VOW WOWの
『BEAT OF METAL MOTION』は
早過ぎるほどに早過ぎた
国産HRの究極進化
人見元基の圧倒的な存在感
アルバムはそこから、インタールード的な短いインスト曲M7「LONELY FAIRY」を挟んで、人見のド迫力の歌声と山本の叙情的なギターとのマッチングが聴く人の琴線を刺激しっ放しのプログレナンバー、M8「SLEEPING IN A DREAM HOUSE」。アメリカンハードロック的なポップさを湛えたM9「ROCK ME」。そして、アルバム全体を通して随所で見せてきた彼ら流のコーラスワークを加味して、M9とはまた違ったキャッチーさを見せるタイトルチューン、M10「BEAT OF METAL MOTION」と来てフィナーレ。最後の最後まで聴きどころを抑えたアルバムである。日本語詞が随分とHR/HMの様式美にハマっている部分もあり、個人的にはもう少し何とかならなかったのかという想いがなくはないけれども、時代は日本のロックがこの辺りからメインストリームを伺おうかという時期。過渡期のものであるとすれば大目に見れるとは思う。
過渡期と言えば、最後にその後のVOW WOWについて少し触れて本稿を閉じよう。彼らは1986年に拠点を英国に移して活動を展開。メンバーチェンジに見舞われたものの、その後に制作したシングル、アルバムは共に英国でチャートインするなど一定の成果を見せた。1990年には米国進出を狙って6thアルバム『MOUNTAIN TOP』をリリースするも、米国のレコード会社との契約ができなかったことで、同年末、バンドは解散を選択することとなる。1986年と言えば、日本ではその前年に発売されたレベッカの『REBECCA IV 〜Maybe Tomorrow〜』がミリオンセールスを記録し、BOØWYがアルバム『JUST A HERO』、『“GIGS” JUST A HERO TOUR 1986』、『BEAT EMOTION』を相次いで発表してブレイクした年である。ようやく日本のロックシーンがしっかりと形成された頃と言ってもよかろう。そんな時期に全米進出とは、今になってみれば相当に意識が高かったと言える。日本のロックエンタテインメントは過渡期も過渡期。海外進出に至っては黎明期とも言っていいくらいの時期である。いかにバンドがそれを望むだけの実力を持っていても日米双方の事務方が追いつかなかったとは想像するに難くない。VOW WOWは生まれて来るのが早過ぎるほどに早かったのである。
TEXT:帆苅智之