特別鼎談 / Jinmenusagi × kiki v
ivi lily × DubbyMaple 停滞した今
年の夏に感じたそれぞれの思い、そし
てコロナ禍での動き――メロウなコラ
ボ作「夏は終わらない」を紐解く特別
鼎談

Jinmenusagikiki vivi lily、そしてDubbyMapleによるコラボ曲「夏は終わらない」が9月にリリースされた。
ヒット作『はやい EP』(2016年)、そして今年3月にリリースした2部構成の新作『EMOTAPE』でも大きな話題を集めたJinmenusagi × DubbyMapleの名コンビ。そしてJinmenusagiとkiki vivi lilyはSweet William「Sky Lady feat. Jinmenusagi Itto & kiki vivi lily」(2016年)で名共演を果たしている。
そんな3者によるコラボ曲「夏は終わらない」は、DubbyMapleの新たな側面が伺えるメロウなトラックに合わせ、タイトル通り夏をテーマにJinmenusagiとkiki vivi lilyが“終わらない夏”を歌い上げるセンチメンタルな1曲だ。
今回は9月に行ったJinmenusagi、kiki vivi lily、DubbyMapleの鼎談の様子をお届け。本楽曲の制作背景から3者の繋がり。そしてコロナ禍における活動など、話題は多岐にわたった。
Interview & Text:Takazumi Hosaka
Assistant:Ai Kumagai
Photo:Official
「音楽は自粛しなくていいかなって」
――今作の制作はどのようにスタートしたのでしょうか。
Jinmenusagi:DubbyMapleからビートをもらって、最初はひとりで作ろうと思っていたんです。ただ、作っているうちに、元々制作プランを練っていたユリカさん(kiki vivi lily)とのコラボ作品に入れようかなと考えるようになり。いざ作ってみたらすごく夏っぽい曲になったので、もうこれは今すぐ出しちゃおうって。ざっくり言うとそういう流れです。
――その夏っぽさは、DubbyMapleさんのビートに引っ張られたというか。
Jinmenusagi:そうですね。このトラックありきで進みました。ただ、彼がこういうビートを作るのは結構珍しいんです。いつもはもっと趣味全開、みたいな感じなんですけど(笑)。
Jinmenusagi
――では、DubbyMapleさんにこのビートはどうやって生まれてきたものなのかをお聞きしたいです。
DubbyMaple:元々ウサギに渡そうと思って作ったビートではなくて、別のラッパーさんに渡す予定だったんです。南の方を拠点にしていて、普段はサグいビートが多い方だったので、「せっかくだから、こういう夏っぽい、トロピカルなビートもいいんじゃない?」って提案したくて作ったんですけど、あまり気に入ってもらえず。宙に浮いてしまったので、ウサギに連絡してみて。
――これまでにない新鮮な作風だということは、ご自身でも自覚的だったと。
DubbyMaple:そうですね。
kiki vivi lily:最初はDubbyMapleさんってわからなかったくらい、すごく新鮮なビートでした。
DubbyMaple:ありがとうございます(笑)。
――kiki vivi lilyさんはJinmenusagiさんからこのビート、この曲へ誘われた時、どのように感じましたか?
kiki vivi lily:ビートを聴いて、すぐに景色やメロディ、曲の全体が浮かび上がってきて。すぐに完成させたいって思いました。ウサギくんのヴァースもすでに乗っている状態で聴いたんですけど、それもめちゃくちゃ良くて。とにかくワクワクしたことを覚えています。
―「夏は終わらない」という曲名、コンセプトもJinmenusagiさんのリリックから?
