紅ゆずると横山由依が喜劇の笑いをジ
ャズにのせて~熱海五郎一座の新橋演
舞場公演『Jazzyなさくらは裏切りの
ハーモニー』取材会&フォトコールレ
ポート

三宅裕司率いる熱海五郎一座が、2021年5月30日(日)、新橋演舞場シリーズ第7弾 東京喜劇『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー〜日米爆笑保障条約〜』の初日を迎えた。ゲスト俳優は、宝塚歌劇団OGで、元星組トップスターの紅ゆずると、AKB48の横山由依。出演は、構成・演出も担当する三宅のほか、渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太、東貴博(Wキャスト)、深沢邦之(Wキャスト)、さらに劇団SETも登場する。
熱海五郎一座『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~』メインビジュアル
前日の5月30日(土)、新橋演舞場で、取材会とフォトコールが行われた。本作の見どころを、キャストのコメントと舞台写真とともにレポートする。
※一部、演出のネタバレとなる舞台写真を含みます。
■太平洋戦争でアメリカが敗戦!? の物語
舞台は、太平洋戦争も終盤のサンフランシスコのジャズバーからはじまる。日系アメリカ人のジャズバンド「ツインズ」が、ウッドベース(三宅)、ジャズギター(石井)、テナーサックス(小倉)、トロンボーン(昇太)、ドラム(横山)の演奏を披露。そこへ男が大慌てで飛び込んできて、ラジオを聞くよう促す。ラジオから流れてきたのは、アメリカの“敗戦”を知らせる大統領声明だった……。
本作は、アメリカが敗戦し日本が勝ったという架空の設定の物語となる。ステージ上のメンバーによる生演奏は冒頭の見どころのひとつだ。オープニングは、これが熱海五郎一座? と驚くカッコよさ。しかし、バンドメンバーたちが言葉を交わし始めると、安定の(最高の)くだらなさで軽い笑いを連発。横山もそれに溶け込み、ボケたおす。
横山も、ベテラン勢に溶け込み笑いをつなぐ。
メンバーたちが時代の流れに不安を感じる中、場面は、夕暮れの街角へ。ラジオ局のオーナーでプロデューサーのコワレ・カケーノ(東)と、バンドメンバーのロン・カワタ(三宅)が、大統領声明について話をしている。そこへバンドマスターのチャーリー・ハガ(小倉)がやってきて、日本の要人の歓迎セレモニーで演奏をしてほしいと依頼があったことを知らせるのだった……。
東は、うっかりマスクをしたまま登場。演技の中でマスクを外すハプニングが笑いを起こす。しかし喜劇の職人集団、熱海五郎一座では、アドリブに見える演出も脚本通りのことが多々ある。これが“ハプニング”だったかどうかは、新橋演舞場で確認してほしい。いずれにしても、出演者たちが、いかに徹底した対策で稽古をしてきたかをうかがわせる一幕だった。
■言葉と音楽のギャグを楽しんで
会見で三宅は、「この1年で笑いの数は多くなりました。言葉のギャグだけでなく、音楽的なギャグも楽しんでいただけるのでは。当初は5か月の稽古で本番でした。それが1年5か月の稽古となり、言い訳ができなくなりました。プロの演奏と比べれば全然及びませんが、60歳を過ぎたこの一座がよくここまでやったなと思っていただければ」と挨拶をした。
後列左より東貴博、小倉久寛、ラサール石井、春風亭昇太、深沢邦之。前列左より、三宅裕司、横山由依、紅ゆずる、渡辺正行。
石井は「この1年で、隙間なく笑いが入るだけ入りました。そしてリーダー(渡辺)のギャグを削るだけ削りましたから、間違いなく面白いです!」と自信をみせる。また、ふだんは時事ネタをふんだんに取り込む一座だが、今作では「コロナやオリンピックはネタにしていません。そこがおしゃれで、品があります」とコメント。東京喜劇の粋な側面をアピールした。
昨年、公演が延期した際は、ギターの購入費が経費で落ちるかを心配したと明かすと、続いて小倉も、昔から持っていたサックスの修理に10万円かかったとぼやきいた。小倉は無事の開幕に「サックスが喜んでいます」とうれしそうに語った。
ゴージャスな舞台で、石井と小倉が続けて経費の話。これにしびれを切らしたのは、ふだん1万円札をチラつかせている東だった。「お金の話ばかりじゃないですか!」とツッコミをいれて盛り上げていた。感染症対策を徹底した中での稽古であったことをふり返り、「物凄い緊張感もありましたが、やはりこのメンバーが集まると楽しいですね。そして稽古を終え、明日初日を迎えられるのは本当に楽しみです」と喜びを語った。
昇太は、これまでもトロンボーンを吹く経験はあったものの、大きな舞台で披露するためではなかったようで「そっと吹いてました」と明かす。自信を問われると、思わず声がうわずり、笑いを誘う。今回使用するトロンボーンは、師匠の春風亭柳昇が所有していたものなのだそう。「たぶん師匠よりは上手いはず。がんばってやりたいと思います!」と意気込みを語った。
