(C)2020「相撲道~サムライを継ぐ者たち~」製作委員会

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【インタビュー】映画『相撲道~サム
ライを継ぐ者たち~』武隈親方(元大
関・豪栄道)「自分にとっては、人生
の全てが相撲でした」

 2018年12月から約半年間、境川部屋と高田川部屋(※高は「はしごだか」)の稽古場にカメラが密着。力士たちの本場所での熱い闘いの姿を迫力のある映像と音声で捉え、歴史、文化、競技といった、さまざまな角度から相撲の魅力を伝えるドキュメンタリー映画『相撲道~サムライを継ぐ者たち~』が10月30日から公開される。境川部屋所属の武隈親方(元大関・豪栄道)に、映画の見どころや、相撲に対する思いなどを聞いた。
-最初にこの映画の企画を聞いたときは、どんな気持ちでしたか。
 正直なところ、密着取材をされるのはあまり得意ではないので、どうなるのかなというのはありました。でもこうしていろんな人に相撲の魅力が伝わるのであれば、出演できてよかったなと思います。
-普段はあまりないような、密着取材を受けた感想は?
 うっとうしかったなあ。それはうそですけど(笑)。ありがたかったです。この映画をきっかけにして、相撲を始めましたとか、相撲に興味を持ってくれる子どもたちが増えてくれたら、本当にうれしいことだなと思います。
-ずっとカメラに追われているというのは、どんな感じでしたか。
 それほど気にはならなかったです。普段とあまり変わらない感じでした。
-撮影時と完成した映画とで、イメージが違ったところはありましたか。
 稽古場で撮られていたときはあまりカメラは意識しませんでしたが、映画を見たら自分が映っているところ以外は(笑)、素晴らしい仕上がりになっていたのでよかったです。
-取材中も、けがや調子の悪いときがあったと思いますが、「もう取材はやめてくれ」と思うようなときもあったのでしょうか。
 そのあたりはスタッフの方々がとても配慮してくれていたので、嫌に感じることはありませんでした。ただ、撮られているときはあまり成績がよくなかったので、「もっと成績がよかったら、映画も盛り上がったのに…」とは思いました。
-では、完成した映画を見た感想は?
 これまで、力士の生活も含めて、大相撲に密着した映画や映像はあまりなかったと思います。その意味では大相撲の全てが見られると思うので、そこを見てほしいです。大相撲の魅力がたっぷりと詰まった素晴らしい映画だと思います。
-この映画を通じて、相撲が幅広く発信されることについてはどう思いますか。
 相撲に興味がない人もたくさんいると思うので、この映画をきっかけにして、相撲に興味を持ってもらって、本場所を見にきましたという人が増えてくれたらうれしいですね。
-引退して、相撲に関する見方や考え方は変わりましたか。
 すごく変わりました。現役時代は自分のことだけで精いっぱいでしたが、辞めてからはいろんな角度から相撲が見られるので、例えば「あー、この相手は今こういう精神状態なんだ」「だったら、こういうふうに攻めたら嫌がるだろうなあ」と分かったりもします。
-稽古のシーンが迫力満点でした。親方が稽古で重視していたことは何ですか。
 場所前は実戦の稽古が重要になるので、そこに重点を置いていました。特に、立ち合いの踏み込みや角度などを意識しながら、申し合いなどをやっていました。相撲は四股が基本ですが、自分の場合は、調子がいいときはすり足の感覚がよく、スムーズにいくかどうかが、調子を測るバロメーターになっていました。
-師匠の境川親方(元小結・両国)の指導についてどう思いますか。
 稽古は厳しく、あとは大らかに見てくれるので、そういうオンとオフの切り替えがいいところだと思います。
-親方の目標はやはり師匠なのでしょうか。
 それは少し違います。もちろん、参考にさせてもらうところはたくさんありますが、師匠と同じにはなれないし、自分にしかできないこともあると考えています。師匠に教えていただいたことをきちんと引き継ぎながらも、自分らしくやっていきたいと思います。
-手本にしたり、影響を受けたりした力士はいましたか。
 入門したときに横綱の朝青龍関がいて、身長も体重も自分とそれほど変わらないのに圧倒的に強かったので、とても影響を受けて「ああいうふうに相撲が取りたいな」と思いました。
-若手の親方同士で話すことはありますか。
 「こういうふうにしたら、もっと強くなれるんじゃないか」とか、指導論などを話すことはあります。現役時代から仲がよかった音羽山親方(元前頭・天鎧鵬)、佐ノ山親方(元前頭・里山)、井筒親方(元関脇・豊ノ島)たちとは結構話をします。
-具体的には?
 力士は体が資本なので、もっとコンディションに気を使うこと。最近は体の土台がしっかりしていない若い子が多いので、もっと筋力をつけるように鍛えていけば相撲の取り口も変わって、楽に勝てるようになるし、厳しい稽古にも耐えられるようになるので、まずそこを大事にした方がいいと思います。
-では、今、親方が注目している力士はいますか。
 幕下の納谷ですね。同期生に豊昇龍や琴勝峰がいて、彼らはもう幕内で活躍していますが、素質的には納谷も遜色がないので、彼が十両に上がったら、一気に活躍していくと思うので、注目しています。
-映画の中で、「力士は超人であり、サムライである」と表現されていましたが、このことについてどう感じますか。
 力士からすれば、見てくれた人がそう思ってくれたらすごく喜ばしいです。「武士は食わねど高楊枝」という言葉がありますが、つらいときでも、そういうしぐさは見せずに、堂々と構えているのがサムライ。そういう点では力士ともつながるところがあると思います。まあ、実際にサムライに会ったことはないので分かりませんが…(笑)。
-親方にとって、ずばり相撲とはどういうものですか。
 自分の中でずっと生活とともにあったので、人生の全てが相撲でした。相撲がない人生は考えられないです。裸一つで男同士の意地と意地とがぶつかり合うのが、相撲の醍醐味(だいごみ)だと思います。
-映画を見て、心に残ったシーンや、特に印象的だったシーンはありますか。
 最初から最後まで全てです。まばたきせずに見てください(笑)。この映画では本場所の取組だけでなく、日頃の稽古や若い子がちゃんこの用意をする場面など、他の競技ではなかなか見られないものが見られます。「これが修行だ」と感じる部分もたくさんあり、そうした中からみんなが育って、一人前になっていく過程も見られるので、そこに注目してほしいです。
(取材・文/田中雄二)

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