kiki vivi lily:はい。リリックの中にそのフレーズがあったので、自然と私もそちらに寄っていったというか。個人的にも、そのフレーズはすごくいいな思いました。
Jinmenusagi:今やりとりを遡ってたんですけど、6月末に僕が自分のパートを録音して送って、2週間経たないぐらいでユリカさんがデータ整えて送り返してくれたんです。なので、かなりスピード感はありました。
ビートの雰囲気が夏っぽいということで、サビと自分のヴァースだけ先に進めました。そういえば、出だしの<あのアニメに出てくる電車に乗って行こう>っていうラインは完全に『SLAM DUNK』、つまりは江ノ電なんですけど、ユリカさんも全然気づいていなかったですね。
――私もJinmenusagiさんのTwitterのポストで理解しました。
Jinmenusagi:<明日を変えてみよう>っていうラインが続くんですけど、別に僕自身がポジティブな思考の持ち主なわけじゃなくて<君が好きだと叫びたい/明日を変えてみよう>(BAAD「君が好きだと叫びたい」/アニメ『SLAM DUNK』第1期OPテーマ)からの引用で。僕は明日を変える気とかはないんです。単純にこのビートを聴いていたら湘南の景色が浮かんで(笑)。
――なるほどです。『SLAM DUNK』はJinmenusagiさんの幼い頃の夏休みの記憶などと結びついているのでしょうか。
Jinmenusagi:あ、それも全くないです。
一同:(笑)。
Jinmenusagi:僕、『SLAM DUNK』に限らず、日本のいわゆる王道とされている漫画、一切わからないんです。ただ、最近彼女から日本人としての再教育を受けていて。『ドラゴンボール』と『SLAM DUNK』と『タッチ』を全話観たんです。
kiki vivi lily:めっちゃいいじゃん。
Jinmenusagi:それでこんないい曲やいいアニメがあるんだなぁということを知って。すぐに影響されやすいタチなんで、今回のリリックに書いちゃいました。
kiki vivi lily:私、中学の夏休みに一気読みした覚えがあるから、私の原体験には基づいてる。勝手に(笑)。
Jinmenusagi:思った以上に<明日を変えてみよう>っていうラインを気に入ってもらってるみたいなんですけど、「いや、ごめん。これスラダンだよ」っていう(笑)。
――一方で、kiki vivi lilyさんのリリックはまさしく今年の“失われた夏”についての気持ちが表れているのかなと思いました。
kiki vivi lily:リリック考える時に特別意識していたわけではなくて、それも結構後付けではあるんです。単純に私は夏が大好きで、今回も夏の曲を作ることになった。今はこういう大変な状況で、夏をあまり感じられないかも知れないけど、音楽は自粛しなくていいかなって思ったんです。そういうテーマを元に、自分なりにリリックを書きました。
――続くJinmenusagiさんのヴァースは、夏のとある一夜を描いているように感じます。
Jinmenusagi:僕個人の勝手な偏見で生み出した、悪い友達に感化されて荒んだ生活を送っている、ミレニアル世代の若い女性の日常を描写したつもりです。ECDさんの「ロンリーガール」(ECDのロンリーガール feat. K DUB SHINE)から少し影響を受けていて。ただ、僕はその斜め上から俯瞰して描いたつもりです。「ロンリーガール」で描かれたような物語は今もあるし、全く解決なんてしていない。まぁ、あまりこのヴァースは教育にはよくないですね(笑)。
――以前からJinmenusagiさんは先にフロウを考えて、それからリリックをハメていくとおっしゃっています。今回のフロウで特に意識した部分を挙げるとすると?
Jinmenusagi:意識的にわかりやすいラップにしました。いつもはもっと呪文みたいなラップばかりしているんですけど、今回は敢えていなたさみたいなものを出したいと思って、ハキハキとラップしてますね。みんな、こういうのが好きかな? みたいな。
――なるほど。それがある種のキャッチーさに繋がっているのかもしれませんね。
Jinmenusagi:そうですね。ユリカさんのすごい透き通った歌声っていうのは、聴いている人の耳をがっつり掴むので、僕は対照的にオーバードライブ効かせた声できちんとラップした方が映えるなと思ったので。
――Jinmenusagiさんと付き合いの長いDubbyMapleさんからみて、今回のJinmenusagiさん、そしてkiki vivi lilyさんのラップ、ボーカルはどう感じましたか?
