EGOIST 無観客ライブで歌った「マタ
イツカアエタラ」 思いを紡ぐ福音の

2020.10.4(Sun)EGOIST LIVE on www.2020 side-A2B 『chrysalizion code 404:enchainer』@豊洲PIT

9月12日に開催される予定だった EGOISTの配信ライブ EGOIST LIVE on www.2020 side-A2B 『chrysalizioncode 404:enchainer』が10月4日に豊洲PITにて振替公演を行った。
9月は公演当日にボーカルchellyの体調不良による急遽延期となり、ファンも心配していたが、今回本人の体調も回復して満を持しての公演となった。通常だったらオールスタンディングで3000人を収容できる豊洲PITは関係者のみでがらんどうの空間。時間になった瞬間、空虚なホールに荘厳な鐘の音が響き渡る。
モヤの向こう、人影が見える、そしてchellyの柔らかで強い声が聴こえてくる、ライトが静かにステージに立つ楪いのりの姿を照らし出す。一曲目「原罪の灯」だ。そのまま「永遠」へ。印象的な映像効果の前に立つ楪いのりは、無人のフロアにその歌声を降り注ぐように紡ぎ出す。
アニメ『ギルティクラウン』で楪いのりの声を担当した茅野愛衣のモノローグが曲間のブリッジとして使われる演出は3月の『side-A』、8月の『side-A2』と共通。現実と空想が混ざり合うような不思議な感覚の中、突如重低音が身体を直撃する、歌われるのは「英雄 運命の詩」。荘厳さと激情が入り交じるこの曲を歌い切ると瞬時に衣装を変え、「Love
Struck」へ。
楽曲のギャップにくらくらするような感覚を覚えるが、この多様性こそEGOISTのライブの面白さ。様々な切り口の楽曲陣をしっかりとつなぎとめているものこそ、chellyのボーカルだ。
エアリーでウィスパーな魅力は変わらず、今のchellyのボーカルはデビュー当時と比べると圧倒的にボリューム感が増している。そしてその中心にボーカリストとしての芯みたいなものを感じることもできる。難易度の高い曲たちを魔法のように操る彼女の魅力にネット上で配信を楽しんでいるファンたちも歓喜で応える。
「Lovely Icecream Princess Sweetie」では可愛さを全面に出したサウンドの中にもエッジのきいたギターサウンドが光る。フロアで手をふるファンの姿が見えるような時間はあっという間に過ぎていき、モールス信号を合図に「Planetes」へ。
人気曲を散りばめながら(EGOISTには名曲と人気曲しかないのは承知の上だ)揺さぶられる心はどんどんそれを包む日常の淀みを削ぎ落とされていく。ただ歌う楪いのりとchelly、そして自分だけがいる空間が構築されていく。
歌からつながるようにモールス信号が言葉を紡いでいく、「マタイツカアエタラトオモウ」。その言葉から歌われる「Ghost of a smile」にはまるで映画のような物語を感じた。リローデットの衣装に身を包む楪いのりは慈しむように歌う。アコースティックギターのサウンドが温かい「想いを巡らす100の事象」、そして大事に優しく「この世界で見つけたもの」を披露。バラードの連続はどこか自分の気持ちを見つめ直すような気持ちになる。心のトリガーをEGOISTの音楽は軽々と引き、ほんの少し前に進む力をくれる。
茅野愛衣のモノローグが再度語りだしたのは、アニメ『ギルティクラウン』の世界、そこから一気に「The Everlasting Guilty Crown」のイントロが無人のフロアを包む。どこかアニメ本編で、アポカリプスウイルスにより荒廃した世界のあの風景を思い出してしまった。あのときも今も楪いのりは歌い続けている。歌で希望を紡ぎ続けている。それは今の僕らが持つべき希望でもあるのだと思う。
続けて歌われたのは前曲と同じ勇気と希望の曲「KABANERI OF IRON FORTRESS」。アニメ『甲鉄城のカバネリ』主題歌である勇壮なこの曲には、配信を見ているファンもコメントで興奮を隠せないようだ。しかしEGOISTはまだ止まらない、次に披露されたのもハードチューン「Fallen」。圧倒的な照明と映像効果が曲の世界観を更に際立たせていく。
ふと時計を見るとあっという間に一時間が経過していた、いつの間に?まるで白昼夢を見ていたかのように時間がすっ飛んでいる。
ここでまた茅野愛衣のモノローグ……と思った瞬間聴こえてきたのは『ギルティクラウン』主人公桜満 集を演じた梶裕貴の声。そしてchelly自身の声も入ってくる中、本編ラストで歌われたのは壮大なバラード「キミソラキセキ」。満天の星空を背景にフロアを見渡しながら歌う彼女たちには満員の観客が見えていたのかもしれない。
EGOISTは特異なアーティストだ、歌うchellyと舞台に立つ楪いのりは別の存在だが、限りなく重なり合っている。ステージに立つその姿は確かに一見バーチャルな存在なのかもしれないが、そこには確実に魂がある。chellyは勿論、楪いのりも間違いなく“そこに居る”のだ。次元も空間も、ある意味時間も超えて彼女たちの歌はそれを聴く人々に福音のようにもたらされる。そして裸になった心はただ、歌われる思いや世界を受け入れるしかないのだ。
ここまで13曲一気に歌いきったあと、chellyがMCに立つ、「口下手だからみんなの力がないと何もしゃべれないよ」といいつつも楽しげだ。アンコール一曲目で披露されたのはライブ初披露となる「1,000,000 TIMES」。ゲストボーカルとして参加したMY FIRSTSTORYとのコラボ楽曲であるこのアッパーなロックチューンを表現力豊かに歌いきる
chelly。ストレートなバンドサウンドは少し新鮮な印象もありながら、違和感ないその表現に彼女のボーカリストとしての才能を改めて感じる。
「すごい難しい楽曲なんですよ、はー緊張した!緊張したけどワクワクもしました」と歌った感想を語り、あっという間に最後の楽曲「Extra terrestrial Biological Entites」へ。
普段ライブでは前半で歌われることの多いこの曲が最後を飾るのは珍しい気がしたが、終演後に12月3日に久々となる有観客&配信のハイブリットライブ『EGOIST LIVE on theREAL side-B』が発表されたことで、次のライブへのプロローグのような気がした。休みなく歌われ続けた15曲の歌の世界で僕らの心はむき出しになってしまった気がする。次は会場でこの思いをぶつける番だ。chellyに、楪いのりにその気持ちを伝える瞬間まで、あと少しだ。それまではアーカイブ配信でこの思いをもっと研ぎ澄ませておきたい。
終演後chellyに話を聞く機会を得たので、最後にライブ終了後すぐの彼女の言葉をお届けする。

