谷山紀章の考える「J-POPの流儀」 『
パラホス』を通して見える「大衆音楽
の面白さ」とは

新音楽エンターテイメント『パラホス』。

<音楽><ダンス><ボイスドラマ>で楽しむ音楽エンターテイメントである本タイトル。近未来の日本を舞台とし、「ホスピタリティ・アーティスト」通称ホストによるバディ制のパラパラダンスバトル&接客が『パラホス』の名で競技化され世を席巻し、世界中が『パラホス』に参戦し頂点を目指す…というストーリーの中で、クラブ「DREAM LOVE」オーナーにして、パラホスの世界的ブームのきっかけを作った人物の一人である皇烈生を演じるのは谷山紀章。有名ユーロビート楽曲「NIGHT OF FIRE」を本作でカバーしている谷山に、『パラホス』の印象、作品の面白さ、更には「J-POP」についてまで語ってもらった。

――まず、今回の『パラホス』の企画を観たときの最初の感想ってどうでしたか?
いやあ、まだ掘るところあるんだな、っていうのが率直な感想ですね。男性声優がキャラクターとして歌を歌うっていうのは、『ネオロマンスシリーズ』くらいから『うたの☆プリンスさまっ♪(以下うたプリ)』があって、『ヒプノシスマイク』があって……っていうでっかい流れがあると思うんですが、それでもまだ掘るところあったか、ホストか!っていう(笑)。
――たしかにまだあったか!という感じはありますね。
しかもここでユーロビートですよ。「えーっ、マジ!?」っていう(笑)。 でもシンプルに「面白えっ!」って思いましたね。パラパラって90年代から2000年くらいのカルチャーだと思うんですけど、そこをあえてここに持ってくるっていうね。
撮影:中村功
――今回ご担当されている皇烈生(すめらぎれお)というキャラクターについてはいかがでしょうか。
烈生は元現役。かつてレジェンドって言われていて、今もまだ半分プレイヤーという立ち位置で、後進の育成を考えているという所では非常に、責任感が少なそうでいいなあと思いましたね。僕、センターとか立ちたくないんですよ。
――そうなんですか?
他作品になりますけど、『うたプリ』なんかでも、メインの7人のうちの一人っていうのが凄く居心地が良いんです、センターではない立ち位置。そういうのがラクなんですよね。これは僕の性分みたいなもんですから、しょうがないんです。だから、非常に「若い衆、頑張れ!」って言う中で、ちょっとチヤホヤされる感じは、とっても居心地が良さそうだなとは思いました(笑)。
――『パラホス』は簡単に言うと、「パラパラ」と「ホスト」の合体コンテンツだと思うんですが、まずパラパラっていう文化って、紀章さんは通ってこられてるんですか?
思いっきり世代だけど、僕はやらなかったですね。あの頃のディスコだとかクラブって、雰囲気とかは好きだったけど、パラパラはもうちょっと僕らより若い世代がやってたような気がするなあ。僕らの下、松坂世代ぐらいの人たちって、「やってたやってた」って人多いんじゃないかな? でも、面白がって見てましたね。例えば『SMAP✕SMAP』で木村拓哉さんがやってたじゃないですか。
――やってましたね!
「バッキー木村」ですね。木村さんって物凄い動きのセンスがバツグンで、かっこよく見えるんですよ。だから「うわあ、すげえ、こういう風に踊れたらかっこいいな」って思っちゃう。パラパラって凄いシンプルで、横のステップに、上を合わせるだけだけど、それが面白いですよね。
――ご自分ではやってみようとは?
いや、自分はやろうとは思わなくて。僕、ダンスとか振り付けとかを覚えるっていうのが苦行だと思ってるんです(笑)。 例えば練習とか、歌詞を覚えるとか、振り付けを覚えるとかっていうのが、僕の人生の最大のライバルというか、敵なんで。
撮影:中村功
――敵ですか(笑)。そして今回はディスコ・クラブに加えてさらに夜の香りがするホストがプラスされています。今作では「ホスピタリティアーティスト」、通称「ホスト」ということですが。
いわゆる「ホスト」とは違うんですよね、もう、「密」無しでやっていきたい思いはありますね(笑)。
――所謂夜の仕事であるホストも、城咲仁さんや最近だとローランドさんの活躍でタレント的に扱われることも増えたと思います。
世間に浸透しましたね。昭和のホストの印象からも大きく変わりましたよね。当時は紫のダブルのスーツ着て、ビッチリ髪整えて……みたいなイメージだったけど、今はもうちょっとポップになってるって言うか。より親しみやすさみたいなものも「ホスト」って言葉の中に含まれてるんじゃないかなと。
――確かに可愛い顔のホストさんが増えた印象ありますよね。
でも凄いですよね、新宿の小滝橋通りや職安通りの交差点とかにでかい看板で、「職業、イケメン」とか書いてある。スゲーキャッチコピーだな!って思って(笑)。 「職業、イケメン」。言ってみたいな!って思いますよ。
――紀章さんならイケると思いますよ。
ムリムリムリ! もう45歳だもん(笑)。
撮影:中村功
――でもそういうものが、今回のようなサブカルチャーコンテンツに落とし込まれてくるようになってきました、紀章さんの年代から見たらどう感じられますか?
