早見沙織 アーティスト活動初の“生
配信ライブ”で届けたい『glimmer o
f hope』に込めた思い

春から夏にかけて予定されていた5周年記念ライブツアー『“Your Cities”』がコロナ禍によって中止になってしまった2020年。12月27日に無観客での配信ライブ『“glimmer of hope”』を行う早見沙織。アーティスト活動のなかで初となるSTREAMING LIVEを目前に控え、着々と準備が進むなかで感じている“ドキドキ”や、ライブを通して届けたい思い。これからの活動でやりたいことなど語ってもらった。

●「5年のすべてを包み込んだライブ」であり「ささやかな光になるライブ」に
――直近のライブ出演では8月30日の『Animelo Summer Night in Billboard Live(以下アニサマナイト)』がありました。コロナ禍でライブツアーが中止になり、久々のライブだったと思いますが、歌うことに対しての向き合い方などコロナ以前と変化はありましたか?
本当に久しぶりのバンドさんと一緒に歌える機会ということもあって、まずは歌を歌えることや、音楽をみんなで作れることへの喜びを改めて感じた場所でもありました。あと、『アニサマナイト』のときは、場所がビルボードライブ東京だったんですね。私がすごく好きであこがれている場所でもあったので、そういう場所でライブができたということもひとつ大きなことだったなと思いました。
――国内外問わず、錚々たるアーティストが歌ってきた会場ですから、そこに立てたということ自体の喜びも大きかったと。
お客様はいらっしゃらなかったんですけど、画面の向こうで確実に観てくださっているということは感じましたし、人はやっぱりその場所にはいたので。スタッフさんだったりバンドメンバーだったりとか。実際にコロナ禍のなかでは、家で一人でいることが多かったので、周りの人たちと同じ空気を共有して音楽を作れる、奏でられるということは本当に素敵なことだなと感じました。
――無観客でのやりにくさなどはとくに感じずに歌えたということでしょうか。
「配信ライブだと拍手の間が絶妙になる」とかよく聞くんですけど(笑)、あのときはそんなになかったですかね。スタッフさんも観てくださっていましたし、あまりそういう難しさは感じずに歌うことができました。
――『アニサマナイト』の次のライブが、年末の配信ライブ『glimmer of hope』になるわけですが、こちら直訳すると「希望のきらめき」という意味のタイトルになります。どういった意味合いをこめてつけられたのでしょうか。
今回、タイトルに使われている「glimmer」という単語が、いちばん最近出したミニアルバム「garden」に入っている一番最後の楽曲。そして私のデビューシングル「やさしい希望」(アニメ『赤髪の白雪姫』OPテーマ)には「Blight hopes」という英語版があるので、そこから「hope」という単語をとりました。なので、5周年の活動を踏まえた12月27日のライブとして考えているんですけど、(アーティスト活動で)いちばん最初の曲と最後に置かれている曲をくっつけることで、5年のすべてを包み込んだライブというタイトルになっています。そして、このライブ自体が自分の今後の活動においての希望の光、指針になってくれるといいなという気持ちも込めましたし、配信を観てくださる皆さんにとっても、今年はとくにいろいろなことがあったと思うんですけど、1年の終わりにこのライブを観て、ちょっとでも「明日から頑張っていこう」とか「来年からまた前を向いて生きていこう」と思えるような、そういうささやかな光になるライブになってほしいなという意味合いも込めて、このタイトルにしました。
――観る人みんな楽しみにしていると思いますが、早見さん自身はどういた気持ちが強いですか?
もうドキドキです。『アニサマ』のときよりも、個人的には“ザ・配信”というイメージが強くなると思っているので、すごいドキドキしてます。まだやったことがないという感じです。
――同じ無観客配信ライブでも、意識としてはぜんぜん違うものという感覚なんですね。
『アニサマナイト』はゲスト出演ということもあったのかもしれないですね。自分のソロライブで配信でというのは初めてのことなので、ドキドキです。
――その『アニサマナイト』では「家でまったりとお好きなお酒や飲み物を片手に、極上な大人の夜を」というコンセプトがありました。早見さんの配信ライブでは、コンセプトだったり「こうやって観て楽しんでほしい」というイメージなどはありますか?
