Subway Daydream、ポップに放出する
男女4人バンドの音楽的ルーツとはー
ー初の全員インタビューで解剖

双子の兄弟、藤島裕斗(Gt)と雅斗(Gt.Vo)、そして中学からの幼馴染のたまみ(Vo)とKana(Dr)で結成されたバンド、Subway Daydream。同い年のメンバーが大学4年の時に結成し、結成直後に制作した「Twilight」が音楽感度の高い関係者やリスナーの間で話題となった。4月28日(水)には海外アーティストのダイナソーJr.、クラウド・ナッシングス、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート、プライマル・スクリームなどあらゆる音楽に影響を受けて制作された初の全国流通盤EP「BORN」をリリース。4人揃ってのインタビューはこれが初めてだそうだ。現在物凄いスピードでシーンを駆け上がっている彼らを解剖する。
Subway Daydream - 1st EP「BORN」 Trailer
ーー裕斗さんと雅斗さんは双子ですよね。ということは音楽的ルーツも似ていますか?
裕斗:そうですね。音楽的ルーツも、音楽にハマったキッカケも、今好きな音楽も一緒です。
ーー昔は家でSMAPをよく聴いていたとお聞きしました。
裕斗:母親がSMAPの中居くんが好きだったので、お腹の中にいる時からSMAPを聴いていました(笑)。
雅斗:なので記憶にある中で、最初にいい曲だなと思ったのはSMAPです。
裕斗:家ではSMAP以外の曲を聴いた記憶がほぼないですね(笑)。父親がクラシック音楽をやっていたので、クラシックのテレビ番組も家で流れていましたが、基本はSMAPだけです。
ーーなるほど。そこからおふたりがバンドサウンドを好きになっていったキッカケはどのようなものでしょうか?
裕斗:僕たち双子の上に兄がいるんですけど、その兄がBUMP OF CHICKENを聴いていて、そこからBUMP OF CHIKENやRADWIMPSを聴き始めました。小学校5年生くらいの時ですね。でも僕たち双子がバンドによりハマるキッカケになったのはフジファブリックなんです。家で『スカパー!』を契約していたので、スペースシャワーTVなどの音楽チャンネルを見るようになったんです。そこでたまたまフジファブリックの「銀河」を見てハマり、アルバムを買いに行ったんです。
雅斗:それが中学1年生の時なので、2人が一番最初にハマったロックバンドはフジファブリックですね。
フジファブリック / 銀河
ーーボーカルのたまみさんとドラムのKanaさんは、どんな音楽を聴いていましたか?
たまみ:一番古い記憶は父親が車の中で流していた音楽ですね。童謡を聴きながらドライブしていました。
一同:車の中で童謡(笑)!
たまみ:母親が声楽を勉強していて音楽の道を目指していたんです。それで「歌が下手な人の曲は聴かせない」と言われていました。バンドはあまり聴かなかったですね。バンドをしっかり聴き始めたのは大学生になってからです。アコースティックなものをやりたくて軽音サークルに入ったのですが、そのサークルではロックバンドをやっている人しかいなかったんです。その影響でELLEGARDENなどのバンドを聴くようになりました。
Kana:私は中学、高校の頃は邦楽ロックを聴いていました。日本のバンドが影響を受けたバンドを聴きたいという流れで、海外のバンドも聴き始めましたね。
裕斗:僕たち兄弟もKanaちゃんと同じ流れですね。フジファブリックからロックバンドにハマり、みんなが聴いていない音楽をもっと聴きたいと音楽に対する探究心が出てきました。中学生の頃は日本のロックバンドを聴き漁っていて、中学3年生の時には、日本のバンドを全部聴き尽くしたなと思うようになりました。
一同:ハハハ(笑)。
Subway Daydream
裕斗:もちろん今思うと全くそんなことはないんですが(笑)。その時に「ロックの名盤500」みたいなディスクガイドを買い、色々聴き始めたんです。で、ある時ザ・キュアーの「Friday I’ m In Love」を聴いた時に、曲のイントロがスピッツの「群青」に似ていると感じたんです。
ーー確かに似ていますよね。
裕斗:そこから日本のバンドのルーツや影響を探る形で、海外のバンドのディスクガイドを片っ端から聴いていましたね。「この曲はくるりのあの曲に似てる!」みたいな発見を兄弟で重ねていきました。
雅斗:中学3年生の時に、叔父さんの家のベッドの下で使っていないギターを2人で発見して、叔父さんにお願いしてそれをもらったんです。2人で貸しあってギターの練習をしてはいたのですが、まだどちらもバンドを組んでいなくて。
ーーKanaさんとたまみさんはいつ頃から音楽を始めたのですか?