「いまの時代だな」と思いますよね。一昔前だったら、ホストをアニメとかっていう分野には落とし込みづらかっただろうし、今はそういう時代なんですよね。あんまり扱いづらいものじゃなくなってるっていうことなんじゃないですかね。
――パラパラもホストもすごく「日本の文化で風俗」の一環だとおもうんですけど、それが今回のような形でコンテンツになり、その目玉として起用されてるのはどういうお気持ちでしょうか。
僕はもう素材として面白がってもらってナンボだと思ってるから。自分で「これやりたいあれやりたい」って企画を立てるようなタイプじゃないんですよね。完全にプレイヤーなんで。
――プロデューサー目線にはならないという感じですか。
自分の話をさせていただくとそうですね。だから、「谷山紀章にやらせたらこの役面白くなりそうだな」って思ってもらえたってことが、一番ありがたいというか、ニヤっとするところではありますよね。面白そうだなって思ってもらえたのが嬉しい。
撮影:中村功
――『パラホス』はこれから楽曲やドラマCDが出て、いろいろ展開していく勢いを感じるんですけど、どういう風に関わっていきたいですか?
携わり方としては、歌は得意なんで思いっきり貢献したいと思ってますね。あと烈生って設定が41歳なんですよ。これだけ実年齢と近い役って滅多にやらないから、ある種のチャレンジだなと思いますね。説得力みたいなのが、言葉にずっしり重みが乗らないと、なんか薄っぺらくなりたくないとは思ってます。
――他作品では実年齢より若い役をやられることが多いですよね。
絶対多いですね。まあでも烈生は元ホストで、まだ枯れてない現役感があるし。ホストって比較的若々しい職業だと思うんですよ。
――そうですね、人気商売ではありますし。
だからそんな老け込み過ぎるとか、声を作り過ぎるってことはしなくていいかな、とは考えていますね。
――そして先程歌唱のお話がありましたが、今回まずは「NIGHT OF FIRE」がリリースされます。
「NIGHT OF FIRE」はもちろん知ってる曲だったし、今回日本語訳にしたのが面白いですよね、ちょっとぶっ飛んでて(笑)。歌っててすごい面白かったですよ。あと、意外と難しかったな。
――そうなんですか?
録った曲聴いたら、もっとこうやって歌えばよかったっていうのは、正直、反省としてありますね。もっと当てにいけばよかったな、って。
――僕は今回、『パラホス』の企画を聞いたときに、「谷山紀章さんの演じるキャラが『NIGHT OF FIRE』歌うんです」って言われた瞬間に、「なにそれ、凄い聴きたい!」って言っちゃったんですけど(笑)。
ははははは! 確かにね!ありがとうございます!
――やっぱり、GRANRODEOでも活動されているので、ロックの印象がすごく強かったんです。
どうしてもそうでしょうね。
――なのでユーロビートを歌われるのが面白いと思ったんです。難しかったと仰ってますが、ユーロビートはいかがでした?
一番歌ってないところでしたね。僕、カラオケ大好きで、本当に一人で3時間4時間歌える人で、演歌でもなんでも、どのジャンルも歌えるんです。ただここは掘ってなかったなってところだったから、実際やったら割と戸惑いましたね。今思うと、もっとああできたな、こうできたなって、ちょっとだけ!ちょっとだけありますね。新鮮だったし、思ったよりぜんぜん難しかったですよ。
――歌詞もそれこそ、六本木や渋谷に池袋、地名がガッツリ入ってきて面白いですよね。
ノリが20年前って感じがして。僕はやってて凄い面白いですね。これって言っちゃうと「おバカ」でしょ?勿論いい意味で。
――そう思いますね。
『うたプリ』だってある意味こういう面白さがあると思うし、やっぱこの「崩し」というか、このシリアスじゃない感じが良いと思いますよ。
撮影:中村功
――原案・原作を担当している天音トウさんとも先日少しお話をしたんですけど、「いい意味で『大衆曲』をやりたい気持ちがある」とは仰っていましたね。
あー!いいっすねえ。
――「歌謡曲」といいますか。最近流行りの大衆曲だとDA PUMPさんの『U.S.A.』とかそう言う感じだよね、と。
あーなるほど!そうですよね、完全にそうですね。
――「大衆曲を本気でやるって、バカバカしくて面白いよね」って話になったんですけど。
すげえいいと思う、それ。
――そうなると、そこに説得力出せる歌が歌える男性声優だと、谷山紀章しかいないと思うんですよね(笑)。
本当ですか!それは嬉しいですね。任してくださいって感じです!(笑)
――ユーロビートって、ヨーロッパから生まれたジャンルですが、日本では安室奈美恵さんの「TRY ME ~私を信じて~」やMAXの「TORA TORA TORA」、古めだと荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」やWinkの「愛が止まらない 〜Turn it into love〜」なんかがカバーアレンジされているし、ちょっとユーザーのジャンルへの捉え方が「J-POP」に近いと思うんです。
そうですね、「恋のマイアヒ」とかもかなり「J-POP」な感じはしますよね。
撮影:中村功
――キャラソンとかアニソンとか歌う、そしてロックもされている紀章さんから見た、「J-POP」って、どういうものなんでしょう?