DubbyMaple:最初に言った通り、ビートだけの状態ですでに夏っぽさはあったんですけど、2人の声とリリックが合わさることによって、おれが想像していた夏とは違う夏になったなって思いました。何ていうんだろう、最初はSnoop Doggみたいな、大人の余裕みたいなものを感じさせる夏というか。暖かいところに住んでるギャングのようなイメージだったんですけど、返ってきたのを聴いて、すごい日本っぽい夏だなと。ちょっと頭悪い言い方になっちゃうんですけど、キキビビさんの声にジブリっぽさも感じられて(笑)。
kiki vivi lily:(笑)。
DubbyMaple:おれが思い描いてた夏とは違うけど、「100点で返ってきた!」って感じでした。ウサギのラップに関してはいつも通り、文句なしって感じっすね。
Jinmenusagi:そこは何か言ってくれよ(笑)。
DubbyMaple:いや、本当にいつも通り(笑)。言わなくてもわかっちゃうというか。やっぱり、ウサギはどこへ向けてラップをするかっていうことをすごく考えているから、今回はキキビビさんと一緒に、こういうビートでやっているということも踏まえると、このわかりやすいフロウ、ラップはすごいしっくりくるなと。わかりやすい方が正義とか、逆にダサいとか、そういう話ではなく。
Jinmenusagi:そうだね。確かに今回はわかりやすい。逆に『EMOTAPE』はわかりづらかったかもしれないよね。
Jinmenusagi、kiki vivi lily、DubbyMapleの出会い
――ちなみに、kiki vivi lilyさんとDubbyMapleさんのコラボは今回が初めてですよね。
DubbyMaple:初めてですね。イベントでご一緒する機会とかは何度かあったんですけど、恥ずかしくて声かけれなかったですし(笑)。
kiki vivi lily:(笑)。
――Jinmenusagiさんとkiki vivi lilyさんの最初の出会いについても伺いたいです。コラボ曲でいうと2016年のSweet William「Sky Lady」が最初でしょうか。
Jinmenusagi:はい、最初に曲でご一緒したのは「Sky Lady」ですね。ただ、僕はそれ以前から一方的には知っていて。Ittoっていうアーティストがいまして、彼が2015年に出したアルバム『Music Soul Journey』の収録曲「ありきたりなストーリー」に、ユリカさんがkiki vivi lilyになる前の名義・ゆり花で参加していて。すごくいい曲なんですけど、それを制作途中に聴かせてもらって、「めちゃくちゃいい声のシンガーさんがいるんだな」って認識しました。それから、当時僕がお世話になっていた流通会社の〈ULTRA-VIBE〉さんのパーティでお会いして。
kiki vivi lily:確か周年パーティだよね。
Jinmenusagi:そうそう。そこでIttoが紹介してくれて。たぶん、それが初対面ですね。僕、ガチガチに緊張してましたよね?
kiki vivi lily:すっごい覚えてる(笑)。あの時、Ittoくんもウサギくんもスーツで、バシッとキマってたよね。あと、Ittoくんが「この人は日本で一番ラップが上手い人だよ」ってウサギくんを紹介してくれたことがすごく頭に残ってる。で、挨拶したその日にめちゃめちゃ聴き込んで超大好きになったっていう。
Jinmenusagi:「日本で一番ラップが上手い人だよ」ってすごい恥ずかしいじゃないですか。「ハイパーヨーヨーがめちゃ上手い人だよ」、みたいな(笑)。
kiki vivi lily:でも、確かに言ってたんだよ。あと、「今日はここに来る前、“ナポリタン”っていう言葉をどれだけカッコよく言えるか2人で対決してました」、みたいなことを言ってて(笑)。
Jinmenusagi:おれとIttoくんが?
kiki vivi lily:そう。
一同:(笑)。
kiki vivi lily:実際に言ってみてって頼んだら、本当にカッコよく「ナポリタン」って言ってくれて。「わ! この人すごい人だ!」って思った(笑)。
Jinmenusagi:ナポリタンで?