Kana:私は中学生の時にドラムを始めて、高校生の時にはネットの掲示板でバンドのメンバーを募集しているのを見つけて、サポートで行っていました。ただメンバーが固定しているバンドや、自分が好きな感じの音楽が出来るバンドはなかなか見つかりませんでした。
たまみ:私は母親の影響もあって、声楽の勉強をしていました。オペラみたいなものもしていましたね。
Kana:たまみとはよく一緒にカラオケに行っていました。大学でたまみがギターを始めたので、2人でスタジオに行って音を合わせていましたね。
Subway Daydream
ーーそこからSubway Daydreamに向かっていくと。
裕斗:そうですね。僕たち兄弟もそうですが、たまみちゃんとKanaも何かやりたいなというのがあったみたいで。僕とKanaはバイトが一緒で、話している時に「一緒にバンドやる?」という話になりました。
雅斗:それが2019年くらいですね。大学4年生の冬に初めて集まりました。
裕斗:大学4年生での結成は珍しいですよね。軽音サークルとかだと解散しちゃうタイミングですし。
Subway Daydream
ーー裕斗さんと雅斗さんは、はじめてたまみさんの声を聴いた時にどう思いました?
裕斗:感動しました。元々はKanaと雅斗と、スネイル・メイルみたいなバンドをやりたいねと話していたんですが、たまみちゃんの歌声を聴いて、もっと彼女の声に合うポップな曲にしたいなと思い方向性を変えました。
たまみ:初めて聞きました。
裕斗:最初に出来た曲が2020年6月に自主音源でリリースした「Twilight」なんですけど、これはたまみちゃんの声を聴く前に作っていたので、Subway Daydreamの曲の中では少し暗めのサウンドなんですね。でも、たまみちゃんの声を聴いてアレンジなども変えていきました。
Subway Daydream / Twilight
ーー「Twilight」といえば自主制作としては異例のヒットになりましたね。
裕斗:バンドをやるならオリジナル曲を書こうとなり、僕が作って2020年の年明けくらいにメンバーに聴かせました。そこから一緒にアレンジを詰めて、レコーディングをしました。最初に出来た曲だったんで、その時点ではバンドとしての持ち曲がこの「Twilight」しかありませんでした。5〜6曲作ってからまとめてレコーディングして世に出すバンドが多いと思うんですけど、でも2、3回スタジオで演奏してみて手応えがあったので、持ち曲を溜める前にレコーディングして1回形にしたいと思ったんです。
雅斗:とにかく早く「Twilight」を形にしたかったですね。
ーーレコーディングした後、自分たちで「Twilight」を聴いた時はどうでしたか?
一同:ヤバかったですね(笑)。
雅斗:レコーディングし終わった後に、ご飯を食べに行って、それぞれイヤホンで音源を聴きました。
Kana:4人でいるのに全員イヤホンをつけて聴きました(笑)。みんなで「ヤバイ、ヤバイ」と言いながら。
裕斗:「Twilight」が出来たことによってみんなスイッチが入りましたね。それまでは遊びの延長線上みたいなところもあったんですけど、このバンドをしっかりやっていこうという気持ちに変わりました。
Subway Daydream
―ー「Twilight」のリリースから色々な事が一気に動いていますよね。リリースから1年も経たずに、初の全国流通盤EP「BORN」が4月28日にリリースです。このEPはどのように制作しましたか?
