ゴダイゴの初期傑作
『DEAD END』に見る
汎用性の高いメロディーと
充実のアレンジ力

ポピュラリティの高いメロディー

まず、何と言ってもタケカワユキヒデ(Vo)の作るメロディーライン、そのポピュラリティの高さである。M1「MILLIONS OF YEARS(時の落し子)」からして隠しようのないメロディアスさが全開。サウンドはストリングスのみで、そこに彼のメインヴォーカルが乗り、彼自身のコーラスが重なるという構成は、本作がコンセプトアルバム的な作品であって、そのオープニングナンバーであるというポジションに関係しているのかもしれないが、こうしたシンプルなサウンドであることで、メロディーの強さが際立っている印象だ(メロディーが強いからこそ、こういうサウンドに仕上げたのかもしれない)。M2「IN THE CITY(イン・ザ・シティ)」とM3「STOP & LOOK AROUND(サムの息子)」とはミッキー吉野(Key)の作曲で、ヴォーカルの主旋律はキャッチーではあるものの、どちらかと言えば全体にはロック的なカタルシスを求めている感じがある。

また、M4「DEAD END~LOVE FLOWERS PROPHECY(デッド・エンド〜ラヴ・フラワーズ・プロフェシー)」は、2曲を一曲にまとめたナンバーで前者がタケカワの作曲で、これも十分にキャッチーなのだが、ソウルミュージック感が若干前に出ている雰囲気ではある。それらの楽曲を経て辿り着くM5「THE LAST HOUR(ラスト・アワー)」が、これまたメロディアス。M1とは違って、こちらはロックバンドのサウンドではあって、やや重めでありつつ、サイケデリックさも加味されてはいるものの、唱歌のような大らかさというか、記憶の奥底に訴えかけてくるような本能的な親しみやすさがあるように思う。それをPaul McCartney的と形容する人もいるようだ。いずれにしても、このM5はアナログ盤で言えばA面の終わり(本作が発表された時は当然LP盤しかなかった)。M1で始まりM5で終わるというのは、否応なしに、ゴダイゴの持つメロディーラインの大衆性を感じさせるところである。

B面は特にそれが分かりやすい。M6「PANIC~IMAGES(パニック〜イメージ)」は、これも2曲を一曲にまとめたナンバーで、M4以上に“ニコイチ”感が強い。前者が吉野、後者がタケカワの作曲で、ハードロックからフォークソングに展開するような組曲的な作りなので、余計に両者が作るメロディーの質の違いがはっきりと分かって面白い。前半(つまり「PANIC」)はサイケでありハードロックであり…ということはプログレ的というか、ある種、実験的なサウンドが放たれる一方で、後半そこから一転、いきなりと言っていいほどにアコースティックギターの音色に乗ったCarpentersのような美麗なメロディーが飛び出す。キレのいいリズムとギターのカッティングが心地良いM7「UNDER UNDERGROUND(アンダー・アンダーグラウンド)」は、Steve Fox(Ba)のヴォーカルも入ってファンクサウンドが前に出ているからか、そこまで歌の主旋律に耳が取られない感じではあるが、続くM8「A FACE IN THE CROWD(孤独な面影)」で、再び柔らかくも力強いメロディーラインを聴かせてくれる。

M9「(CRIME IS) THE SIGN OF THE TIMES(血塗られた街)」はキャッチーはキャッチーだが、大らかさ柔らかさは薄く、本作のタケカワ作曲ナンバーでは唯一印象が異なる感じ。M9は中盤くらいから変拍子的なリフレインにリバース音が重なったり、シャウトが入ったり、かと思えば、ドラムソロが続いたりと、プログレッシブというか、どこかインスト的な要素もあるので、歌が目立たないのは止む無し(?)といったところだろうか。ラストのM10「MIKUNI(御国)」は吉野が作曲したドラマチックなミディアムバラード。これも緩やかで大らかなイメージではあるが、明らかにタケカワのナンバーとは雰囲気が異なる。さっきPaul McCartneyの名前を挙げたので、こちらをJohn Lennon的とするのは安易ではあろうが、そんな違いはあるのかもしれない。まぁ、それは冗談半分としても、M2もそうだったのだが、少なくとも本作での吉野メロディーはブラックミュージックのフィーリングが強いかもしれない。一方で、タケカワの旋律はクラシカルというか古典的というか、いい意味でルーツや背景を感じさせないものではあろう。どちらが良いとか悪いとかではなく、タケカワの旋律のほうが大衆的とは言えるだろう。それは汎用性にもつながっていく。前述したのちのゴダイゴのヒット曲は全てタケカワが手掛けたものだ。その萌芽は確実に『DEAD END』にあり、それは今もはっきりと確認することができる。

OKMusic編集部

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