ダミアン浜田陛下に操られてメジャー
デビュー! “改臟人間”の素顔を見
た!〜金属恵比須 独占インタビュー
[第2回]

プログレッシブ・ロック・バンドの金属恵比須が2020年11月25日に新作『黒い福音』を発表した。同時期に発売の、聖飢魔IIの創始者、地獄の大魔王・ダミアン浜田陛下のソロプロジェクトDamian Hamada’ s Creatures (D.H.C.)の『旧約魔界聖書 第I章』、『旧約魔界聖書 第II章』にも全面参加し、注目が高まる彼ら5人(稲益宏美 栗谷秀貴 後藤マスヒロ 髙木大地 宮嶋健一)へのインタビュー第2回目をお届けする。
(左から)宮嶋健一 後藤マスヒロ 稲益宏美 栗谷秀貴

――『黒い福音』の選曲のポイントは?
高木 スタジオ盤の3曲は元々フルアルバムとして発表しようと思っていたので決まっていました。4曲目以降のライヴの方は、僕が骨格のセットリストを出した後、あとの細かい曲決めや配置は宮嶋と稲益の二人に任せました。
宮嶋 「ちょっとマニアック過ぎじゃない?」とか「即興部分の曲調が似た感じになりすぎるかも?」とか、色々話し合いましたよね。それで定番曲も入れたり、どうバージョンを変えていくかとかについては話し合ったり自分で考えたりして。それからスタジオ録音の部分(1曲目〜3曲目)は、昨年2019年に録音しておいたものですが、発表の形はまったく考えていないものでした。
――それでは一曲ずつエピソードを教えていただけますか? 「安土御殿の想い出」。
栗谷 「ルシファー・ストーン」の前奏曲という位置づけなので、リフや歌の旋律を変奏した曲にしようということは決めていたんでけど、なかなか完成形がイメージできずに悩んでいました。そしたら突然高木から「曲名は『安土御殿の想い出』に決まったからよろしく!」といわれました。クラシックギターの名曲に「アルハンブラ宮殿の想い出」という曲がありまして、それをオマージュしろという意味です。
――無理難題を(笑)。
栗谷 いきなり無茶振りしやがるな、とか最初は思っていたんですけど(笑)、結局これが完成形のイメージを導いてくれましたね。「アルハンブラ宮殿の想い出」で用いられるトレモロ奏法(※同じ弦を連続で弾く奏法)を取り入れて演奏しました。
――「ルシファー・ストーン」は2019年にYoutube「角川書店ブックチャンネル」で公開されていましたね。作家・伊東潤さんとのコラボとして。
マスヒロ 今回発表になったバージョンはそれとは違う演奏ですね。その時2バージョン録音していて、もうひとつのバージョンが収録されています。この曲はヘヴィ・メタルの様式美に寄せてみようと自分の中でコンセプトを設定し、自分でも恥ずかしいぐらい様式美に則ってみました。
「ルシファー・ストーン」伊東潤著『家康謀殺』のタイアップで発表。動画最後の「KADOKAWA」ロゴがかっこいい!

――「鬼ヶ島」は随分古い曲のようですが。
高木 1997年の高校2年の時の曲で、アレンジ含めてほぼその時のままです。当時、人間椅子の追っかけをやっていたので、かなり意識した曲になってるかな(笑)。今回、マスヒロが叩いたことによって、23年前に思い描いていた完成形ができました(笑)。
マスヒロ 自分にとっては新曲なんだけど、何故か随分前から演奏し続けている錯覚に陥る……(笑)。
宮嶋 つくった時からマスヒロさんが叩いているイメージがあったってことですものね。でも、すごく人間椅子っぽいけど具体的に人間椅子の何かの曲に似ているわけじゃないのが、いかに人間椅子に憧れて研究してきたかってことの表れにも感じます。
――そしてこの曲のベースを弾いたのは、その当時のメンバーで、作曲にも携わった小島剛広です。
高木 小島くんは脱退して20年近くたち、現在では高橋優世良公則のバックを務める売れっ子ベーシスト。小島はメジャー、僕はアングラとお互い真逆の位置にいながらもそれぞれで個性を発揮してきました。各々活躍できていることはすごいことだなと。20年のブランクゆえか、レコーディングの時、「ここどうやって弾くんだっけ?」と聞いてきたんですが、「そこ、小島がつくったフレーズだよ!」と(笑)。
1998年4月、当時高校3年生の初代金属恵比須による「鬼ヶ島」演奏模様。レア!(於・ゆう杉並)

