LAMP IN TERREN、Saucy Dogらが一堂
に会した『MASHROOM』東京リベンジ公

MASH A&R所属のアーティストが一堂に会して繰り広げるライブイベント『MASHROOM』。今年は初の東阪2公演開催となったが、1月5日に予定していた東京公演は新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府からの自粛の呼びかけに応じ中止、1月23日の大阪・BIGCAT公演はガイドラインに沿って無事に実施。そこから約2ヵ月を経て3月14日、東京・LIQUIDROOMにて1月のリベンジ公演が開催された。当日は生配信も同時に行われ、会場のみならずオンラインでも多くの方が参加。なお、配信は3月21日23:59までアーカイブ視聴が可能になっている。
今年は2015年の初開催以来、イベントをけん引してきたTHE ORAL CIGARETTESフレデリックは参加せず、LAMP IN TERREN、Panorama Panama Town、Saucy Dog、YAJICO GIRL、ユレニワ、そしてオープニングアクトを務めるEzoshika Gourmet Clubの計6組が出演。一度中止になってしまった公演のリベンジ、そして思うようにライブ活動ができなくなって1年というこの現状の中、各バンドいつにも増してパフォーマンスに想いと熱がこもっているように見えた。以下、レポートする。
■Ezoshika Gourmet Club
Ezoshika Gourmet Club 撮影=山川哲
オープニングアクトとして登場したのは、MASH A&Rが主催するオーディション『MASH HUNT』の第1回目となる『MASH HUNT LIVE Vol.1』にてBEST ARTISTを獲得したEzoshika Gourmet Club。手を挙げ、「MASHROOM 2021よろしくお願いします!」という池澤英(Vo/Gt/Key)の挨拶から、1曲目に披露されたのは「東京」。疾走感のある爽やかなサウンドが会場に充満する中、一気に駆るシンセの音や、額田一佑(Gt)のアグレッシヴなギターパフォーマンスなど、心を高揚させる仕掛けが随所に盛り込まれる。続く「弾ける炭酸」から「猫と占いと家具屋」まで、遊び心を交えながら自分達のペースで伸び伸びと歌い鳴らす姿は、オ-プニングアクトのプレッシャーも跳ね飛ばす堂々たるものだった。
「今日はいい1日にしましょう」という池澤の言葉で最後に届けられた新曲は、ひと足早い夏を感じさせるワードが散りばめられたミドルナンバー。曲を重ねるごとに会場の空気が確かな温度を帯びていくのが伝わるライブパフォーマンスで、イベントの幕開けをバラエティ豊かな楽曲群で鮮やかに彩った。
■Panorama Panama Town
Panorama Panama Town 撮影=小杉歩
赤の照明を浴びて颯爽と登場したのはトップバッターを務めるPanorama Panama Town。2016年に開催された『MASHROOM』にてオーニングアクトを務めた際、初めてLIQUIDROOMのステージを踏んだという彼らだが、そんな当時を振り返るように2016年リリースの「SHINKAICHI」、そして「いい趣味してるね」と立て続けに披露。ライブではお決まりの自己紹介ラップを挟んだ後、「今日は原点に戻りまして、俺らが最初に作った曲!」という岩渕想太(Vo/Gt)の掛け声で「ロールプレイング」を投下する。バンド結成当時の初期衝動を彷彿とさせるような熱いパフォーマンスはオーディエンスの心を掴んで離さない。
「リキッドルームにはいろんな思い入れがあって。俺らが初めてMASHROOMのオープニングアクトで出たライブハウスでもあるし、前のドラムが抜ける前に最後に立ったのもここだったし、去年喉の手術をしたんですけどその前に立ったのもここで………この会場に積み残してきたものがいっぱいあるような気がしてて。今、なかなか大変な状況ですけど、来てくれたみんなも本当にありがとうございます。ケリを着けて帰りたいと思いますんで、最後までどうぞよろしくお願いします!」
「MOMO」の切り裂くようなイントロが会場の空気を再加熱し、岩渕のリズミカルな歌唱と高速ギターリフの合わせ技が炸裂。その熱が冷めやらぬまま、「悲しい夜を超えてまた逢いましょう」という言葉と共に最後に奏でられたのは「Sad good Night」。ブルーの照明に照らされ、ひと言ひと言噛み締めるように歌う岩渕の姿が印象的だった。4月7日にリリース予定のEP『Rolling』からも3曲披露するなど、新旧織り交ぜたセットリストには、地に足をつけ進み続ける逞しい3人の姿が映し出されているようだった。
■ユレニワ
ユレニワ 撮影=山川哲矢
昨年12月から4ヵ月連続で配信でのリリースを重ね、毎月様々な表情を見せるユレニワ。MASH所属バンドの中では一番の若手でありながら、気合十分の様子で息巻くように登場した4人。そんな彼らが1曲目に選んだのは「焦熱」。じっくりと浸透していくかのようなシロナカムラ(Vo/Gt)の歌声に繊細な音像が重なり、少しずつスケールを押し広げていくミドルテンポのこの曲で観客を自分達の世界へと惹き込む。そこから一転、突如激しいドラミングが会場の空気を搔き乱し、「ユレニワです、最後まで楽しんでいきましょう!」という掛け声から「Cherie」へ突入。エモーションを加速させる種谷佳輝(Gt/Cho)のギターソロ、そして「ライブハウスは最高だな!!!」というシロの叫びが会場のボルテージを一気に上げる。続く「だらしないね」では歪んだバンドサウンドが会場を包囲。内に溜め込んだ熱を惜しみなく放出するかのように荒々しく歌い叫び、オーディエンスを圧倒した。
「こんにちは。ユレニワって言います。こう言うのも何ですけど、僕らのこと、皆さんどう思ってます? うるさい? 汚い? 新人変なヤツいるわみたいな?(笑)」とはにかみながら「頑張っていきます。お手柔らかにお願いします」と言い放ち、披露されたのは「Bianca」。ギターの音が水面に揺蕩うように残響を残す中、先ほどまで見せた表情と一転、自らが搔き乱した会場の空気を優しく包み込むように歌う姿が印象的だった。「fusée 101」を経て最後に披露された「まぼろしの夜に」では「素敵な音楽と、君に降り注ぐ新しい風を抱いて、皆がどうか健康でいられるように」という言葉を添え、音が途切れるその時まで全身全霊を注ぐように歌い鳴らした。
YAJICO GIRL 撮影=小杉歩
2月17日にフルアルバム『アウトドア』を配信リリースしたYAJICO GIRL。2019年にリリースした『インドア』と対のイメージを彷彿とさせる『アウトドア』は、言葉は外向きに、音は開放的で温かい10曲で構成されていた。この日のセットリストは内省的な『インドア』と対となる『アウトドア』を繋ぐ、YAJICO GIRLの軌跡と、アップデートされるバンドの今を体現するようなものだった。
SEが鳴り、5人がステージに揃うとブルーのライトの中キーボード前面に「Indoor Newtown Collective」の文字が浮かび上がった。1曲目に披露されたのは、淡々と暗がりに光を与えるように歌う「NIGHTS」。後半にかけて深く潜り込むような歌唱から流れるように突入した「2019」では、「ゆるく体を揺らしながら最後まで楽しんでください」と四方颯人(Vo)自ら自由に歌い踊る姿で会場の空気を解きほぐしていく。そんな『インドア』に収録された2曲を披露した後、間髪入れず「街の中で」、「WAV」、「Surfing」と『アウトドア』の楽曲を披露。時に熱っぽく、時に艶っぽい四方の歌がフロアを先導し、自ずと巻き起こるクラップが会場に心地いい波を作っていた。
「1年に一度、音楽性は違いますけど、こうやって(MASHに所属するバンドと)一緒にできる機会があってよかったなと思います」そう言い放ち、最後に披露したのは「Better」。メンバー全員が体を大きく揺らし、顔を見合わせ微笑みながら演奏する姿に、充実するバンドの現在地を感じさせられた。大きな拍手を浴びながら終えたステージは、『アウトドア』の完成と共に強固になった5人の絆を示し、これからの可能性も十分に感じさせるパフォーマンスだった。
■Saucy Dog
Saucy Dog 撮影=山川哲矢
2月5日に初の日本武道館公演をやり遂げたSaucy Dog。『MASH FIGHT Vol.5』でグランプリを獲得した時と比べ、ひと回りもふた回りも大きくなった石原慎也(Vo/Gt)、秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr/Cho)の3人。石原が大きく息を吸いこんだのを合図に奏でられた1曲目の「シーグラス」から、オーディエンスの手が一斉に挙がる。続けて演奏された「メトロノウム」では、こみ上げる想いを喉の奥から絞り出すように歌う石原の歌唱に圧倒された。どんなステージの上でも変わらず、曲にこめた想いやその物語を丁寧に歌い鳴らしていく3人だが、その歌、そのアンサンブルが響かせるものは年々スケールも豊かさも増していて、聴く者の心により深く、より真っすぐに語り掛けてくるものになっている。
