ゆず、母校を舞台に青春時代の心象や
情景を描き出したオンラインツアー2
日目

YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN』/「DAY2:思春期 2020.10.4 岡村中学校
毎週日曜日の21時から配信され、会場、テーマ、セットリストをすべて変えながら行われる初のオンラインツアー『YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN』。横浜文化体育館で行われた初日公演「DAY1:出発点」に続く2日目公演「DAY2:思春期」の舞台は、北川悠仁、岩沢厚治が通った岡村中学校だった。今回の公演のキャッチコピーは、「今だから、帰りたい。変わらないFURUSATOに。」。まさに彼らの故郷である“岡中”から届けられたライブは、“思春期”という題名通り、青春時代の思い出——葛藤、悔しさ、そして、未来に対する夢——が色濃く反映され、甘酸っぱい思い出がたっぷりと込められた楽曲が中心となった。
ゆず 撮影=太田好治
21時になると同時に学校のチャイムが鳴り、「DAY2」と書かれた黒板が映し出される。“岡村ジャージ”を着た二人が選んだオープニング曲は、1999年のシングル「友達の唄」。<繰り返す現実につまずいているのなら少しだけ休もうよ>というフレーズを観客に語り掛けるように歌う二人の姿に、いきなり心を掴まれる。AR技術を使った演出(黒板に時計の絵が描かれたり、それが飛び出してきたり)も楽しい。さらに路上ライブ時代から歌っていた「待ちぼうけ」(シングル「友達の唄」収録)が奏でられると、コメント欄には「懐かしい!」「私の青春だ」といった文字が並んだ。
ゆず 撮影=太田好治
岩沢「この教室は我々が3年生のときの教室にほど近いんですよ」
北川「僕が1年生のときの担任、そして、岩沢が2年のときの担任だった髙橋先生が、なんと今の校長先生。岡村中学校、髙橋先生、ありがとうございます!」
というトークの後は、これまでライブであまり歌ってこなかったレア曲が次々と披露された。
「卒業生のゆず、心をこめて歌いたいと思います」(北川)という言葉に導かれたのは、北川がゆず結成後、初めて作った楽曲「種」(シングル「からっぽ」収録/1998年)。路上ライブ時代の定番曲「流れ者」(ライブアルバム『二人参客 2015.8.16~黄色の日~』収録/2015年)では、北川がギターを背負ったまま熱唱。岩沢のブルースハープが奏でるいぶし銀のフレーズも絶品だった。
ゆず 撮影=太田好治
さらに、二人の豊潤なハーモニーとともに、心の奥にある“あなたに逢いたい”という切実な思いが響く「心の音」(アルバム『ゆず一家』収録/1998年)、移り気でワガママだけど、どうしても憎めない“あなた”への感情を綴った「ねこじゃらし」(アルバム「ゆず一家」収録)も。思春期の時期の複雑な気持ちを描いた楽曲に、すっかり大人になった2020年のゆずが新しい命を吹き込むーー時間と場所を超え、“あの頃”の気持ちが生々しく蘇ってくるシーンは、この日の公演の大きな見どころだったと思う。
この後、北川と岩沢は教室を出て、渡り廊下を通って体育館へ移動。岡村中学の70周年の式典に参加し、「栄光の架橋」を生徒と一緒に歌った映像を紹介した後、2000年のシングル「嗚呼、青春の日々」へ。「岡村中学にはたくさんの思い出が詰まってます。そして、たくさんの青春が詰まってます」「みんな元気か!」と呼びかける北川の表情も心に残った。
ゆず
岡村のご当地ソング「岡村ムラムラブギヴギ」(ミニアルバム『ゆずの素』/1997年)をドローンで撮影した映像とともに披露した後、再び教室に戻った二人。「濃」(シングル「歩行者優先/濃」収録/2003年)からライブは後半へ。「ぼくの漫画の主人公」(アルバム『ユズモア』収録 2002年)は、北川の中学時代が強く反映された楽曲だ。ちょっと太めで、スポーツも得意ではなかったという北川。そんな彼が唯一輝けるのは、絵や漫画を描いているときだったーーそんな時期の思いを込めたこの曲では、中学時代の北川をイメージしたARのキャラが登場。<憧れていたヒーローにはなれなかったけど/信じた道をこうして歩いているよ>というフレーズは、思春期を体験したことがあるすべてのオーディエンスの感情を強く揺さぶったはずだ。
ゆず 撮影=太田好治
ここで北川、岩沢が声を合わせて岡村中学校の校歌を歌い上げると、岡中の教員3名が“スペシャルダンサーズ”として登場。「タッタ」(配信シングル/2017年)を一緒に盛り上げる。そして、5公演の共通曲「夏色」(1998年)へ。「それ!それ!それ!それ!」「岡中!岡中!岡中!岡中!」という文字が画面上で踊り、ファン12名が“ピグ”(アバター)として参加。さらに髙橋校長が登場し、「岩沢、北川、ばかやろー!」と愛のある言葉を叫ぶなど、“母校でのオンラインライブ”ならではのステージが繰り広げられた。
ゆず 撮影=太田好治
岩沢がハーモニカで「蛍の光」を演奏するなか、北川がゆっくりと語り始める。学校を使うために尽力してくれた岡村中学校関係者への感謝を伝え、「胸がいっぱいです。中学生のとき、僕と岩沢くんがこんなふうにグループになって、こんなに長く音楽をやるなんて思っていませんでした」「いまはとっても大変な時期ですが、こうやってこの場所でオンラインライブができたことを嬉しく思います」という言葉に対し、オーディエンスは「こちらこそありがとう」「涙が止まらない」「大変だけどがんばる」というコメントを送った。
ゆず 撮影=太田好治
「たくさんの思い出とともに、この曲をお届けたいと思います」という言葉に続いたのは、最後の楽曲「シュビドゥバー」(ミニアルバム『ゆずマン』収録/1998年)。朗らかなメロディ、そして<もう一度だけ聞かせて欲しいみんなの笑い声>という歌詞によるノスタルジックな雰囲気のなか、ライブは終了した。
次回の公演は、2020年10月11日(日)の「DAY3:新天地」。ゆずのキャリアを追体験すると同時に、タイムレスな音楽性を堪能できる『YUZU ONLINE TOUR 2020 AGAIN』、今後の公演にも大いに期待したい。

取材・文=森朋之 撮影=太田好治

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