東京事変の
1st『教育』が発散している
ロックバンドらしさ、
デビュー盤らしさ
バンドであることの愉悦
《自分の世界を飛び出す勇気を持てた曉に/今迄吐いた下らぬ嘘を美化して下さる?/でも多分無理 疲労が超えてる》《他人の期待を受け止める意志を持てた曉に/貫いてきた下らぬ倫理を認めて下さる?/また同じこと 繰り返している》《大嫌いです/全部が厭です/賞讃したがっているあなたの嘘吐き/今夜以降こんな仕様も無い女が生き存らえるなんてあられもないわ!/…どうぞ殺って》(M3「入水願い」)。
《嗚呼もう如何にかなるかも知れない/答に気付いても未だお互い微笑み合う真昼/紅いネイル!だって真実等に興味は無い…下品な芝居で定刻/果敢ない想いを真っ白に隠して置いて/嗚呼もう如何にかなる途中の自分が疎ましい/然様(さよう)なら/お互い似た答の筈/「出遭ってしまったんだ。」》(M4「遭難」)。
《生を受けた此の時代の歯車と/今夜こそやっと歯が噛み合いそうです》《抜け出そう行かなきゃ/今日は何だか違うの/出掛けよう時間がない/実際の季節に期待して》《こよなく愉しいよ/今日は何だか違うの/少しも恐くない/実際の祭に魅了され》《全てが初めて/今日がもう来ないことを知ったのも初めて/林檎飴が紅い》《そして私は生きている!/今日現在を歩いているんだ/何も無い私だって融け合っているのさ》(M10「御祭騒ぎ」)。
《内緒の地図は交差点を描いて 鮮やかに広がっていく/快活な空 街路樹がコラージュ切抜合成 不確かな明日を慶んでいる》《誰かが勝てば誰かが負ける浮世は忙しい 何一つ容易い事ないの/だけど思わず笑みが零れる私は仕合わせ/現在はもっとよく分かっている》(M11「母国情緒」)。
《手を繋いで居て/悲しみで一杯の情景を握り返して/この結び目で世界を護るのさ》《手を繋いで居て/喜びで一杯の球体を探り直して/この結び目が世界に溢れたら》《ただ同じときに遇えた幸運を繋ぎたいだけ/この結び目で世界を護るのさ/未来を造るのさ》(M12「夢のあと」)
自分でピックアップしておいて深読みがすぎると思わなくもないけれど、M10「御祭騒ぎ」からあふれ出ている“ワクワク感”みたいなものは、結成したばかりの東京事変への期待を重ねることができて、やはりデビューアルバムらしさを感じるのを禁じ得ない。
TEXT:帆苅智之