INTERVIEW / Kroi 「ライブができな
くても充実してた」――Kroiが新曲『
HORN』を通して語る、新型ウイルス禍
の楽曲制作

ファンク、ソウルなどのブラック・ミュージックに括られるようなジャンルの音楽を中心に、ブルーズ、メタルからブギウギまで幅広いジャンルに通じる生粋の音楽好きたちが揃ったロック・バンド、Kroi(クロイ)。
Spincoasterでは2020年2月に取材を行い、彼らの音楽性やバックグラウンドなどを深堀りして、名刺代わりになる詳細なプロフィールを網羅的に紹介した。これから快進撃というタイミングでのインタビューだったが、取材直後に新型ウイルス禍が本格化。思うようにライブが行えない時期が続き、動向が気になる中、新曲「HORN」のリリースの報が届いた。今回の取材はそれに伴っての2度目のインタビューになる。
彼らは今どのように日々を過ごしているのか、そして今後の企みについて、話を訊いた。
Interview & Text by ヒラギノ游ゴ(https://twitter.com/1001second)
Assistant: Daisuke Akai(https://twitter.com/daaaisuuukeee)
Photo by Official
新型ウイルス禍の生活、意外と充実していた
――新型ウイルス禍が本格化してから、思うように活動できない期間が続いていると思うんですが、どう過ごしてきましたか?
内田:いや? 結構……
関:有意義な時間だったよね。
――あら。
関:やっぱり元々めちゃくちゃライブやってたバンドなんで、活動の形態はだいぶ変わりましたけどね。前から意識してきた“コンテンツを出し続ける”っていうことは止めなかったです。
内田:僕らは世の中がこうなって割とすぐ”今だからできること”を考えるのに頭がいったんですよね。
関:そしたらやりたいことも出てきたんですよね。
――ライブの代わりにがっつり楽曲制作、というミュージシャンは多いですが、そういう感じで?
関:それよりもグッズを出すとか、YouTubeに動画をどんどん出したり、SNSをどういうふうにやっていこうか改めて話しあったり。「こういうのおもしろいんじゃない?」って企画出しして。例えば、インスタで使えるフィルターを出したんですよ。
――『Fire Brain』のMVの、頭が燃えるエフェクトを再現したやつですね。これはMVのスタッフが制作されたんですか?
千葉:いや、アンディ(マネージャーの安藤勇作)だよね。
アンディ:はい。MVの炎のCGを手がけてくれた方に、そのエフェクト・データだけもらって、僕が組んでいきました。それまで全くやったことなかったんですけどね。
――フィルターってそんな感じでできるもんですか?(笑)
アンディ:やってみたらできました(笑)。
千葉:3〜4月はEP制作に時間を割いて、5月くらいからYouTubeを活発に動かす方向にシフトしていって、1週間に1回はライブ映像を公開するって決めてやってた感じだよね。
長谷部:僕個人で言うと、3月末に仕事を辞めて引っ越しまして。今千葉とアンディと一緒に住んでるんですけど、新生活に入る前後で世の中がこういう風になって。それまでの生活だとなかなかライブ以外でがっつりギターに触れる時間が作れなかったのもあって、めちゃくちゃギター弾いてました。
内田:あとあれだ、インスタライブしてたわおれら。
関:そうだそうだ、毎週「1人でどうにか1時間持たせる」っていうテーマでやってたんですよ。
――メンバー全員で出ずに。
内田:それよりはメンバー同士勝負する感じだったよね。あれはおもしろかった。
関:それぞれ結構アプローチが違ってて。怜央とバーチーなんかかなり作り込んでたよね。
内田:そうそう、おれは仕込んでいかないと怖くて怖くて(笑)。
関:バーチーは特にゴリッゴリで、モニターにパワポ映してコーナーみたいなのやりはじめて。
――千葉さんはお父さん(テレビ・ディレクター)の影響もあるんでしょうか。
千葉:あるかもしれないです。やるならしっかり作り込みたいんですよね。