まさにタイトルなんですけど、観終わったあとにふわっと心に光が灯るじゃないですけど。明かりが灯るようなそういうライブにしたいなと思っていて。セットリスト的には、序盤はけっこう閉塞感があるといか。映像演出的にもそういうイメージをしているんですけど、ちょっと窮屈ななかから、途中でいろいろな流れを経て、一度一気にバーン!と解放されるような場所があって。そこから、最後にはいろいろな流れを経て少し自分が前を向けるような流れには作っています。
――それを配信としてどう見せるかという部分でドキドキしているといった感じでしょうか。
そうですねえ。さっきも舞台監督さんたちといろいろ演出だったり映像だったりとか、打ち合わせをさせていただいたんですけど、やっぱり普段のライブとは圧倒的に違うということで、ライブの前、後。それこそスクリーンという意味でも始まり方と終わり方っていうのって、生のライブとぜんぜん違うので、そこをどう作っていくかというのが大事なんだろうなというのは感じています。
●「映像で観てもらうことを念頭に置いたライブになっている」
――早見さんは音楽好きなので、いろいろな方がやっている配信ライブもご覧になっていたりするのかなと思うんですが。
たまに生配信中のYouTube Liveとかは観たりするんですけど、今回はなんか意外に観れていない気がしますね。コロナ禍の配信ライブ。無料の配信ライブとかは観たんですけど、まだちゃんと観られていないんですよ。
――そうなんですね、ちょっと意外でした。
そうなんですよ。皆さん怒涛のように配信ライブをやられていますよね。12月の末から1月までスピッツさんがやるのは観たいなって思っているんですけど。
――『スピッツコンサート2020“猫ちぐらの夕べ”』ですね。では、ほかの方のようにこうやってみようというベースはほとんどなくて、これまでにやってきたライブの経験を持って初めて挑戦するワンマンでの配信ライブという感覚が強いのでしょうか。
そうですね、配信自体は観てはいるんですけど、ガッツリのステージ系としてはそうかもしれないです。
――ちなみに、早見さんは配信ライブを観るときはどのような観賞スタイルでしょうか。スマホなのかパソコンやテレビの画面に映すのか。リラックスして観ているのか、食い入るように観ているのかなど、いろいろ人によって好きな観方は違うと思うのですが。
スマホで観るか、パソコンで観るかの2択っていう感じですね。だいたい家で観ることが多かったので、基本は温かい飲み物はマストで置いてますよね(笑)。
――リラックスして音楽に浸る、みたいな。
生配信だったことが多かったので、何か作業をしながらとか。音楽だけ聴いて、それこそご飯を作りながら並行でやったりとかはしていましたね。YouTubeで配信していたちょっと前のジャズフェスみたいなのを観ましたね。
――では、開演からアンコールまでガッツリ観るというようなことはあまりなかったんですね。
1から10まで全部観てということも、あったはあったんですけど、すごくゆる~っとした感じで観ていることが多かったかもしれないですね。
――では、早見さんの配信ライブを観る人に、どういう感じで観てほしいというようなイメージはありますか?
今回のライブに関して言えば、場所や観ているときの状況っていうのは皆さまにゆだねる形にはなるんですけど、配信ということで映像の演出だったりカメラワークだったり、仕掛けみたいな部分は舞台監督さんたちとお話して凝った形になっているので、映像は観ていただけると嬉しいなと思います。
――もちろん早見さんの歌もしっかり聴きつつ、映像にも要注目ということですね。5月29日に『 #早見沙織生誕祭2020』で過去のライブを無料配信しつつ、早見さんも実況するというような試みもありましたが、それとは観る側の印象もぜんぜん違ったものになりそうですね。
そうなんですよね。あのときは普段のライブDVDをみんなで観賞会するような感じだったんですけど、今回は本当に映像で観てもらうことを念頭に置いたライブになっていると思うので。いわゆるライブDVDみたいなライブらしさと、配信で見せるライブらしさが、融合したライブになっているので新しいと思います。
――それは期待が高まりますね。
私も楽しみです(笑)。まだぜんぜんどういう画面になるのかわかっていなくて。演出は考えているんですけど、実際に映像としてどういうものになるのかがまだ未知数なので。
●「観ていただく方に、やさしい光が残ってくれるといいな」
――先ほど早見さんもおっしゃていたように、この2020年はコロナがあってこれまでと大きく様相が変わってしまいました。早見さんにとってはどんな1年でしたか?