「J-POP」は優秀だと思いますよ。僕がどうこう言うあれじゃないですけど、やっぱり「売れてる音楽」だから。「最近の音楽は衰退した、退化した、昔は良かった」とかいう人って絶対いるけど、絶対時代と共に動いていくものなんだと思うんですよね。比べるもんじゃないから、それ言うこと自体ナンセンスだと思いますよ。
――なるほど。
今の売れている人たちは凄いですよ。Official髭男dismさんとか、最初聴いた時は人気の理由がわかりづらかったんですけど、アルバム通して聴くと「いや、やっぱり良い曲ばっかりじゃん!」とかね(笑)。
――通して聴くと伝わるものってありますもんね。
そう、米津玄師さんも最初「この人、歌い方クセあるなあ」って思ったけど、凄いうまい。あのクセがフックになって人気あるんだ、楽曲もスゴイよねえ……!とかね。あと藤井風くんとか。僕けっこう前から藤井風くん聴いてて、「なんか良いなあ」って思ってたり。
――やはり結構ヒットメイカーを抑えてらっしゃる!
ヒット曲たちが何で「J-POP」になっていくかって、大衆音楽だからじゃないですか。みんなに認められて、多くの人が聴くから“J-POP”ってなっていくわけで。「J-POP」ってジャンルがあるわけじゃないですよね。「ロック」っていうジャンルが無いように。
――はい、そうだと思います。
だから今は今で、現在進行形で音楽が進化してるって思わないとダメなんですよね。「若いのに凄いね!」って言う感じ(笑)。 そういう風に言うオジサンになってきたってことなんだけど。
――いやいや!でもその中でも、紀章さんはシンガーとして実績を残されてるじゃないですか。自分の歌っていうものに関しては、時代の変化などは感じられたりしますか?
やっぱ、「取り入れたい」と思いますよね。人の曲歌うの凄い好きだから、ずっと歌ってると自然にクセがそっちに行っちゃったりしますよ。なんか、僕はそういうのでいいと思う。「ごった煮」って言うか、「魔女の秘薬」じゃないけど、何入ってるかわからないけど、ぜんぶバンバン入れちゃえ!みたいな(笑)。 それで自分を強化している感じですね。ここから歌が下手になることは無いから、どんどんいろんな影響受けても構わないと僕は思ってますね。
――サザンとかカラオケで歌ってると、気がつくと歌い方が桑田さんに寄っていくみたいなことありますよね(笑)。
サザンは、歌うと絶対桑田さんみたいになる(笑)。カラオケって、歌うとその人っぽくなっちゃうんですよねえ。B'zさんとかもそうかも、僕、稲葉さんの次にB'z上手いですよ(笑)。
撮影:中村功
――そんな紀章さんが、この『パラホス』ってコンテンツを思いっきりやってるのが、僕はすごい痛快なんですよね。
それはそうですね。この面白がり方っていうのは、僕も全然やぶさかじゃないです。
――改めて、『パラホス』っていうものを、どう楽しんでもらいたいですか?
お客さんの入口が僕なんであれば、それでいいんですよ。谷山紀章が何か本気で、既存の「J-POP」的など真ん中を本気で歌うらしいよ、でもいいし。「ここにきて、この期に及んでホストとパラパラだってよ!」って、どっちにしたって引っかかりは凄いから(笑)。 面白がり方はいっぱいあると思うんですよね。これから歌やストーリーなり、キャラクターたちが織り成す展開が待ってるので。まずは、「NIGHT OF FIRE」聴いてください!(笑)
――「NIGHT OF FIRE」は聴いてもらいたいですね、ド頭の「ファイヤー!」で完全に僕はヤラれました(笑)。
あれはカッコつけてたら、リテイクしたいところなんですよ。でもすごい面白い声が出たから、「アリだな」って自分で思っちゃって。「良かったら使ってください!」って。「キャラちがくね?」って思われるかもしれませんけど、面白けりゃいい!もうこれで行こう!ってことで(笑)。
――「面白ければいいよ」っていうのが凝縮されてる感じはしますね。
でも、ちゃんと本気で歌ってるんで。歌はちゃんとしてるっていうのが面白いんですよね。
――では『パラホス』で紀章さんが歌いたいって思うものはなにかあったりします?
何でも!何でもいいですよ。僕が何歌いたいって言うか、「これを歌わせたい」っていうの、逆に知りたいですね。ご意見どんどん頂ければ!
――では最後に、『パラホス』が気になっている読者の皆さんに一言いただければ。
ぜひうちのお店、「DREAM LOVE」に来ていただいて、夢のような愛を味わっていただけますように。我々従業員一同、誠心誠意込めて、この作品に磨きをかけていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいなと! ご来店お待ちしております!
撮影:中村功
インタビュー・文:加東岳史 撮影:中村功 
スタイリスト:奥村渉 衣装クレジット:GalaabenD tel 03-6455-2065 ヘアメイク:西田裕美子(Manoa)

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