kiki vivi lily:ナポリタンで落ちました。
Jinmenusagi:この話は僕は1ミリも覚えてないですね(笑)。
――なるほど(笑)。それ以降、Sweet Williamさんの作品での共演もありつつ、DubbyMapleさんと同じくイベントなどでお会いするような関係が続いていたと。
Jinmenusagi:イベントでは頻繁に会っていましたね。ステージに一緒に立つことも多々ありましたし。ただ、こうやって自分の名義の作品で一緒にコラボするっていうのは初めてで。僕自身、もうある程度決まった人、信頼できる人としか作らないっていうのもあって。それこそビートメイカーはDubbyMapleに一番信頼を寄せていますし、自分でビートを手がけることもある。ただ、ユリカさんとはもっと早く作ればよかったなと思いました。
kiki vivi lily
コロナ禍における活動
――改めて、コロナ禍以降の皆さんの動きについてもお聞きしたいです。日本では3月頃から感染拡大が本格化し、外出自粛が声高に叫ばれるようになりました。それ以降の、アーティストとしての活動について教えて下さい。
Jinmenusagi:ワンマンも延期を余儀なくされて、一回「これ、明日死ぬかも」みたいな時期もあったんですけど、国の持続化給付金でなんとか食い繋いだり、年に何回か入ってくる印税などに助けられたりもして。ただ、ライブができなくなって大きい収入源が絶たれたと思ったら、楽曲提供やCM音楽制作のお仕事をもらえるようになって。自分だけの話じゃなく、業界全体としてミュージシャンの需要や動き方が変わってきているのかなとも思いましたね。
ライブに重きをおいていた人たちも音源制作にシフトしていっているし、ライブも配信が当たり前になった。あと、僕は個人的に『天下一ジメサギ私物オークション』っていう企画を行って。MVとかで着ていた私物の服だったり自分の描いた下手くそな絵などをヤフオクで売って。半分は制作費にして、もう半分は社会貢献として九州南部豪雨災害支援に寄付しました。
第一回天下一ジメサギ私物オークションの売り上げから、九州南部豪雨災害支援に寄付させていただきました。
取り急ぎ報告まで。 pic.twitter.com/viymP26AZ5(https://t.co/viymP26AZ5)
— LEEYVNG / JMSG (@Jinmenusagi) July 25, 2020(https://twitter.com/Jinmenusagi/status/1287070026420195328?ref_src=twsrc%5Etfw)
――楽曲提供やCM音楽の制作などは、器用に様々なことをこなせるアーティストさんならでの強みですよね。
Jinmenusagi:僕の場合、声を使ってふざけたりするのが好きなので、それが活きている部分はありますね。あとは最近やってるゲーム配信とかも、微々たるものですけど広告収入もあるので、それも仕事といえば仕事ですし。それも元々インターネット・ラッパー時代から配信というものに慣れていたこともあるし、今回の制作もリモートで行っていますけど、コロナ禍の前から僕とDubbyMapleはリモートが基本だったので、運がいいというか。ライブができないのは困ってるんですけど、それ以外の面では結構支障がなく。基本的にずっと家にいても全く大丈夫な質なので。
――kiki vivi lilyさんはいかがですか?
kiki vivi lily:私もワンマンを始め、出演予定だったイベントが尽く中止になってしまって。もちろん経済的なダメージもありますし、自分が主体的になって動いていた初の企画だったので、精神的にも結構きましたね。今まではイベンターさん、プロモーターさんが組んでくださった形でライブをやることが多かったんですけど、こういう状況になって、もっと色々と考えなければなと思いました。
今は自宅のネット環境や機材をアップデートして、自宅から発信したり家でできることを増やしていっています。ちゃんと自分で動いて、ファンの方に届けなければなと。最近はVlogも始めたり、楽しみながら順応していっているつもりです。楽曲制作に関しては、ウサギくんと一緒で元々リモートに慣れていたので、そこは特に苦労していないですね。
――環境も改めて、自分にできることを見つめ直す期間になっていると。
kiki vivi lily:はい。あと、最近引っ越しもして。ちゃんと防音になってる部屋になったので、ガンガンレコーディングもできますし、スタジオみたいにしていければなと。
――先程、「夏が大好き」とおっしゃっていましたが、外に出れないストレスなどは感じますか?
kiki vivi lily:旅行が大好きなので、そこはやっぱり残念ですよね。ただ、世界中が大変な状況なので、今は受け入れるしかないって考えています。落ち着いたらどこに行こうかな、みたいなことを考えて楽しんだり。あと、私はウクレレが好きで、そういう楽器を弾いたりして、ハワイとかに行った気分に浸っています(笑)。
――アイデアや想像力で乗り切っていると。
Jinmenusagi:あの、何で夏好きなんですか?
kiki vivi lily:Tシャツと短パンで快適に過ごせるじゃん。最高じゃない?
Jinmenusagi:……この眉間のシワを見てください。Tシャツと短パンが苦手なんですよ僕は。
kiki vivi lily:ハハハ(笑)。逆に私は重ね着とかが苦手で。
Jinmenusagi:僕はコーディネートが好きなんで、冬の方がいいですね。夏は暑いし、汗かくし(笑)。
kiki vivi lily:夏終わってほしいんじゃん(笑)。
Jinmenusagi:終わってほしい(笑)。でも、だからこそ、わざとらしいくらいの夏の描写がちょうどよかったのかも。
――なるほどです。おふたりとは活動スタイル、立場が少し変わるかもしれないですが、DubbyMapleさんはどうでしょう?
