【T.MORIYAMMER インタビュー】
“こんな状況だからこそ楽しもう”
っていうものにしたかった
ファンに届いてほしいけど、
俺にも届いてほしい
続く「LA-DA-DA」は仮想ライヴですか?
わざと拍手を入れてるんですけど、みんなで一緒に歌える曲にしたかったんですよ。タイトルも“LA-DA-DA”だし、サビをみんなと大声で歌えればと。“今はこんな時だけど、夢の中では会えて、ロックが鳴ってるよ”って感じで、楽しんでくれたらいいなと思って、シンプルなアコースティックサウンドにちょっとカントリー的なものも入れて。
ライヴハウスよりもパブというか、すごく近いところで一緒に楽しんでいる感覚になりました。
うんうん。家でお酒でも飲みながら聴いてほしいですね。
間奏のギターとピアノが心地良いし、いい感じに弾けたサウンドですよね。
浩二はTHE COLTSでやってるから、こういうのは得意なんですよ。それにあいつも俺も自分の年齢以上に古い、あの辺の音楽が好きだからね。今の日本では受け入れられるようなものじゃないんだけど、ああいうブルースやカントリーは捨てられない。
まさに“こんな状況だからこそ楽しもう”っていう曲になってますね。
やっぱりふさぎ込む時間が、みんな多かったからね。特に非常事態宣言の頃は。俺もそうだったし。でも、“これは覚悟しないといけないな”って思った時、いい意味で開き直れたところがあって。俺は音楽を作ることが仕事だから、音楽は精神的な栄養源にはなるはずだと思って、みんながちょっとでもホッとする、ちょっとでも笑えて元気になれる曲を作りたいというのはありましたね。
そして、最後の「ライトを照らせ」は森山さんらしいやさしいメロディーが印象的でした。
この曲だけはヘルニアで倒れた時に6割くらい作ってたんですよ。そのあとにコロナになったんで、歌詞を書き換えたのね。やっぱりメッセージとまではいかなくても、THE MODSに近い雰囲気のものが一曲欲しいと思ったんです。とはいえ、俺と浩二でやるわけだから、パンクじゃなくて…それこそパンクのあとに来るニューウィエブだったり、パワーポップだったりの感じのアレンジにしたいってのは思ってました。
ギターのコード感とかは新鮮でした。
そうだろうね。THE MODSっぽい曲だから、THE MODSっぽくしないようにしようっていうのが、俺と浩二の中でのテーマだったので。
でも、この曲のポイントは《当たり前の日々 当たり前のシーン 人間(ヒト)として生きる意味を想う》という歌詞かなと。
これは…考えさせられたよね。昨日まで当たり前だったことが全部盗まれたわけだから。人と会えない、もちろんライヴもできない。冗談じゃないよ。60年生きてきて、いきなりそんなこと言われて、“えっ、それは俺に死ねってこと?”ってなるよね。実際、いろいろ考えたし。“この先もこのままだったら、俺は何のために生きるんだ?”って。家族や仲間がいるから、その人たちのためにも生きたいと思うけど、“じゃあ、俺に何ができる?”ってなるし…というか、実際になったし。でも、“いや、それじゃダメだ。もう一度あの光の下に戻るべきだ”っていうのが自分にとっての答えだった。
《居るべき場所へ ライトを照らせ》ということですね。
そこしか解決できないからね。やっぱり希望を持ちたいんですよ。もちろんファンに向けたところもあるけど、俺に対する曲でもあるので。ファンに届いてほしいけど、俺にも届いてほしい。これはそんな気持ちが強いですね。
4曲入りとはいえ、四者四様のサウンドとグルーブの本作ですが、どの曲もカラッとしているというか、陰の感じがない作品になりましたね。
そう。精神的にも重くてマイナーコードの曲もあったんだけど、それは今じゃないっていうのが自分の中であったし。THE MODSだったら違ったかたちの突き抜けたものにできたかもしれないけど、俺と浩二とでやるんだから、ただのバカでいいんじゃないかって(笑)。ロック好きなバカがやってることを届けるのが、今は一番いいと思うわけ。原始的な喜びだったり、原始的な衝動を伝えたいし、自分たちも感じ直さないといけない。ロックも全部盗まれてるわけだからね。まぁ、怒りの部分はTHE MODSで出しますよ(笑)。
これ、やはり第二弾も期待してしまうのですが。
実はね、4曲で終わらなかったんですよ(笑)。ソロ用だけで20曲くらい作ったのかな? 最初はアルバムを出そうと思ったんですけど、アルバムってなると時間がかかるし、もちろん制作も大変になってくるし、浩二も自分の仕事があるわけだからね。そういう時間的な問題もあり、とりあえず4曲をマキシシングルとして出そうと。少しでも早く、憂鬱な想いをしているファンに届けることも大事だし。だから、いつでも次の作品は作れるんですよ。
それは楽しみです! でも、まずはこの作品を聴いてほしいですよね。
そうだね。状況が状況だけに、この曲たちを生のライヴでやる機会はまだ見えてないし、ひょっとしたらかなり先になるかもしれないけど。THE MODSのファンは仕事をしている人がほとんどだろうから、経済的にも苦しい想いをしている人もいっぱいいるだろうし、それで家庭のこととかも大変だと思うんだけど、俺ができることはこれしかないから、早くこれを届けたい。せめてこれを聴いている時間だけでも嫌なことを全部忘れて、昔の自分を取り戻してほしいし、少しでも元気になってもらいたいですね。
取材:石田博嗣
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シングル「GET YOURSELF」2020年9月23日発売
ROCKAHOLIC Inc.
ティー・モリヤマー:1981年にTHE MODSのリーダー、ヴォーカリスト&ギターとしてデビュー。以来、時代に流されることなく音楽(ロック)に対する真摯な姿勢を貫き、今日まで日本のロックのパイオニアとしてバンド活動を続けている。その間、300曲以上に及ぶTHE MODSのオリジナルナンバーのほとんどのソングライティングを手がけている。また、THE MODSのフロントマンとしてデビュー以来、ファンのみならず多くのアーティストたちにも多大な影響を与え続けてきた。技術や理屈だけでは創れないバンド然とした強靭なサウンドと森山の類い稀な歌唱力とカリスマ性が最大の魅力である。1985年に行なった最初のソロワークでは、より洗練されたソングライティングとヴォーカルアプローチでシンガーソングライターとしての幅の広さを世に知らしめた。そして、2020年には35年振りにソロ活動を再開! 9月にマキシシングル「GET YOURSELF」を、12月にはアルバム『ROLLIN’ OVERをリリース。THE MODS オフィシャルHP
「GET YOURSELF」MV(Short Ver.)