TFG 初の配信ライブにメンバーの卒
業、初の映像作品に映し出されたグル
ープのリアルな姿

貴方は“TFG”をご存知だろうか? その名の由来は“Touchable FraGrance”――直訳すると“触れることのできる香り”。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という五感を“フレグランス”というワードに集約させて、そのすべてを刺激することをコンセプトに、2019年に始動した音楽パフォーマンスグループのことである。例えば、ライブ中に彼らがフロアへと投げ込むバラの花から漂う芳香は、フローラルにシトラス、バルサム等、メンバーそれぞれのイメージフレグランス。いわゆるメンバーカラーが設定されているグループは数多あれど、担当フレグランスまで持っているのは彼らくらいだろう。ちなみにファンの名称も、フランス語で香水を意味する “PARFUM” と “FAN” を掛けての “PARFAN” という徹底ぶり。つまりは観て、聴いて、触れて、感じて、香ることのできる新感覚アーティスト、それが“TFG”なのだ。
端的に言えば“歌って、踊る”音楽プロジェクトであることに間違いはないが、メンバーの赤澤遼太郎、前川優希、佐藤信長、坂垣怜次、堀田怜央、桜庭大翔は皆、2.5次元舞台を中心に活躍する若手俳優たち。昨年(2019年)5月に結成して2ヶ月後には1stシングル「My dear Summer」でデビューし、8月、12月とライブイベントを重ねてきた。そのいずれもが超満員の大盛況となったのは、ステージパフォーマンスのみならず、俳優という特性を活かしたトークや即興劇なども織り交ぜて、ファンとの距離を縮めてきたからこそ。そこで武器となったのが、香りとカラーになぞらえて打ち出されたメンバーそれぞれの個性であり、どんなお題を出されようともエンターテイメントに仕上げられる彼らの肝の据わりっぷりである。それは音楽面でも例外ではなく、爽快なパーティーチューンで恋の始まりを歌ったデビュー曲以降、2ndシングルではダンサブルで切ないウインターソング、今年3月に発表した1stアルバム『Celebration』ではヒップホップにEDMと、デビュー直後の新人には無茶ぶりとしか思えないレパートリーに果敢に挑んでいるのも頼もしい。そんな彼らの体当たりなパフォーマンスを目の当たりにできるのが、このほど発売されたTFG初の映像作品『Special Live 2020 -celebration-』である。
右肩上がりの勢いに乗って、今年の春には初の東名阪ツアーを予定していた彼ら。しかし時節柄、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて全公演中止となり、そのリベンジとして今年8月末にオンラインで開催されたライブの全編が、ここには収められている。しかも、本公演はウッディノート/グリーンを担当する健人の卒業ライブとも重なったため、メンバーの気合もひとしお。開演前、彼を囲んでステージ裏で気合を入れる模様から映像がスタートすると、幕開けから情熱的なラテンチューン「Dance with Me」でセクシーな色香を振りまき、ダンスブリッジでは各人が舞台仕込みの高い身体能力を発揮してゆく。まず、オリエンタルノート/オレンジ担当の坂垣が、健人と共にキレキレのステップで魅了し、ハーバルノート/ブルー担当の前川がセクシーなムーヴで視聴者をざわめかせると、スパイシーノート/レッド担当の赤澤は画面のこちら側にまで斬り込んでくる勢いで殺陣を披露。また、フローラルノート/ピンク担当の佐藤はパラパラ風アクションで甘い笑顔を振りまき、シトラスノート/イエロー担当の堀田が自虐ネタをイケボで展開すれば、ミステリアスなバルサムノートとパープルを担当する桜庭は自作のラップを豪快にドロップと、パフォーマンスの特色と担当が絶妙にリンクしているのもさすがである 。
また、本公演最大の見どころと言えるのが、同じマンションに住む7人の1日を描いた「朗読劇~マンションTFG~」。7人7様の生活を送るなかで、ありふれた日常の何気ない幸せに気づいてゆく彼らの台詞が、背後のスクリーンで一つに繋がり、アルバムの表題曲「Celebration」の歌詞を完成させると、このラテン風サマーチューンを7人はタオルを振りながら披露していった。演劇と音楽が密接に結びついた演出は、まさしく舞台俳優とアーティストの二足の草鞋を履く彼らだからこそ為せる業に違いない。
腰掛けたチェアから立ち上がり、カメラに向かってセクシーにバラの花を投げる「With You」で香りを想起させ、それぞれの旅立ちを綴った「シンセイカツ」で観る者の背中を押すと、最後のMCではそれぞれが感謝とツアーが中止になってしまった悔しさを表明。現体制でのラストステージに、ハーバルノート/ブルー担当の前川が感極まりながら「変わらず7人ともよろしくお願いします」と頭を下げれば、「明日からはPARFANの一員としてTFGを応援していきたいです」と宣言した健人との変わらぬ絆を、全員が「My man, My people」で涙ながらに歌いあげる。8ヶ月ぶりにライブを行えた喜びと、PARFANと直に会うことのできなかった悔しさと、仲間が新たな道を進んでゆく寂しさと祝福と。複雑な感情がすべてない交ぜになり、あふれ出したステージなど、そう滅多にあるものではないだろう。
また、当日は配信されなかったライブ後の映像も、本作には収録。すべてを出し切った達成感と充実感で脱力状態になったり、楽屋で健人に記念の色紙を渡してはしゃいだりと、メンバーのレアな姿も目の当たりにすることができる。コロナ禍で行われた初の配信ライブにメンバーの卒業と、将来、振り返ってみればグループにとって重要なマイルストーンとなること必至のステージ。それを映像作品として残したのは、TFGにとってもココを一つの新たな出発点にしたいという決意の表れだろう。活動が制限されている現在の状況下でもPARFANたちと繋がるべく、インターネットを通じてさまざまな企画を行っている彼らだが、“五感”がコンセプトである以上、その本領は同じ空間に集ったときに発揮されるもの。その日が一日も早く訪れることを、今はただ祈りたい。
文=清水素子
ライブ写真撮影=田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着