重量級ファンクから
ポップファンクまでが味わえる
アース・ウインド&ファイアの
『灼熱の饗宴』

モーリスの念願、
ポップ&ソウルチャートで全米1位に

続く『太陽の化身(原題:Open Our Eyes)』(’74)はファンク度にキレが増し、バラードナンバーでのベイリーのファルセットが的確にキマるなど、EW&Fの特徴とも言えるポップファンク・サウンドが完成する傑作となった。そして、このアルバムは彼ら初の全米ソウルチャート1位を獲得する。

次作『暗黒への挑戦(原題:That’s The Way Of The World)』(’75)は、映画のサントラとして制作された。映画はコケたものの、このアルバムは大ヒット曲の「シャイニン・スター」(全米1位)や「暗黒への挑戦」(全米5位)が収録され、前作に勝るとも劣らない仕上がりとなっている。全米ソウルチャートで1位となっただけでなく、モーリスの念願であったポップチャートでも1位を獲得し、EW&Fは誰もが認めるトップスターの仲間入りを果たした。

本作『灼熱の饗宴』について

ところが、彼らを黒人ファンクバンドとして見ていた人間にとっては『太陽の化身』や『暗黒への挑戦』(それにしても、この邦題はなんとかならんか…)は、作品として良い出来ではあったが、軽くなりすぎていて僕は物足りない部分を感じていたのも事実である。

そして、2枚組(LPリリース時)でリリースされたのが本作『灼熱の饗宴』(’75)である。前作同様、ポップ&ソウルチャートの両方で1位となった。アルバムは冒頭で述べた、ドラが3発〜グループ名を言うだけのMCがあって『暗黒への挑戦』に収録された「アフリカーノ」と『地球最期の日』に収録された「パワー」のメドレーから始まる。…この一曲の黒っぽい粘っこさはハンパない。ホーンセクションの煽りやオーディエンスとのコール&レスポンスなどもあって、これこそファンクだと言いたくなるようなグルーブである。

2曲目の「ヤーニン・ラーニン」の弾けた破壊力も凄い。ラムゼイ・ルイスの「太陽の女神」ではサックスとエレピが弾き(吹き)まくり、まるでフュージョン・グループのような顔も見せる。前作に収録された大ヒット曲「シャイニン・スター」も、スタジオ録音と比べるとアドリブが多くスリリングな仕上がりになっている。ライヴは、9分強におよぶ「ニュー・ワールド・シンフォニー」までで、以降の「サンシャイン」、シングルカットされた「シング・ア・ソング」(全米5位)、「グラティテュード」「セレブレイト」「キャント・ハイド・ラブ」はスタジオ録音で、どの曲も粒ぞろいである。

本作にイチャモンをつけるとすれば、ライヴの圧倒的なパフォーマンスに比べてスタジオ録音はおとなしいがゆえに、アルバムとしてのバランスが悪いこと。そうは言っても、これだけ熱いパフォーマンスを味わえる機会はそうないので、まだ未聴の人はぜひ聴いてみてほしい。EW&Fは本作さえあれば完結すると言う人も少なくなく、それだけ素晴らしい演奏が詰まった傑作だと言えるのだ。

TEXT:河崎直人

アルバム『Gratitude』1975年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. イントロダクション/Introduction by MC Perry Jones
    • 2. アフリカーノ/パワー/Africano/Power
    • 3. ヤーニン・ラーニン/Yearnin' Learnin'
    • 4. デヴォーション/Devotion
    • 5. 太陽の女神/Sun Goddess
    • 6. リーズンズ/Reasons
    • 7. メッセージを君達へ/Sing a Message to You
    • 8. シャイニング・スター/Shining Star
    • 9. 新世界シンフォニー/New World Symphony
    • 10. インタールード1/Musical Interlude #1
    • 11. サンシャイン/Sunshine
    • 12. シング・ア・ソング/Sing a Song
    • 13. 感謝/Gratitude
    • 14. 祝福/Celebrate
    • 15. インタールード2/Musical Interlude #2
    • 16. キャント・ハイド・ラヴ/Can't Hide Love
    • 17. ライヴ・ボーナス・メドレー/Live Bonus Medley
『Gratitude』(’75)/Earth, Wind & Fire

OKMusic編集部

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