DubbyMaple:ビートメイカーは元から個人戦みたいな感じだから、あまり関係ないだろと思われがちなんですけど、実は結構影響はあって。確かに元々出不精で、作業も家でしているんですけど、とはいえ、コロナでライブがなくなったり、クラブに遊びに行く機会がなくなると、インプットが極端に減ってしまって。新しいビートを作る際に、単純にアイデアが出てきづらくなった、時間がかかるようになったっていう感じですね。コロナ前は誰かのライブを観たり、DJ聴いたり、誰かと話したりして、自然とインプットしていたんですけど、コロナ以降は自分で積極的にインプットを得るように動かなければいけなくなったので。
DubbyMaple
――こういう状況になってから、ご自身が作るビート、作品に変化は起きたと思いますか?
DubbyMaple:変化しましたね。今言った通り、ビートメイクが100%の個人戦になってしまって、「こういう曲を作ろう」っていうイメージからでなく、「こういう音を使ってみよう」みたいな方向に変わってきて。もっと音の研究みたいな部分に重きを置くようになりました。元々ヒップホップばかりやっていたわけではないんですけど、コロナ以降はヒップホップ以降のジャンルのトラックを作る比率がさらに増えましたね。
――まだまだ予定が立てづらい状況が続いていますが、みなさんの今後の動きを教えて下さい。
Jinmenusagi:現状では『EMOTAPE』の次回作に取り掛かっています。というのも、僕は『EMOTAPE』やそれを携えたワンマンで、DubbyMapleの認知を拡大させたいっていう気持ちが強くて。「はやい」は知っているのにDubbyMapleのことを知らなかったり、バトル・ビートで使われたりしても、DubbyMaple自体のプロップスに繋がってないなって感じていて。そういう状況を変えたかったんです。
Jinmenusagi:でも、いざ作ってみたら「B1TCH, B1TCH!」っていう曲がリリックのせいでラジオでかけられなかったり、YouTubeで年齢制限がかかってしまったり。さらにワンマンや他にも決まっていたDubbyMapleとの遠征も延期、中止になり。凹み、落ち込み、腹立ちましたけど、とりあえず今はできることをやろうと。『EMOTAPE』の続編は延期にしているワンマン前に発表できればいいなと考えています。
Jinmenusagi:単純にライブができないならいっぱい曲を出して、みんなをエンターテインしようと思って。最初にも言った通り、水面下ではユリカさんとのコラボ作も動いていますし、韓国のラッパー・SKOLORとのコラボ作、自分のビートのみで作るソロ・アルバム、合計で4つくらいのプロジェクトが動いています。これって、ライブや遠征があったらスケジュール的に絶対に手が回らなくなるんですよ。ただ、皮肉にも今は家にいる時間が多いので、制作に没頭できている。あと、声優や俳優の仕事ももっと積極的に行っていきたいですね。
――『EMOTAPE』の続編的な作品について、どのような作品になりそうか、少しだけヒントをもらうことはできますか?
DubbyMaple:正直、細かいテーマやコンセプトはいつもウサギに任せていて。おれはいつも通りヤバいビートでヤバい作品を作るっていうことだけ考えています。
Jinmenusagi:主軸になっているのはトラップなんですけど、流石にもうみんな食傷気味だと思うんです。でも、DubbyMapleは元々4つ打ちが根幹にあるので、彼が作るトラップっていうのは少し変わっているというか、いい意味で違和感があるんですよね。それを上手く引き出して、かつ、メロディやリズムの刻み方で既存のトラップと差別化していこうと思っています。あと、トラップと言ってもここ数年のものではなく、Juicy Jが90年代からやってきたような、クラシックなトラップに則りつつ、新しいアプローチを取り入れています。
――なるほど。
Jinmenusagi:ラップやボーカルに関しては、他の人にできないことをやろうという意識が強いです。自分で言うのもなんですが、引き出しは多い方だと思うんです。それぞれの引き出しにどれくらいの物が入っているかはさておき。なので、その引き出しの多さを活かして、他のラッパーには作れない作品にできればなと。今はなるべく同業者の音楽は聴かないようにしていて。あくまで自分しかやらないであろうことを追求しています。
――kiki vivi lilyさんはいかがでしょう。今後の動きについて。
kiki vivi lily:ライブがないっていうこと以外は変わらずですね。制作は色々と進めています。ワンマンは12月に予定しているのですが、状況、情勢を見つつ考えていきたいなと思っています。
――DubbyMapleさんはいかがですか?