――他の人は割とフリー・トークだったんですか?
関:ですね。益田に関しては結構視聴者からイジられてたよね。モノマネやってくださいとか。
益田:おれの視聴者はヒドいんだよ!(笑) 何の脈絡もなく変なリクエストがきまくって。
――早くも「こいつはイジっていいやつだ」というのがファンにバレ始めてるんですね。
関:そうですね、バンド内でもそうなんで。
内田:インスタライブは本当にやってよかったよね。あれでそれぞれのパーソナリティみたいな部分を見せられたところはかなりあると思う。
――なるほど、本当に前からおっしゃっていた“コンテンツを出し続ける”ということをがっつりやっていたんですね。
内田:逆に音源は全然できなかったんですよね。
――あ、そうなんですか。
内田:最初はこの期間中にめちゃめちゃ作ってやろうって思ったんですけど、全然出てこなかったんですよ(笑)。やっぱ外出てないとインプットがなくて何も出てこねえんだなってことを再認識しましたね。逆におもしろい体験でした。みんなで集まれるようになった途端にバーッてまた書けるようになったもんね。
カッティング主体のファンク――新曲「HORN」について
――今回の新曲「HORN」の制作に入っていったのはいつ頃でしょうか?
内田:外出自粛が大分緩和されてきた7月からですね。3ヶ月ぶりにみんなに会いました。でも、どう? 会ってない感じした?
関:そうなんだよね、ミーティングはリモートで頻繁にやってたんで、そんなに久しぶりって感じじゃなかったな。ミーティングが終わった後もそのまま駄弁ってたりしてたし。
内田:夜中の3時4時とかまで繋いでたよね。おれと千葉さんで夜の11時から翌朝の7時ぐらいまで延々音楽の話したこともあったし。
千葉:結構熱い話したよね。
――そのときはどんな話を?
千葉:覚えてるのはミックスですね。僕はメンバーに入る前からミックスでこのバンドに関わってるので、普段からメンバーの音の好みややりたいことを聞いておきたくて、怜央ともそういう話をしてました。そういう普段の会話が制作に活きてくる部分は結構あるかも。
内田:ミックスまでメンバーが主体的にやっていくってのが、これからバンドに求められてくるんじゃないのかなって思ってるんですよ。
千葉:最終的に聴かせる音ってそこで決まるからね。バンドがそこのクオリティ・チェックをできるってすごくいいことだと思う。
関:例えば「音を硬めにしてください」って言ってもその「硬い」のニュアンスって人によって違うから、すり合わせに苦労するみたいなことがあると思うんですよ。でも、バーチーと日々会話の中でその辺のニュアンスが共有できてるから、パッて言えば思った通りのものが返ってくるっていうのが本当に頼もしいんですよね。そういった点では、うちはめちゃくちゃ強いなって思います。
――では続いて「HORN」について。これまでにあったようなエネルギーをぶちまけるようなものではなく、静かな、それでいてスピード感のあるファンクといった印象を受けたのですが、この曲はどのような経緯で生まれたんでしょう。
内田:BPMが速い曲をあんまりやってこなかったねってのがまずあって、カッティング主体のファンクをやろうってことになりました。これまでのうちの曲って、結構遅めなんですよね。BPM低くてガツンといくような曲が多かったので、そろそろこういうのもやっておきたくなったのかな。でも、正直そんなに意識はしてないんですよ。
関:スピード感があるので、さらにそこに今までみたいなガツガツしたものを乗せると思ったようなものにならなくて、バランスを取って抑えめにした感じかな。
長谷部:ギターのフレーズで今回意識したのは、あまり今までやってこなかったブリッジ・ミュート主体のフレーズを入れてること。いつもみたいな派手なカッティングっていうよりは、抑えめなファンクっぽいカッティングになってると思います。
関:あとこの曲、ギター・ソロがないんですよ。その点でも新しい聴き心地かもしれないですね。
