切れ味鋭いファンクブルースで
新時代を築いた
ジェームス・コットン・バンドの
『100%コットン』

本作『100%コットン』について

『テイキング・ケア・オブ・ビジネス』のあと、全米ツアーを繰り返しながら着実に成長を続け、グループのメンバーを一新(マット・マーフィーを除く)し、ザ・ジェームス・コットン・バンド名義でブッダレコード(これまたポップス系のレーベル)と契約、74年にコットン一世一代の傑作である本作『100%コットン』をリリースすることとなる。収録曲は全部で10曲。ブルース系の音楽が好きで、かつ本作を初めて聴く人間にとっては全てが驚きの連続だろう。それぐらいの内容を持った作品である。

リリース当時、コットンは40歳前後で、強力なリズムセクションのふたり(ベースのチャールズ・カルミーズとドラムのケニー・ジョンソンは20代の若者たち)を起用、まったく新しいリズムを生み出している。もちろん、それはアレンジャーも務めるマーフィーのヴィジョンであり、スライ&ファミリー・ストーンやコールド・ブラッドなど、当時のサンフランシスコのファンクロックグループにインスパイアされたものだと思う。とにかく、よく訓練されたチームである。それは、1曲目の「ブギ・シング」を聴くだけで分かる。タイトルにブギとあるものの、ブギというよりはジェームス・コットン・バンドならではのストンプで、当時このアルバムを聴いてぶっ飛んだ経験のある音楽ファンは少なくない(かく言う僕もそうだ)。シンコペーションの効いたリズム、コットンのリズムの裏を刻むマウスハープ、サビでのコーラスなど、ブルースの新時代を切り開こうとするスタンスが窺える。「ブギ・シング」「ロケット88」「アイ・ドント・ノウ」「フィーヴァー」といったグループの代表曲や、ファンクブルースの「ワン・モア・マイル」「バーナー」まで、どの曲も自信にあふれた熱演になっている。

余談であるが、特に関西在住のブルースロックファンにとってジェームス・コットンは馴染み深い存在である。『8.8ロックデイ』(73年から関西で行なわれていたバンドコンテスト)の、77年大会で最優秀バンドとなった花伸(はなしん)はジェームス・コットン・バンドのコピーバンドであり、最優秀バンドに選ばれる前から関西のどのライブハウスに行っても満員御礼であった。それだけに、ジェームス・コットンの名前は知らずとも「ブギ・シング」「ロケット88」「アイ・ドント・ノウ」「フィーヴァー」など、本作に収録された多くのナンバーを知っているはずなのである。

ブッダからの2枚組ライヴ盤も忘れずに

このアルバムの後、ニューオーリンズでアラン・トゥーサンにプロデュースを依頼した『ハイ・エナジー』(’75)では作り込みすