THE BACK HORN、6都市7公演の全国ツ
アー振替公演が閉幕 最終公演のオフ
ィシャルレポート到着

THE BACK HORN 「KYO-MEIワンマンツアー」カルペ・ディエム〜今を掴め〜

2021.4.4(SUN)
神秘的なサウンドのSEが鳴り響き、妖艶な青白い空間に「今を掴め」というメッセージを体現するかのような『カルペ・ディエム』のバックドロップに描かれた指先に照明の光が射す。客席の拍手に包まれながらメンバーがステージに登場した。
イントロが鳴り響くと会場はさらに妖しげな世界へと引き込まれていき、〈ハローハロー/生きるための言葉を刻もう〉と語るように歌い始める山田将司(Vo)。これまで一貫して「生きていくこと」を歌い続けてきた彼らのメッセージが胸に響く。当時20周年の集大成として2019年にリリースされた12枚目のオリジナルアルバム『カルペ・ディエム』の1曲目に収録された「心臓が止まるまでは」から振替最終公演は幕を開けた。
岡峰光舟(Ba)の猛烈なグルーヴを生み出すスラップベース、菅波栄純(Gt)の激しくそして歪んだギター、松田晋司(Dr)のしなやかで重厚感のあるドラムサウンドがオーディエンスの熱量を上昇させる「金輪際」。その勢いのままロックナンバー「シンフォニア」でライブの山場を作り上げ、メンバーに引き寄せられるように拳を突き上げ、声が出せない代わりに気持ちを重ねるように体を動かすオーディエンス。山田は両手を手繰り寄せる煽りアクションで会場をさらに盛り上げ、<帰る場所ならここにあるから>という歌詞を<帰る場所なら『TRAD』にあるから>とかえて歌うパフォーマンス。ライブだけに感じるこの特別な高揚感に鳥肌が立ち、もうこの会場の誰もが体を動かさずにはずにはいられなかった。
THE BACK HORN
「4月4日、TRADにようやく来ることが出来ました!ありがとうございます!」
松田のMCでは万感の思いで臨んだ振替公演であること。また残念ながら新型コロナウイルスの影響により中止となった公演があること。そして様々な想いを込めてこの最終公演のステージに立てた感謝の気持ちをオーディエンスに語り、その姿を見届ける誰もがその言葉を受け止め、演奏する音の中からもその想いを感じ取っているようだった。
松田の「最後までこの『カルペ・ディエム』を、今を一緒に感じて欲しいと思います。最後まで宜しくお願いします!」という一言から始まったのはTHE BACK HORNの新機軸と言えるナンバー「フューチャーワールド」。16ビートのベースで引っ張っていく岡峰の獰猛にして滑らかなフレージングはベーシストとしての才能を感じさせる。続けて「暗闇でダンス」。これまでライブを待たせていたオーディエンスと心の高鳴りをぶつけ合うかのように勢いのある曲を畳み掛けていき、止めの一撃と言わんばかりに山田の命を削るようなボーカルが心を揺さぶる「罠」を披露する。
その後も休むことなく山田作詞・作曲のTHE BACK HORNにしか出せない“怪しい童謡感”を感じさせる「ペトリコール」。山田の切ない歌声に菅波の美声がコーラスで重なる「I believe」、菅波のかき鳴らすギターとストリングスの同期が美しい音色を生む「デスティニー」と、アルバム「カルぺ・ディエム」を中心に構成された楽曲達がオーディエンスへ次々に送られていく。
続くMCではこの時期の花見の話題から、過去に岡峰が1人で泥酔し号泣したことや、菅波が先輩バンドマンに泣きながら人生相談した思い出話などに花が咲き、メンバー恒例のゆるいトークが繰り広げられ彼等らしい素朴でやわらかい空間が出来上がっていた。その空間が次の曲へと繋がるようにTHE BACK HORNらしいミッドテンポの「ソーダ水の泡沫」、バンドアンサンブルが美しい「あなたが待ってる」、そしてストリングスが曲を彩り、景色も描きながら背中を押していくような応援歌「果てなき冒険者」とTHE BACK HORNのロッカバラード達がその空間と会場を包み込んでいった。
「今日はTRADでファイナルを迎えられて、色んなことがあった上でのファイナルなので、いつも以上に胸が詰まる思いになりながら、終わりたくないなと…。淋しくなる気持ちです。」
そして、山田はこのツアーを通して改めて自分が歌を歌いたかったことを確信し、その気持ちになったことが嬉しかったと語った。
「どうもありがとうみんな!後半戦行こう!まだまだいけるかー!」とオーディエンスをさらに焚き付け終盤戦に突入する。
THE BACK HORN
まずは演奏が始まった瞬間にトップスピードに達する「鎖」を披露。山田作詞・作曲の「鎖」はライブでみんなを引っ張っていくような自分が自分を縛り付けている鎖と、自分とお客さんを縛り付ける鎖を描いたという。〈あなたがいるなら音を鳴らすよ〉という歌詞からはオーディエンスに対する山田の真摯な想いが感じられる。そのまま雪崩れ込むように攻撃的な曲の世界を彩った「戦う君よ」、「刃」と立て続けに披露されたアッパーチューンに熱狂したオーディエンスも呼応するかのように拳を天に突き刺す。菅波は頭を振りながら全力でギターをかき鳴らし、山田は鬼気迫る表情で全身から声を絞り出す。岡峰は激しくも細かなベースラインを奏で、松田がキレのいいビートを叩き出す。本編ラストを艶やかに飾ったのは「太陽の花」。荘厳なサウンドが和のきらびやかさを感じさせる4つ打ちのダンスビートで会場を盛り上げ、本編を終えた。
鳴り止まぬ拍手に応えたアンコールでは全てのオーディエンスを打ち抜くキラーチューン「コバルトブルー」。そして山田の「また生きて会おうぜ」という言葉とともに演奏が始まったアンコールラストはアルバム『カルペ・ディエム』の最終曲「アンコールを君と」。
その後、終演の影アナが始まったが、鳴り止まぬオーディエンスの拍手に応えるべく再びメンバーはダブルアンコールで登場し、このツアーの別れを惜しむように「無限の荒野」でラストを締めくくった。
アルバム『カルペ・ディエム』全曲を出し惜しみなく披露した約110分間。生きるための音楽を奏で続けるTHE BACK HORNはまたライブハウスで会う事を約束してこの日の幕を閉じた。 “今”を掴み取りながら前に進み続ける4人の活躍に今後も乞うご期待頂きたい!

撮影=Makoto Shinkawa[SPEEDSTAR MUSIC]

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