれに感情移入するのもいいし、キャラクターたちの「運命」の分かれ道を鳥瞰的に眺めるのもまた面白いかもしれない。
ミュージカル『Fly By Night』
ちなみに前述の「+1人」は原田優一の演じるナレーター。ナレーターのみならず、占い師や、姉妹のパパ・ママ、MCから、チケットの売り子まで、かなりの役数を一人でこなし、茶目っ気たっぷりに演じる。以前の取材で、原田は自身の役について「このナレーター役が何者なのか、まだ定義はありません。この世の者なのか、人間なのか、人間でないのか、神なのか、何かの使いなのか......。みなさんそれぞれに想像していただければと思っております。もしかしたら、この物語を進めていく上で、『運命を支配する者』と捉えられるかもしれません」と語っていた。
ミュージカル『Fly By Night』
上演時間は1幕70分、休憩15分、2幕70分の計2時間35分(予定)。いわゆるミュージカルらしい曲から、クラシックやR&Bまで幅広い楽曲で構成され、キーボード、ギター、ドラム、ベースという4ピースバンドの生演奏もいい。全公演配信されるので、ぜひ、お見逃しなく!
ミュージカル『Fly By Night』
ミュージカル『Fly By Night』
取材・文・写真撮影=五月女菜穂

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