――そうなんですよね。1サビ終わり、1:40辺りでギターが思わせぶりなところあるじゃないですか? そのままソロに入ると思いきや、やらないんだ、という意外性があったのですが、あれは意図して?
関:ですね。あそこで一瞬気になるフレーズが入るからおもろいんじゃないかって考えてやりました。
内田:あのフレーズの後のセクションは一度全体を作ってから付け足した部分なんですよ。その付け足し感をあえて出しちゃおうかみたいな経緯であのフレーズが入ってます。
――そういう経緯なんですね。気になって耳に残る箇所だと思います。
内田:そのまんま走っていかないっていうか、何か障害物があった方がおもしろいんじゃないかって。
――ドラマーとしてはどんなふうに感じてますか?
益田:いつもよりBPMが高くて難しかった。
内田:……それだけ?(笑)
益田:それしか言えない。この前別のインタビューで受け答えが上手くいかなくて、関にめちゃくちゃ怒られたから。
一同:(笑)。
関:怒ってはないよ。
内田:でも、これまでの曲もけっこうライブではBPM上げてたりするんで、いい感じに既存の曲とも同居してくれると思います。おれら、BPMだけじゃなくコード進行もフレーズもガンガン変えてやってたりするんで。
求めるのは「カルチャーのクロスオーバー」
――では、今後の予定について伺います。
関:長い目で見たアプローチを考えてる感じですね。まだまだ当分ライブは万全の状態でできそうもないので、ライブ再開までの長い時間お客さんを飽きさせないように、2月以降やってきたようにとにかくコンテンツを出し続ける。あと、結構大事にしてるのが、焦らさず一定のペースで出し続けるってこと。待つストレスを与えたくないので。
内田:これまではめっちゃハイペースでライブをやってたんで、ライブができない今は制作でがっつり動いてないと、もう本当に気持ち悪くなってきちゃうんですよね。
関:他の仕事しながら月10〜15本とかとかやってたもんね。
――内田さんと関さんは、モデルや役者としての露出もちらほらありますよね。そういう動きも継続していく?
関:そうですね。音楽とそれ以外のカルチャーのクロスオーバーみたいなところはおれらが元々やりたいことだったので、そういうのもやっていきたいです。
内田:アパレルの店員さんと話すと「あんまり音楽聴かないんですよね」っていう人が結構いて。ファッションと音楽ってかなり深く結びついているものだし、全部まとめて楽しめばよりおもしろいのになって思うことはあるんですよね。
――音源についてはどうでしょう?
関:音源もどんどん出していくつもりです。
内田:この期間で収穫だったのは、リモートで話し合う習慣がついたことだと思っていて。本当に可能性が広がったっていうか。「ちょっとみんな今空いてる?」みたいな感じで集まって「今こういうのができたんだけど……」って意見を求めるってことをやるようになってから、かなりいい感じで曲作りが進むようになってきたんですよね。
関:これまでは玲央が作ってくれたデモを聴いてそれぞれ練習してきてスタジオで合わせるって感じだったんですけど、最近はデモづくりの段階からみんなで一緒に「こういうリファレンスどう?」ってYouTubeを聴いたりしながら進めてます。
内田:かなり相談しやすくなったんで、このフローは大事にしていきたいですね。
関:そんな感じで制作を進めて、来年にでも集大成としてアルバムを出せたらいいなって思ってます。
【リリース情報】

Kroi 『HORN』

Release Date:2020.10.16 (Fri.)
Label:Kroi
Tracklist:
1. HORN
【配信情報】

Kroi Streaming Live 『BOX』

日時:2020年11月4日(水) 23:15〜
配信:LINE LIVE
出演:
Kroi
■ Kroi オフィシャル・サイト(https://kroi.net)

Spincoaster

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