そうですね。やっぱり外出自粛要請のあった時期は私の周りの同業者の方とかは本当に一斉に仕事がストップしたような形になって、そのなかでずっとお家にいていろいろ考えるわけですよ。普段はめまぐるしかったりしてあんまり振り返らない自分のこれまでとこれからだったりとか。アーティスト活動においては、どんなふうに歌っていきたいかなとか、どんな活動をしていきたいかなということをずっと考えるような機会にもなっていて。そんななかで、今回のライブにも通じるものがあるんですけど、本当に今みんなに変化が訪れているかもしれなくて、いろいろなことを乗り越えながら歩んでいくと思うんですけど、そういうなかでのまさに「glimmer of hope」ですよね。ちょっとでも自分が発信させてもらう音楽に触れてもらうことで、明日を生きる糧になったら。聴いてくれる人に寄り添うような音楽ができたらいいのかなって改めて意識するきっかけになったかなって。そういう2020年だったんじゃないかなって思っています。
――望んでいたものではないとはいえ、収穫もあった。
自分の活動的には、それこそ5周年ということもあって、これから先も見据えたなかでのそういった決意というか。そういうふうに思ってもらえるものを5周年から先に、これからやっていけたらいいなということは改めて感じました。
――具体的にどうなりたい、どういうことをやりたいというイメージはあったりするんでしょうか。
そうですねえ、いろいろあるはありますけど……。1個思ったのは、それこそいろいろな幅広い世代の人に聴いていただけるのがいちばんだなと思うんですけど、たとえば10代とか20代とか。そういう世代にもガツッて聴いてもらえるものとかもいいかな。作っていきたいなと思ったりしますね。
――たしかに早見さんの曲はちょっと高めの年齢層に響きやすいというか、ジャズやソウル、シティポップなどを好きな人が反応するような曲が多かったりしますもんね。
はい。そういうところで、また幅を広げてやっていけたらいいなと思ったりしました。
――そういった考えに至る過程で、早見さんご自身でも聴く音楽に変化があったりしたのでしょうか。
ありました。いま流行りの曲とかをいっぱい聴いてます。でも、流行っているから聴いているというよりは、もともと自分が年代とか世代とかジャンルとかを問わず、音楽はなんでも聴くほうだったので、再探索の旅に出たというんですかね。
――「おうち時間」なんて言葉もありましたが、それはすごくアーティストらしい時間の使い方ですね。
わりと去年とか今年、それこそコロナ禍前までは、だんだん聴く音楽が決まってきていたんですよね、やっぱり。「こういう感じの曲を聴いている」ということが多かったんですけど、コロナ禍を経ていろいろなものを発掘しようと意欲的にはなってきたかもしれません。自分自身が好きなテイストだったりとか、こういうのカッコイイなというようなものが人気になっていたり、10代のすごく若い方もたくさん聴いてらっしゃったりとか、自分の創作にも刺激をもらいましたね。たとえば『JUNCTION』のときは、それまで身に着けてきたいろいろな自分の中にある栄養分を取り出して生み出しているような感じだったんですけど、次に何か出させていただく機会があったら、新しいエッセンスを取り入れた楽曲たち、ちょっとテイストが変わったようなものもお届けできるんじゃないかなという気持ちにはなっています。まだぜんぜんわからないんですけど(笑)。
――そういった気持ちの変化が、今回の配信ライブで、既存の楽曲を歌うにあたっても表現に影響してくる部分があったりしそうですね。
そうだと思います。それこそ、『JUNCTION』の曲もやりますけど、ぜんぜん違うふうに聴こえてくるような楽曲もあると思います。私もどう届くかドキドキです。
――なるほど、それは楽しみです。ここまでたくさんにお話しいただきましたが最後に改めてライブへの意気込みを一言お願いします。
自分のアーティスト活動初の生配信ライブということで、当日のその時間になるまで何が起こるか私もわからない。でも確実に、私自身も音楽をやっていてすごく満たされるライブになるんじゃないかと思います。何度も繰り返してしまっていますが、観ていただく方にとっての「glimmer of hope」。やさしい光が残ってくれるといいなと思っています。ぜひ楽しんでご覧ください。よろしくお願いします。
レポート・文:藤村秀二

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