『ロング・グッドバイ』(発売元:20世紀スタジオ)

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『ロング・グッドバイ』その3:杉作J
太郎のDVDレンタル屋の棚に残したい
100本の映画…連載4

杉作J太郎の

DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画
2本目その3・『ロング・グッドバイ』 ロマンポルノを初めて見たのは高校三年の夏休み、ひとり旅先の東京荻窪でだった。
 いま思えばとんだ「いなかっぺ大将」だが私は下駄を履いて生まれて初めてのひとり旅に出たのだ。
 1973年にアメリカで公開されたアメリカ映画『ロング・グッドバイ』を私が見るのはそれから5、6年後である。
 東京世田谷でひとり暮らしをしながら漫画の原稿料でなんとか生活できるようになった頃だった。
 漫画の原稿料でビデオデッキを買った。ビデオテープは高かったが三倍速だと6時間録画ができた。録画してある番組を見ながら、というよりもつけっぱなしで音だけ聞きながら六畳の部屋で夜通し漫画を描いていた。その頃はテレビの放送が朝まであるのは週末だけで平日は深夜1時か2時に放送が終わっていた。放送が終わった後、ラジオを聞くこともあったが毎晩面白いラジオがあるわけでもなかったし、逆に面白いラジオは面白すぎて漫画を描くペンが止まってしまった。
 その頃、私の漫画はかなり細かく描きこんだ。雑に描くときもあったがそれは原稿料や編集者との人間関係が反映された。新人の分際で図々しい話ではあるがロボットではなく生身の人間である。気乗りしない仕事に全身全霊で臨むのは難しい。
 気乗りする作品のときは描きこんでいた。町の風景などは歩き回って(いわゆるロケハン)これは、と思える町並みを写真に撮り、紙焼きしたその写真を見ながらGペンで夜通し描いていた。そのお供に録画してある番組というのはたいへんありがたかった。
 それにしても細かく描いていた。三分の一ページぐらいのコマを二日ぐらいかけて描くときもあった。原稿料、労賃としてはまったく採算がとれない。実際、生活していくのがギリギリというか、お手上げ寸前の生活が続いていた。そんなある日、平凡パンチでコラムの連載がスタートする。週刊だったので原稿料が月に4、5回入った。一気に生活水準はアップした。実際、当時のマガジンハウスの原稿料は業界では超トップの高額で、別に私はそれを願っていたわけでも狙っていたわけでも持ち込んだわけでもないが、ま、タイミングがよかったのだ。それと私が二度目の持ち込みで採用された月刊漫画ガロの作家が平凡パンチに集結していた。武智京太郎時代の平凡パンチは画期的なまでにガロ寄りだったのである。
 話を戻すと、その頃、私は別にこれと決めた番組でなくても録画していた。それを夜中に漫画描きながら見る、聞くため。そこで出会ったのが『ロング・グッドバイ』だった。主演のエリオット・グールドを知っていた程度で、原作は学生時代に文庫本を買いはしたが読みかけてすぐやめた。要するにつまらなく思えたのである。
 録画した『ロング・グッドバイ』は吹き替えしてあり、エリオット・グールドの声を森川公也がやっていた。
 話はなんかたいしたことのない感じだった。耳だけで聞きながらたまに画面を見る、程度だから最初から理解する気も鑑賞する気もないのだ。作品に対してはたいへん失礼な話だが主目的はペンを持つ手を動かすことであった。
 この項、続きます。
『ロング・グッドバイ』(1973年・ユナイト
出演/エリオット・グールド、ニーナ・ヴァン・バラント、マーク・ライデル、ヘンリー・ギブソン、デビッド・キャラダイン、アーノルド・シュワルツェネッガー、スターリング・ヘイドン
脚本/リイ・ブラケット
撮影/ヴィリモス・スィグモント
音楽/ジョン・ウィリアムス
監督/ロバート・アルトマン
(この項、つづく)
<隔週金曜日掲載>
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【杉作J太郎:プロフィール】
すぎさく・じぇいたろう
漫画家。愛媛県松山市出身。自身が局長を務める(男の墓場改め)狼の墓場プロダクション発行のメルマガ、現代芸術マガジンは週2回更新中。著書に『応答せよ巨大ロボット、ジェノバ』『杉作J太郎が考えたこと』など。
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