深沢邦之は、東とダブルキャストで、ラジオ局のオーナーの役どころ。「ひさしぶりに今、皆さんの顔を拝見しました」と語り、稽古期間中もマスク着用を徹底していたことを振り返る。マスクのままでも意識が向いたのは、共演者たちの目。「紅ゆずるさんと横山由依さんは、なんて目が澄んでいるんだろう! 他のメンバーとは目の色が違う! と感動しました。それだけでも良い稽古だなと思えました!」とコメント。
「リーダー」こと渡辺正行は、(本作とはまったく関係のない)剣道で六段に合格したことを報告。「非常にのっております!」と一歩前に出て、「まさにお芝居も剣道も、切れ味抜群です!」とドヤ顔を見せる。安定のスベリ芸に、一瞬の間をおいてから爆笑がおこると、渡辺自身も笑いながら「私からは以上です!」と列に戻っていた。
横山にとって、はじめての新橋演舞場。
「すてきな劇場だなと思いながら稽古をしてきました。まだ(客席に人がいない)赤いシートの状態しか見たことがありません。お客様が入られた時、どんな景色になるんだろうなと想像を膨らませています。お芝居だけでなく、バンド演奏の緊張感もあるのは初めてです」
劇中のバンドは、横山によるジャズドラムのビートにあわせて演奏する。三宅が「由依ちゃんのドラムのリズムが、バンドの要です」とコメントすると、横山は「そんなプレッシャーを!」とリアクション。一同を和ませつつ「がんばります!」と前向きな様子。
紅は今回、女性役での出演。宝塚時代の男役と違い、軍服のジャケットがAラインで仕立てられている。
「このAラインに女性らしさを出していければ。宝塚退団後の初舞台が、熱海五郎一座さん。こんな光栄なことはありません。毎公演、かみしめながら思い切りギャグを飛ばしていきたいと思います!」
■アメリカを日本化!?
続く第2場は、サンフランシスコの空港。日本の要人をのせた飛行機が着陸する。バンドメンバーたちが見守る中、タラップを降りてきたのは、陸軍元帥(渡辺)。その部下の海軍中佐(紅)も登場。
彼らは、アメリカで英語を禁止する等、“アメリカ日本化計画”を掲げ、日本文化を押し付けようとするのだった……。日本軍の“アメリカ日本化計画”が、どのような展開をみせるのか。バンドメンバーたちの運命も気になる中、フォトコールは終了した。
個性強めの海軍中佐。
熱海五郎一座にとって、新橋演舞場で7回目の公演。第1弾では沢口靖子と朝海ひかる、第2弾では大地真央など、豪華なゲストに迎えてきた。そして、笑いを主戦場にしてきた一座のメンバーたちが、ゲストの豪華さからは考えられないほどの、くだらないギャグをつなぎ続け、そのギャップ、骨子となるドラマ、さらに劇団SETの音楽やダンスで楽しませる。
紅ゆずると劇団SET
今回も出演者たちによる生バンドだけでなく、ダンスシーンは見どころとなる。ジャズバーや空港の大きなセットや、空気を震わせ伝わってくるバンド演奏の迫力は、生の観劇だからこそ体感できるもの。続きが楽しみになる、魅力いっぱいのフォトコールだった。
■紅、横山の明るい笑いが演舞場を満たす
紅は、大まじめな演技で爆笑を起こし、喜劇のセンスを見せつけた。宝塚という大きな舞台で培われたオーラも、惜しみなく発揮。ダンスでは、カッコいいのにおかしくて、おかしいのに美しい、絶妙なバランス感覚で楽しませる。花道を行くシーンは、振り切った演技に笑わされると同時に、「その脚の長さだと、揚幕までその歩数で行けるんだ!」という驚きもあった。初参加でありながら、相性の良さをうかがわせる、紅だからこその笑いに溢れていた。
カッコよさと美しさとおかしみのある、元トップスターの贅沢な笑い! 
横山は、一座やSETの劇団員たちに馴染みながらも、自身のシーンではパッとスポットライトがさしたかのような輝きをみせる。往年のネタを彷彿とさせるギャグも、横山の澄んだ声とまっすぐな演技によって、明るく新鮮な笑いとなっていた。紅、横山が、ベテランぞろいの一座を信頼し、なにより舞台を楽しんでいることが伝わってくる。
思いきりの良い演技が明るい笑いに!
取材会を三宅は、次のようなコメントで結んだ。
「出演者一人ひとりにあてて書かれた舞台です。去年中止になった時、いつか必ず上演しようと思いましたが、他のメンバーでやるつもりは全くありませんでした。そして1年後、この全員が、そんなにスケジュールが開いている人たちだったとは、思いませんでした(一同爆笑)。喜劇は役者、スタッフだけで作れるものではないと思っています。お客さんの笑いの間も予測して演じます。笑いの数により、笑いも跳ねます。たくさんのお客様に見ていただきたい作品に仕上がりました」
熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第7弾、東京喜劇『Jazzy(じゃじぃ)なさくらは裏切りのハーモニー ~日米爆笑保障条約~』は、新橋演舞場で、2021年5月30日(日)~6月27日(日)までの上演。

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