チャーリー・ダニエルズ・バンドの
5thアルバム『ハイ・ロンサム』は
ツインリードギターが炸裂する
王道のサザンロック作品

チャーリー・ダニエルズ・バンド

74年にグループ名義として初の『ウェイ・ダウン・ヤンダー』(’74)をリリースし、ハードなツインリードとツインドラムをメインに、オールマンそっくりのサウンド(ダニエルズはスライドギターも巧い)にダニエルズのカントリーソウルを加味したサウンドを披露する。ただ、この時点ではドラマーとベーシストが流動的で、グループのまとまりに欠けていたのも事実である。余談であるが、74年にダニエルズはライフワークのひとつであるボランティア・ジャムをスタートさせていて、45年間にも及ぶ全米屈指のイベントとなった。

ダニエルズ(Gu)、トム・クレイン(Gu)、チャーリー・ヘイワード(Ba)、ジョエル・ディグレゴリオ(Key)、ドン・マレー(Dr)、フレッド・エドワーズ(Dr)の6人組としてパーマネントメンバーが揃うのはグループの4作目『サドル・トランプ』(’76)からとなる。このアルバムではこれまでよりリズムがタイトになり、ウェスタン・スウィングにもチャレンジするなど、各種ルーツ音楽をごった煮にしたそのサウンドは、チャーリー・ダニエルズ・バンドならではの雑食性が滲み出たスタイルとなっている。また、このアルバムからエピックレコードに移籍していて、以降エピックとは15年間あまりの付き合いとなる。

本作『ハイ・ロンサム』について

そして、『サドル・トランプ』と同じ76年にリリースされたのが本作『ハイ・ロンサム』である。カントリー寄りの前作と比べ、本作はツインリードギターに重点を置いたサザンロックの王道とも呼べる作品に仕上がっている。収録曲は全部で9曲。オールマンすら超えたのではないかと思わせるような1曲目の「ビリー・ザ・キッド」は、これまでの彼らとは違う重低音のサウンドに驚くばかりだが、ツインギターのよく練られたリフをはじめダニエルズとクレインのギターソロは完璧に近い仕上がりをみせる。

続く「キャロライナ」はディグレゴリオのチャック・リーヴェルばりのピアノが素晴らしい。ダニエルズのバンジョーもいいアクセントになっている。タイトルトラックの「ハイ・ロンサム」はボズ・スキャッグス版の「ローン・ミー・ア・ダイム」(アトランティックの『ボズ・スキャッグス』所収。デュアン・オールマンの最高のギタープレイが聴ける)を下敷きにしたナンバーで、途中インスト部分はオールマンの「エリザベス・リードの追憶」的な展開をみせる。ダニエルズのスライドはデュアン・オールマンみたいで実に巧い。

本作で一番カントリーっぽい「テネシー」は、オールマンというよりはマーシャル・タッカー・バンド風で、そのマーシャル・タッカーのトイ・コールドウェルがペダルスティールでゲスト参加。ダニエルズはフィドルも弾いている。

上記、本作の内容をかいつまんで紹介したが、チャーリー・ダニエルズ・バンドは本作以降も快調に飛ばし、79年の10thアルバム『ミリオン・マイル・リフレクションズ』が全米5位(カントリーチャートでは1位)となり、シングルカットされた「悪魔はジョージアへ(原題:The Charlie Daniels Band)」は全米3位(カントリーチャートでは1位)となった。このあたりから、ダニエルズはグループをカントリーへとシフトしていき、90年代初頭ぐらいまでコンサートの動員数は全米でもトップクラスという大成功を収めることになるのだが、僕は、サザンロックとがっぷり四つに組んだ本作『ハイ・ロンサム』こそ、ダニエルズの最高傑作だと考えている。

TEXT:河崎直人

アルバム『High Lonesome』1976年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. Billy the Kid
    • 2. Carolina
    • 3. High Lonesome
    • 4. Running With the Crowd
    • 5. Right Now Tennessee Blues
    • 6. Roll Mississippi
    • 7. Slow Song
    • 8. Tennessee
    • 9. Turned My Head Around
『High Lonesome』(’76)/Charlie Daniels Band

OKMusic編集部

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