ブリティッシュファンクの
源流となった
アベレージ・ホワイト・バンドの
傑作『カット・ザ・ケイク』

本作『カット・ザ・ケイク』について

本作『カット・ザ・ケイク』はAWBの3rdアルバムで、スティーブ・フェローニをメンバーに迎えた初の作品となる。収録曲は全部で10曲。まず、3本以上のギターカッティング(ゴーリー、スチュアート、マッキンタイヤー)のファンキーな絡みが素晴らしい冒頭のタイトルトラックだけでアルバムの充実度が分かる。曲の途中でベースとドラムだけになる部分では、ゴーリーとフェローニの絡みがフュージョン的なプレイを見せており、AWBがディスコ向きの音楽をやっているだけでないことがよく分かる。ダンスチャートで13位と「ピック・アップ・ザ・ピーセズ」には及ばなかったが、「カット・ザ・ケイク」こそがAWBの代表曲だと考えている人は多いと思う。ヴォーカルは入っているが添え物で、ジュニア・ウォーカーの「ショットガン」やヴァン・マッコイの「ハッスル」のように、インストのほうがディスコで流行る傾向があっただけに、それを意識したのかもしれない。タワー・オブ・パワーほど緻密な組み立てではないが、それだけに黒人っぽさが際立ったナンバーだと思う。

2曲目の「スクール・ボーイ・クラッシュ」は、ミディアムテンポの泥臭いファンクで、4曲目の「グルーヴィン・ザ・ナイト・アウェイ」はタワー・オブ・パワーを意識したホーンセクションが躍動するアップテンポのナンバー。それ以外はメロディ重視のソウルナンバーで占められ、スチュアートとゴーリーの巧みなボーカルを生かした曲が多い。このあたりは、当時、頭角を表しはじめていたホール&オーツを意識したのかもしれないとも思う。アルバムのベストトラックとしては、タイトル曲を除けばレオン・ウェアの名曲カバー「イフ・アイ・エバー・ルーズ・ジス・ヘヴン」だろうか。

アルバムのプロデュースは、アレサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ&ロバータ・フラック、ホール&オーツ、チャカ・カーン、ノラ・ジョーンズらを手がけたアトランティックの名プロデューサー、アリフ・マーディンが担当している。

本作の後もAWBは大ヒットを連発し、82年までに11枚のオリジナルアルバムをリリース、一旦は解散するものの89年に再結成、今でも断続的に活動している。個人的には、2ndアルバムから76年の2枚組ライヴ盤『パーソン・トゥ・パーソン』までが彼らの最高の時期ではないかと思っている。

TEXT:河崎直人

アルバム『Cut The Cake』1975年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. カット・ザ・ケイク/Cut The Cake
    • 2. スクール・ボーイ・クラッシュ/School Boy Crush
    • 3. イッツ・ア・ミステリー/It's A Mystery
    • 4. グルーヴィン・ザ・ナイト・アウェイ/Groovin' The Night Away
    • 5. イフ・アイ・エヴァー・ルーズ・ディス・ヘヴン/If I Ever Lose This Heaven
    • 6. ホワイ/Why
    • 7. ハイ・フライン・ウーマン/High Flyin' Woman
    • 8. クラウディ/Cloudy
    • 9. ハウ・スウィート・キャン・ユー・ゲット/
    • How Sweet Can You Get?
    • 10. ホエン・ゼイ・ブリング・ダウン・ザ・カーテン/When They Bring Down The Curtain
『Cut The Cake』(’75)/Average White Band

OKMusic編集部

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