オルタナティヴや
ブリットポップの時代に、
アメリカ南部に答えを求めた
プライマル・スクリームの
『ギブ・アウト・バット
・ドント・ギブ・アップ』
本作『ギブ・アウト・バット
・ドント・ギブ・アップ』について
そして、何より特筆すべきは、本作が普遍的な名曲揃いであることだ。70sのクラプトンやストーンズと同じように、彼らもスワンプロックやサザンロックをリスペクトしながら優れたオリジナル曲を生み出しているのだが、本作でのギレスピー/イネス/ヤングのソングライティングは冴え渡っている。「クライ・マイセルフ・ブラインド」「ビッグ・ジェット・プレーン」「サッド・アンド・ブルー」「アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー」などは甲乙付け難い名曲である。
ギレスピーが影響を受けたアーティストの曲を彼自身がコンパイルした2015年の『ボビー・ギレスピーが好きな曲を選んだら、うつろな日曜の朝みたいになっちまった…(原題:Bobby Gillespie Presents Sunday Mornin’ Comin’ Down)』には、ジーン・クラーク、グラム・パーソンズ、ウィリー・ネルソン、クリス・クリストファーソンといったオルタナ世代とは思えないマニアックなセレクトをしていて、アメリカン・ルーツが大好きであることがよく分かった。
おそらく彼はデラニー&ボニーのスタックスからのデビューアルバム『ホーム』あたりをイメージして本作を作ったのだと思う。デラボニにしても、スタックスで録音する初の白人グループであり、スタックス側からすると当時は彼らがオルタナティヴな存在(今でこそクラシックロックの大御所)であったことを考えると、本作と『ホーム』には似た部分が少なくない。
『スクリーマデリカ』的なサウンドを求めている若いリスナーにとって、本作は物足りないかもしれない。しかし、サザンロックやスワンプロックが好きな中年以上のリスナーにとっては、本作は長い間付き合っていけるルーツロックの名盤だと思う。
TEXT:河崎直人