竹下幸之介インタビュー DDT 11・3大
田区で秋山準と一騎打ち! 「この試
合は本当の意味でのメジャーvsインデ
ィー」

デビュー以来、全日本やNOAHなど王道プロレスを貫いてきた秋山準が、全日本からDDTにまさかのレンタル移籍。これは今年のプロレス界において最大級のニュースだった。
秋山が目をつけたのは竹下幸之介。団体最高峰のKO-D無差別級王座の最多防衛記録を保持し、このベルトを4度にわたり巻いてきたDDTのエースである。竹下は秋山とのシングルを熱望し、ここまで何度も前哨戦を繰り広げてきた。ここ数ヵ月間は対戦を通じ秋山から学んできたという竹下だが、初の一騎打ちでは秋山がまったく異なる顔でくると予想する。果たして竹下は、どんな思いで秋山と闘うつもりなのか、話を聞いてみた。
<セミファイナル スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負>
秋山準 vs 竹下幸之介
――DDTに秋山準選手がレンタル移籍という形でやってくるということを聞いて、まずなにを思いましたか。
「ボクが秋山さんと初めて闘ったのは、2016年6月15日の全日本プロレスさんの後楽園ホールでのタッグマッチだったんですけども、そのとき、デビューしてからいままでにないくらいの影響を受けました。そのときはすでに団体トップのKO-D無差別級王座のベルトを巻いていたので、両国国技館のリングにも立っているし、いま思うと、自分自身がもうすでにわかっているかのような気になっていたんですよね。でも、自分がわかっていた気になっていたプロレスって、ホントにこれっぽっちな(小さな)もので、実際は宇宙くらいにデカいものなんだと。こんなに大きなモノなんだぞ、ということを10分足らずのタッグマッチだったんですが、その一試合で教えてもらったんですよね。それをボク、すぐに高木(三四郎)さんに言いまして、秋山さんともっと闘いたいですと。そのときは『ああ~』『おお~』みたいな(曖昧な)返事で。その1ヵ月後くらいに全日本さんの後楽園大会でタッグを組ませていただいたときも、また高木さんに(DDTで)タッグを組みたいんですとも言って、そのときも『ああ~』みたいな返事で(笑)。おそらくなんですけども、今回、秋山さんをレンタル移籍という形で呼ぶことになったときも、ボクのそのときの話がアタマの片隅にあったみたいなんですね。なので、ボクとしてはレンタル移籍となったときに、あの秋山さんが(くるからうれしい)というよりかは、やっときたかと。4年越しでやっときたか、という感じでした」
――レンタル移籍ながらも所属となるということで、闘いたい、タッグを組みたい、どちらの感情が先に出ましたか。
「やっぱり闘いたいと思いましたね。正直、11・3でのシングルマッチを控えて言うのもなんですけど、組みたいという気持ちももちろんあります。でも、闘って知りたいなと。たとえばボクらくらい、10年弱のキャリアのレスラーとレジェンドと言われる30年くらいのキャリアも実績もある人って、だいたいワンマッチ限りで終わることが多いじゃないですか」
――たいていの場合、そうですね。
「現在のように前哨戦が何試合も組まれて毎週闘えるという機会ってそうそうはないと思うので、ここはやっぱり闘って学べるもの、秋山さんの28年間のプロレスの歴史、学んできたものをこの数カ月で凝縮して学んでやろうという気持ちで試合に挑んでいます」
――秋山選手は92年デビュー。竹下選手が生まれる前からプロレスをしている選手ですからね。
「そうなんですよね。ボクが1995年生まれですから、ボクが生まれるよりももっと前からリングに上がっていますからね」
――参戦してくるにあたり、今後何度も対戦していくことになると感じたと思うのですが。
「そうですね。ホントに対戦といっても結局はレンタル移籍なので、いつまでDDTに上がってくださるのか正直わからないです。(期限が)いつまでと言ってるわけでもない。ボク、プロレスってホントに儚いものだと思ってるんですね」
――儚い?