――次からライヴに移ります。「登場音楽:映画『八つ墓村』より『呪われた血の終焉』」ですが、これは初収録ですね。
高木 この曲は2012年から登場音楽としてずっと使っていました。故・芥川也寸志先生の作品です。ずっと芥川ファンだったし、金属恵比須の「横溝正史の世界観をロック化する」というコンセプトにマッチしたので。収録にあたっては、2019年に芥川先生の奥様・眞澄さんにお会いしたのがきっかけです。
高木大地  (撮影:飯盛 大)
――なぜ、そのような展開に?
高木 「小松左京音楽祭」のプロデューサー・西耕一さんに誘われ忘年会に行ったら眞澄さんがいらっしゃったんですよ。そこで酔った勢いで「大好きです!」といって(笑)。そして、西さんからは、「〜音楽祭」で共演したオーケストラ・トリプティークで演奏したバージョン(『芥川也寸志生誕90年メモリアルコンサート』収録)の使用許諾をくださいまして収録できることとなりました。CDの裏ジャケには奥様のコメントもいただき感無量です!
2018年4月、神戸公演の全編映像。オドロオドロしい登場の雰囲気が伝わってくる(於・チキンジョージ)

――「武田家滅亡」へと続きます。最近のライヴの定番の流れを感じます。
マスヒロ いつもはリスナーの皆さんと一緒に盛り上がるから、無観客で大人な雰囲気になると思いきや、結果毎度のごとく暴れてしまったかも……。
稲益 私も久々のバンドでの演奏&ライヴで、最初の曲だし、勢いよく行こうと思ったら、なんかすごく力が入ってしまって。よく考えたら、ライヴではいつもサビは半分くらいお客さんに歌ってもらっているんですよね(笑)。ライヴではこの曲はやっぱり、コールアンドレスポンスしたい曲ですね!
2018年、『武田家滅亡』プロモーション映像。「長篠の戦い」で有名な設楽ヶ原で撮影。撮影はなんと後藤マスヒロ(笑)

――「ハリガネムシ」。人気の曲が続きますね。以前『阿修羅のごとく』にもライヴヴァージョンが収録されていますが、5年を経て変化はありますか?
栗谷 「ハリガネムシ」のベースソロは前任の多良洋祐君が弾いていた時はファンキーな演奏になっていたと思うんですけど、僕が入ってからはベースがバキバキなロックっぽさが多いから、ファンキーな感じは薄れていますよね。あの部分ってメンバーとは「こういう感じで演奏しよう」って一度も話したことないのに自然に変化しているのが面白いですよね。
マスヒロ ここ最近はソロをコンパクトにしていたから、久しぶりに腹いっぱいソロ演奏したんじゃないでしょうか。
2016年12月のレア映像。ベース栗谷の初舞台(於・ゆう杉並)

――新曲「黒い福音」。これは新境地で驚きました。
宮嶋 この曲は3つパートから成り立っています。全体の構想だけ与えられたまま、本番に臨み、即興演奏を展開しています。パート2ではフロイドの「神秘」を少し意識しつつも暴れまくるマスヒロさんと栗谷の演奏に驚かされましたね。
高木 事前リハーサルなしで当日のみ合わせた即興演奏でしたが、こんなにうまくいくとは思っていませんでした。まさに「神秘」!(笑)
マスヒロ しっかり作り込んだものもいいのだけれど、こういった手法はスリリングで楽しいね!
高木 第3部はさながら「火曜サスペンス劇場」を思わせる雰囲気も(笑)。松本清張のコンセプトだけに。
宮嶋 是非崖の上で聴いてほしいですよね(笑)。
――「罪つくりなひと」はイントロがスタジオ盤と違いますね。
宮嶋 これは初演の時にやったイントロを再現したものなんです。
高木 栗谷のベースもスタジオよりも伸び伸びと自由に弾いてます。
2017年1月初演の模様(於・横浜ベイジャングル)

――「蟬しぐれ」は今回初収録の新曲です。
宮嶋 この曲の初演は4年前のワンマンライヴで、そのあと新曲総選挙ライヴでやったきりでしたっけね。
高木 三島由紀夫『豊饒の海(四)天人五衰』の最後の場面からインスパイアされた曲です。この小説の最後の蝉が鳴く場面は、1970年11月25日の朝に書き上げられましたそうで、その後三島は市谷駐屯地に行って自決したんですよね。奇遇なんですが、このアルバムの発売日が11/25に決まってしばらくした時に、「あ、『天人五衰』50周年の日」と気づきました。偶然が重なった曲です。
宮嶋 なんだか運命を感じますね。久しぶりにやって、味わい深い曲だなと思ったので、ライヴのステージに戻れた暁にはコンスタントに演奏したいですね。
稲益 演奏するのもだいぶ久しぶりだったので、「あれっ、途中のメロディどんなだったかな?」と思い出すところから始めました。金属恵比須の曲の中でも異彩を放っている曲で、今回初めて音源化できてよかったなと。高木のいっていた三島つながりの不思議なタイミングも後から判明して、今回入るべくして入った曲かなと。
2017年4月、「新曲総選挙」にて(於・シルバーエレファント)
以下次号
2020年11月オンライン上にて収録
(聞き手:深見ススム)

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