フールズ・ゴールドの2ndアルバム
『ミスター・ラッキー』は
歌も演奏も文句なしの傑作
本作『ミスター・ラッキー』について
オルスンの原価意識の低さによって、参加メンバーだけで制作予算をオーバーしてしまい、結局マスターテープはアリスタからコロンビアに売りに出されることになった。コロンビアも多額の出費で、プロモーション費用が捻出できないまま本作はリリースされたものの、予算削減のためメンバーはケリーとヘンソンの2人組になってしまうのだ(但し、ツアーでは4人で活動)。売れてるプロデューサーの勝手気ままなふるまいで、フールズ・ゴールドは宣伝もされず大迷惑を被ることになってしまったが、アルバムの内容は1stをはるかに凌ぐ傑作となった。ケリーとヘンソンのソングライティングは冴え渡り、全ての曲(収録曲は全部で9曲)が名曲だと言い切ってしまおう。
サウンド的にはウエストコーストロック的な部分もあるが、アレンジにはオルスンやフォスターが関わっているだけにAORテイストが大きい。しかし、実はケリー&ヘンソンのソフトロック的なソングライティングにはAOR的なアレンジが最も適していると言えるのではないだろうか。アルバム全体を通して、ジェフ・ポーカロのドラムとフォスター&ペイチの鍵盤プレイが歌伴であるにもかかわらずロックしまくっているのが爽快この上ない。これほどアグレッシヴな彼らのプレイは、ライヴ以外ではなかなか聴けない貴重なものだ。
2枚しかないフールズ・ゴールドのアルバムはどちらの作品も傑作であり、なぜか日本が世界に先駆けてCD化している。ということは、日本には彼らのファンが少なからずいるのかもしれない…。
TEXT:河崎直人