「ええ。あの時もっとこうしておけばよかったなとか、ボクがプロレスファンのときもそうでしたけど、あの試合を生で見にいっておけばよかったなとか、そういうのも多いので、ホントにプロレスって儚いものだと思うんです。なので、悔いを残さないようにという気持ちがあります。でも、まさか大田区(のような大会場)でシングルマッチができるまでになるとは思ってなかったです。タッグマッチでもどんな小さな会場であったとしても学んでやろうとの気持ちでいました。なので、ビッグマッチのシングルでの秋山準も知れるんだというのは、これはまた楽しみですね」
――これまでのタッグで対戦してきた秋山選手とは違う秋山選手と闘うつもりでいると。
「絶対に違うと思います。もちろん、ビッグマッチというのもそうですけど、タッグとシングルって違うので。シングルでの秋山準を味わいたいですね」
――秋山選手って試合形式やシチュエーションによって闘い方をガラリと変えてくるところがありますよね。
「そうですよね。ボクも秋山さんのそういうところに惹かれたので、それを知りたい、もっと知りたいなという気持ちです」
――シングルが決まる前、DDTで初めて対戦した段階で「(竹下は)DDTのなんなんだ?」という問いかけがありましたよね。
「自分が本来しっかりと明確にしとかないといけない部分。そこを一試合で突いてきたなという感じでした」
――いきなり核心を突かれたと。
「ハイ。ボクもそこの答えを出すことが足りていないとわかっていて、ここまでボヤッとさせたままできていたんですよ。それをハッキリさせないといけない。ボクって、エースとかというのは自分で言ってなるというよりは、見ている人が判断するものだと思っているんですよね。自分が言ってこうなりたいんだという部分は正直、秋山さんが全日本さん、NOAHさんでやられてきたように、強さの象徴ですよね。対抗戦とかになったときに『竹下がいれば大丈夫だ』みたいな。秋山さんにはその安心感があって、心の中でカッコいいなって思ってたんですね。たとえばZERO-ONE旗揚げ戦の両国とか。あれは子どもながらに見ていて、秋山さんってカッコいいなって思ったんですよね。自分があこがれたようなレスラーになりたいというのは、プロレスラーならみんなそう思うと思うし、ボクもそうなりたい。その意味で強さの象徴になりたいと言ったんです」
――秋山選手に対して、「ライバルになってください」とも呼びかけました。ライバルということは、しのぎを削る、切磋琢磨することにつながると思います。秋山選手と同じレベルのところまでいきたいということですか。
「そうですね。プロレス界もキャリアとか年齢とかいろんなものが上下として関わってくる。リスペクトをもって闘うのももちろんなんですけども、せっかくシングルマッチをするならば、そういうのを通り越した闘いにしたいなと思います。ボク自身、ちょっとライバル不足なので、秋山さんくらい強かったらライバルになってくれるんじゃないかと」
――(竹下の)ALL OUTvs(秋山の)準烈というユニット闘争の構図もありますが、11・3大田区の試合に関しては、個人の闘いになりますか。
「そうですね。ここにきたらもうそうですね。前哨戦はユニット間で、それぞれのユニットで彰人さんだったり、大石(真翔)さんだったり、若手同士の闘いもあったんですけど、今回はシングルなので、ALL OUTだけじゃなく、しっかりとDDTを背負って闘うつもりでいます」
――秋山選手に言わせると、竹下選手が上回っているのは「若さだけ」だと。それを聞いていかがですか。
「そこには物理的な年齢だけじゃなくて、いろんな意味があると思うんですね。若さって、ボク、強いんじゃないかなって思うんです。自分自身、フィジカルとかいろんな部分で上回っている自信はありますけど、若さを一番にぶつけた上で勝ちたいですよね。ただ、プロレスの歴史を遡ると、若さをぶつけた場合、だいたい負けるんですけど」
――確かに、若さでいったら玉砕しますね。
「ハイ。その若さをぶつけた上で勝ちたいんですよね。ボクらゆとり世代にはあまりそういうのは通じないので、ゆとり世代の怖さをちょっとぶつけようかなと(笑)」
――DDTで闘っているなかで、プロレスの幅という意味では秋山選手を上回っているという意識はありますか。対女子、たとえば青木真也選手との対格闘技、ヨシヒコとか。
「あります! そこは絶対に上回っているので。だからボクは今回、あえてちょっとタブーとされているメジャー対インディーというのを投げかけているんです。というのは、ボクは秋山さんからこの数カ月で学んだものをぶつけても絶対に勝てない。だったら、子どもの頃から見ていて好きになって入ったDDTで、この8年間、いま9年目なんですけども、DDTでやってきたものをぶつけます。この一試合に関しては学ぶというよりかは、それをぶつけます」
――秋山選手から学んではいるけれども、それ以前にDDTで経験してきたものを。
「ハイ、それをぶつけて、勝ちます」
――なにが出てくるのか、楽しみですね。
「そうですね。DDTのプロレスというのは女子とも闘うし、ヨシヒコとも闘うし、男色ディーノとも熱戦を繰り広げるわけですから。そこからボクが培ってきたものをぶつけます」