――ライブお疲れ様でした、終わってみていかがでした?
ちょっとだけ緊張しましたね、何回目かの無観客なんですけど、無観客という状況にはちょっと慣れつつあるんです。それもどうなのかって思いますけど(笑)。
――過去の無観客配信ライブと比べるといかがですか?
いつもアンコールで皆さんのコメントを流れてくるのを見ているんですけど、今日はそれがなくて余計寂しさを感じましたね。それ以外は楽しくやらせていただきました。
――でもファンの反応がないのも難しいんだろうなと思いながら拝見しました。
そうなんですよ、いらっしゃるからこそ私自身のボルテージも上がっていくものなので、その部分は寂しいですね。
――ツイッターのコメントも拝見していましたが、セットリストに関してかなり反響があった気がしています。ちょっとおもしろい作りのセットリストでしたよね、意識された部分はあるんですか?
あんまりやらない組み方だったとは思ってます。歌の技術的な話をすると、調整が難しかったですね。
――「英雄 運命の詩」から「Love Struck」へいきなりぐっと行ったのは大変そうだなって思っていました。
切り替えはけっこう大変でしたね。可愛い曲最近やってなかったのもあって、気持ちを作るのは難しかったです(笑)。
――12月に久々の有観客ライブも開催されますが、いかがですか。
半分だけお客さんを入れて配信もありで、というのは久しぶり感もありながら初めて感もありますね、久々にお客さんに会えるのも楽しみですね。
――今回モノローグ部分に茅野愛衣さんだけではなく、『ギルティクラウン』で桜満 集を演じた梶裕貴さんも参加されていました。chellyさんも少し参加されてますよね?
私も少しずつ参加させていただきました。
――いかがでした?
オタク心的には役得でしたね(笑)。ギルティクラウンファンの人も、EGOISTのファンの人も絶対喜ぶだろうなと思ってドヤ顔してましたね(笑)。絶対想像してないだろうなって思ってました。
――梶さん終演後一言だけ「いのり。」ってツイートもされていましたね。
ありがたい話ですね……。
――今回もう一つ印象的だったのが、アンコールラストが「Extra terrestrial Biological Entites」だったことです、比較的ライブ前半で歌われることが多い曲の印象がありましたが、これはなぜ最後に?
前回の『side-A2』の一曲目だったんですよ、12月3日までのツアーを全編通してつながっているというのを出したいというのはありましたね。
――12月へのプロローグ的なことも含んでいるのかなって思ったんです。
そういうのもちょっと匂わせてみようかな、というか(笑)。
――MY FIRST STORYとのコラボ楽曲「1,000,000 TIMES」も生で初披露しましたが、難しそうですよねあの曲。
EGOISTの中ではなかなか無い楽曲ですし、EGOISTとしてというよりはchelly個人としての楽曲になるので今回はアンコールに配置したんです。でもすごく経験を積ませていただいたというか、どうやってロックな曲調に自分の声を乗せていくかっていうのはレコーディングのときにすごく考えた部分なんです、でも実際ライブで歌ってみて凄く楽しかったですね。
――ライブを見て、ボーカリストとしての芯がすごいしっかりしてきた気がしました。今回のライブもアーカイブ配信もあるということですが、最後に読者の皆さんへコメントいただければ。
まずご心配をおかけしましたというのと、挽回する思いも込めてやる気充分で挑んだライブだったんですけど、新しい試みもありつつ、次に繋がるようなものになったなって思うので、もう一回見れる人はもう一度見てもらいたいし、まだ見てない人は……せっかく頑張ったので見てもらいたいです!いつも応援ありがとうございます!
インタビュー・レポート:加東岳史

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