DubbyMaple:「夏が終わらない」が完成して、単純に「こういう曲、いいな」って思ったんですよね。自分にとって今までにない作風だったので、もっとこういう路線にも挑戦してみたいなと思いました。あと、女性のアーティストとも一緒に制作したいなとも思っています。個人でいうとDM’s Lvv名義でエクスペリメンタルな音楽性のソロ作品も作っています。あとは〈LOW HIGH WHO?〉からリリースした『SNS (SUPER NATURAL SEQUENCE)』(2014年)をリマスターして、再発しようかなと。
――『SNS (SUPER NATURAL SEQUENCE)』を再発しようと思ったのには何かきっかけが?
DubbyMaple:個人的にあのアルバムにはやり残した感があって。みんなそうだと思うんですけど、過去の作品聴くとやり直したくなるじゃないですか。そんな感じですね。ちょうど制作していた時、色々と忙しい時期で、〆切もカツカツだったんです。あと、ウサギが「このアルバムはヤバい」って言ってくれてて。リマスターの話もウサギが提案してくれて。
――JinmenusagiさんはとてもDubby Mapleさん思いですよね。
DubbyMaple:思われてるなーっていうのは自分でも感じています。売れる前のザコシと、一足先に売れたケンコバのような関係(笑)。ケンコバはずーっとザコシをフックアップしてたんですよ。色々なところで名前を出してくれたり。おれとウサギはまさしくそういう関係ですね。
Jinmenusagi:確かに、アキちゃん(DubbyMaple)はザコシだね(笑)。彼と出会ったのはもう13年くらい前で、元々はラップもしていたんですけど、本当に声もラップもカッコよくて。いわゆる“ニコラップ”という界隈では群を抜いてました。正統派なラップをするし、ビートも作れる。しかも同い年だし。こんな人いるんだ、って。その衝撃が今でもありますね。何だったら今でもアキちゃんの方が僕よりラップ上手いと思っていますし。
DubbyMaple:そんなわけないでしょ(笑)。
Jinmenusagi:いやいや、勝てないよ。
Jinmenusagi x DubbyMaple
――では、Jinmenusagiさんとkiki vivi lilyさんのコラボ作についてもお聞きしたいです。
Jinmenusagi:ユリカさんはとてもヒップホップに理解のあるシンガーだと思っていて、「夏は終わらない」もいわゆる“シンガーっぽい”乗り方にはなってないと思うんです。しっかりグルーヴがあって、バランスよく韻も踏んでいる。一方で、僕も最近は歌にも挑戦しているというのもあって、典型的なラッパーとシンガーっぽい作品にはならないはずです。“ニコラップ”の前、“ネットライム”というものがありまして。その当時から付き合いのある人からもらったビートや、DubbyMapleのビートなどを使えたらいいなと考えています。
――なるほどです。最後に、この「夏は終わらない」をどういう環境、シチュエーションで聴いてもらいたいか、教えてもらえますか?
Jinmenusagi:セックスしながら聴いてもらいたいですね。
DubbyMaple:冷房がめちゃくちゃ効いた部屋で、ひとりで聴いてほしいです。そういう夏もあるよってことは言いたいですね。
Jinmenusagi:今年はそういう夏を過ごした人も多いだろうしね。
kiki vivi lily:私は……ウーファーを積んだスポーツカーで聴いたら最高じゃないかなって思います。
DubbyMaple:じゃあ、クーラー効かせたウーファーのある部屋で、セックスしながら聴いてくださいということで(笑)。
Jinmenusagi:ヤバいね(笑)。
【リリース情報】

Jinmenusagi x kiki vivi lily 『夏は終わらない』

Release Date:2020.09.05 (Sat.)
Tracklist:
1. 夏は終わらない

Spincoaster

『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。

新着