――10・25後楽園、最後の前哨戦では新しい技、変型のジャーマンも出しましたよね。これはエンタメプロレスではなく、本道のプロレスにおいての竹下選手のアイデアのようでした。秋山戦ではさまざまなプロレスをミックスしていくということですか。
「そうですね。ボクも人がやってきてないことをやる位置まできたのかなとも思うんですよね。秋山さんと闘うたびにエクスプロイダーを食らっていると、エクスプロイダーが作ってきたもの、エクスプロイダーで作ってきた秋山さんの時代というものをひしひしと感じるわけです。だったらボクも竹下といったらこれというものを身につけたいなと思って。一応、秋山さんと闘うようになってからは、その対戦相手にかかわらず毎試合なにか新しい技をもっていくようにしています。動きだったり、技だったり。毎試合、なにか試しています」
――それが成功するか、結果として残るかは別にして、なにかしら試しているわけですね。
「ハイ。そういうチャレンジをここ3ヵ月くらいしています」
――何度も前哨戦をしてきたなかで、秋山選手が竹下選手から直接フォールを奪うことはありました。が、竹下選手が秋山選手からフォールを奪うことは一度もない状態で11・3大田区を迎えることとなります。
「気にはならないですけど、ボクの手の内は見せきらないくらいの方がシングルの勝率は上がると踏んでいるので。でも10・25後楽園ではボクが投げっぱなしですけど初めてジャーマンを秋山さんに出したので、それをどう感じたのかなというのはありますね」
――10月26日の会見では、「次のシングルでは勝たないといけない」とコメントしていましたが、やはりこの試合は竹下選手にとって大きなターニングポイントになりそうですね。
「間違いなくなると思います。ホントに因縁もなければ、レンタル移籍してもらっている以上、外敵っていう感じでもないんですけど、やっぱりいざ大田区のリングでボクと秋山さんが並ぶと絶対にメジャーvsインディーを意識せざるを得ないと思うんですよ、見てる人も。そういうふうに見えると思うんですよね。だから、そこでやっぱりボクが負けると、『あ~あ』ってなっちゃうと思うので、ボクはそういうのも全部超越した存在になりたいと思ってます。DDTをそういう団体にしたいですし。なので、試合(内容)でも勝って結果でも勝つという、これが最低条件です」
――大会のセミファイナルに組まれましたが、試合後、どんな光景が広がっているかが楽しみです。
「そうですね。ボクはメインイベントが好きなのでセミファイナルで悔しい気持ちもあるんですけど、正直、秋山さんとボクの試合だったら、お客さんはこれでもうおなかいっぱいになってるかもしれないですね(笑)。ボクらがメインディッシュだとしたらデザートを食べられないくらいに腹一杯にさせたいです。秋山さんも会見でおっしゃってましたけど、ボクも常にその興行の一番を目指すというのを心がけてますので、そういうつもりで。コロナ禍ではありますけども、お客さんが声を上げてしまうような、出してはいけないんですけども出してしまうような熱い試合をしたいと思います」
――因縁こそありませんが、これほどドラマティックなカードもなかなかないのではと思います。
「そうですね。ホントにこれはボクの勝手な見方ですけど、ボクと秋山さんは非常に似ていると思うんですね。プロレスの考え方もそうなんですけども、もっと似てる部分が境遇なんですね。秋山さんは(ジャイアント)馬場さんからアマレスで直々にスカウトされてエリートとしてプロレス界に入ってきて後楽園で小橋(建太)さん相手に破格のデビュー戦をした。そこからエリートとして扱われて、四天王のなかに入れられてと。本人はそんなに準備もできていないのにどんどんそういう状況に置かれていったというか。聞いたことないのでわからないですけど、いろいろといい思いをしたかもしれないですけど、基本的にはしんどい思いも多かったと思います。ボクもそうで、プロレスが好きでプロレスラーになりたかっただけなのに、高校生でデビューすることになって、エル・ジェネリコを相手に日本武道館デビュー。そして最年少でベルトを取った。ボクは強くなりたくてやってて、やった結果そうなったことでエリートと言われる。エリートじゃないんだけどなと思いながらも、プロレス好きでプロレスバカで頑張ってきただけなのにエリートというまとめられ方する。そういう見られ方をするのが非常にもどかしかったんですよね。そういう部分で秋山さんの歴史を追っていると、自分に似ているなと感じますね。エリートvsエリート。そのなかでのメジャー出身のエリートとインディー出身のエリートという意味では、本当の意味でのメジャーvsインディーなんじゃないかなと思いますね」
――似ているけれども出所が真逆。これがプロレスのおもしろいところでもありますよね。
「ええ。そこを見てほしいですし、そこにプロレスファンの人たちが熱くなってほしいです」
11・3大田区における秋山準vs竹下幸之介のシングルマッチは、2020年のプロレス界で最注目の一戦と考えていいだろう。果たしてどんな結末が待っているのか。絶対に見逃せない闘いだ!
(聞き手:新井宏)

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