裕斗:いい意味で曲の方向性をバラバラにしたいなと思っていました。聴く人が一番好きな曲が変わる、みたいな感じの作品にしたいなと。でもブレすぎないように。絶妙なバランスは意識しました。あと、今回収録曲それぞれ、明確なイメージを持っています。
Subway Daydream / FREEWAY
―ー例えば?
裕斗:まず1曲目の「Freeway」のギターの音色はダイナソーJr.で、ドラムはクラウド・ナッシングスのように、パワー系やパンクよりのオルタナみたいな爽快なものをイメージしました。2曲目の「Teddy Bear」はライドの中でも初期の、ドリーミーすぎずパンクの要素が強いシューゲイザー意識しています。他にもザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートのキラキラした感じもイメージしています。
Subway Daydream / Teddy Bear
―ーなるほど。
裕斗:「Dodgeball Love」は、いいスカスカ感を狙いたくて作りました。最初はピクシーズをイメージして作りました。リズムギターは「ペイヴメントみたいないい脱力感で弾いて」と雅斗に言いました。「Fallin’ Orange」はプライマル・スクリームをイメージしています。プライマル・スクリームはアルバムによって全然サウンドが違うと思うんですけど、僕はファースト・アルバムの『Sonic Flower Groove』が凄く好きで、このアルバムに入ってそうな曲を作りたいなと思って作りました。
雅斗:デモの音源のタイトルが「Sonic Flower Groove」でしたからね(笑)。
裕斗:「Canna」は元々ライブで結構演奏している曲なんですけど、ライブバージョンと今回EPに入っているバージョンは全然雰囲気が違うんです。ライブのアレンジはザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートみたいなイメージがあるんですけど、アルバム収録時は、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのアルバム『Loveless』みたいな違うムードでやりました。轟音の気持ちよさ、ノイズポップみたいな感じを意識しました。
Subway Daydream / Fallin' Orange
ーー最後の曲は「Ballad」です。この曲はどういうイメージでしょうか?
裕斗:この曲は最初はもうちょっと静かな曲だったんです。フィービー・ブリジャーズの「Motion Sickness」みたいな曲を作りたいなと思っていたんですけど、スタジオで合わせてみると違和感があったので、変形していきました。スマッシング・パンプキンズのアルバム『Siamese Dream』が好きなんですが、途中からこちらをイメージして作っていきましたね。
―ー基本的に曲は裕斗さんが全部作っているんですか?
雅斗:そうですね。裕斗がこういう曲をやりたいというデモをメンバーに何曲か持ってくるんです。
Kana:全曲そうですね。それにメンバーが反応していく感じです。
Subway Daydream
ーータイトルの「BORN」についても教えてください。デビューEPだからだと思いますが、他にも込められた意味はありますか?
裕斗:インパクトがある名前で、英語のタイトルにしたかったんです。デビュー作なので「I WAS BORN」とかも考えたんですが、1単語の方がキャッチーかなと思い「BORN」にしました。あとオルタナの名盤には赤ちゃんのジャケットが結構多いので、赤ちゃんのジャケットにしたいなというのが明確にありました。ニルヴァーナの「Nevermind」とか、セバドーの「Bakesale」とか。なのでデビューEPのジャケットは赤ちゃんの何かにしたいなと思っていました。
Subway Daydream
―ー最後にこれからどのようなバンドになっていきたいか教えてください。
Kana:いい曲を作って、日本だけでなく海外でもライブをしたいですね。アメリカで毎年開催されている大規模フェスの『SXSW』に出たいです。あとアジアのインディーポップが好きなので、アジア圏でもライブをしたいですね。
たまみ:私はバンドを長く続けていきたいです。おじちゃんおばちゃんになっても。
雅斗:わかる人にはわかるというスタンスではなく、色んな人に聴いてもらえるようなバンドになりたいですね。オルタナティブなものをポップに変換していくみたいな。
裕斗:僕は言う事ないです。3人に全部言われました(笑)。
―ー想いは一緒ですね。
裕斗:スピッツのように長くバンドを続けていきたいですね。
Subway Daydream
取材・文=竹内啄也 撮影=日吉“JP”純平

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