「MASHROOMって、事務所のバンド達が毎年1年に1回集まってライブをさせてもらってて。毎年、私達にとって久しぶりにMASHのバンドを見れる機会でもあるんです。みんな毎年めちゃめちゃよくなっていて、負けてられないなと思わせられる時でもあるんですね。こうやって1年に1回できるイベントを大事にして、来てくれるみんなと今日1日を最高の日にできたら嬉しいなと思います」
そんなせとのMCから、彼女が鳴らす軽快なビートがバンド全体をドライヴさせる「雀ノ欠伸」、そしてどこまでも飛んでいけそうな石原の伸びやかな歌唱が印象的な「ゴーストバスター」と、曲を重ねるごとにステージとの心理的距離が縮まっていく。最後に「sugar」を披露した3人の表情は、純粋にライブを楽しみ、音楽を通してオーディエンスと同じ体験をわかち合うことのできた喜びで溢れていた。
■LAMP IN TERREN
LAMP IN TERREN 撮影=小杉歩
SEはなく、サウンドチェックを終えたその流れで4人が一斉に音を奏で、始まったLAMP IN TERRENのライブ。1音鳴らしただけで否応なしに惹き込まれるほどの、説得力と佇まい。雄大なサウンドと共に松本の歌声が会場全体を抱きしめるように歌う「BABY STEP」に始まり、ライブアンセムとなっている「凡人タグ」、躍動感溢れる「地球儀」など、表情豊かな楽曲を次々と投下していく。初めてMASHROOMでトリを担うことへの気合いと想いがダイレクトに伝わってくるパフォーマンスに、フロア全体の心のグルーヴが最高潮に達していくのが感じられるような展開だ。その後、松本大(Vo/Gt)がつま弾くギターと歌で始まったのは「いつものこと」。<認めてほしいだけさ 愛してほしいだけさ><どうしようもない⽇々でも それが僕の全てなんだ/だからね 美しいって⼼から思って歌うの>——そんな素直な言葉に寄り添う3人の演奏と、一人ひとりの目を見て語り掛けるような松本の歌が心を優しさで満たしていく。
松本「俺は自分がやってること、自分が歌うことが(聴き手の)生活の支えになってるかどうか知らんけど、皆さんの人生を少しでも彩ることができるものだと信じて続けています。こんな状況下でも、歌えば歌える。続ければ続いていく。生きていれば生きていることができる。それがずっと楽しいもので、感動できるものでありますように」
最後に奏でられたのは「Fragile」。自身が奏でるピアノの響きに言葉を乗せ、一人ひとりに語りかけるように歌う松本。その言葉の意味を増幅させるかのようにコーラスとアンサンブルが重なり、この4人でしか生み出せないサウンドスケープを描いていくその様は、どんな時代になろうと人と人は心を通わせることができると信じて音楽を歌い鳴らす今の彼らを表しているようだった。トリを飾るに相応しい説得力と抱擁力のある圧巻のステージだった。
撮影=小杉歩
ラストは恒例、 毎年メンバー達自身が趣向を凝らして繰り広げるスペシャル企画。今年はトリのLAMP IN TERRENがプロデューサーとなり企画を考案。大阪公演同様、LAMP IN TERRENがバックバンドとなり、各出演バンドの楽曲をテレン流アレンジで構成し直し、それぞれのバンドのボーカリストが歌唱するという内容だった。大阪で披露した楽曲アレンジが各ヴォーカル陣から大変好評だったことから急遽、松本が大阪公演と東京公演の曲目を変えることを宣言、この日は大阪とは異なる4曲が披露された。ユレニワのシロナカムラを迎えた「だらしないね」、YAJICO GIRLの四方颯人との「WAV」、Saucy Dogの石原慎也による「シーグラス」、そして、Panorama Panama Townの岩渕想太で「フカンショウ」と、各ボーカルの持ち味を生かしつつ、それぞれの楽曲の新しい一面が垣間見えるアレンジはとても興味深く、そして互いへの理解とリスペクトが感じられるコラボレーションだった。最後は前述の4人に加えてEzoshika Gourmet Clubの池澤も呼び込み、「今日出たボーカル陣みんなで歌います」と「EYE」を披露。LAMP IN TERRENと5人のボーカリストによるシンガロングが響きわたる会場は、確かに音楽を楽しむ人達の愛で溢れていた。

文=桂季永(MUSICA) 撮影=山川晢矢/小杉歩

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