甲本ヒロトと真島昌利が
新バンドに臨んだ想いを、
今『THE HIGH-LOWS』から見出す
歌詞に見る想像の余地
《このまま どこか遠く 連れてってくれないか/君は 君こそは 日曜日よりの使者》《たとえば 世界中が どしゃ降りの雨だろうと/ゲラゲラ 笑える 日曜日よりの使者》《きのうの夜に飲んだ グラスに飛び込んで/浮き輪を浮かべた 日曜日よりの使者》《適当な嘘をついて その場を切り抜けて/誰一人 傷つけない 日曜日よりの使者》(M12「日曜日よりの使者」)。
《世界中が どしゃ降りの雨だろうと/ゲラゲラ 笑える》や《誰一人 傷つけない》などからすると、この“日曜日よりの使者”には悪い印象を抱かない。だが、どんな人なのか具体的なことはまったく分からないし、“使者”とあるから人と想像するけれども、人物を指しているのかどうかは定かではない。だからこそ、これはかなり有名な話だあるが、この“日曜日よりの使者”は松本人志ではないかという都市伝説も生まれ得る。これはこの楽曲が当時放送されていた『ダウンタウンのごっつええ感じ』のエンディングテーマであったことや、松本人志がTHE BLUE HEARTSのファンであったことなどを誰かが一緒くたにしてところから始まったものであるようで、このコラム同様に空想の果てのひとつであろう。まぁ、ヒロトが日曜日に松本人志のテレビ番組を観たことで自死を止めた…というところまで話が広がっているようで、正直言ってそれはどうかとは思うけれども、何かを想像させたり、想起させたり、気分を高揚させたりする──音楽に限らず、それがアートである。“日曜日よりの使者=松本人志”説が広まったことは、↑THE HIGH-LOWS↓が提示したロックがアートの領域に入っていることを、図らずも証明した格好だろう。
TEXT:帆苅智之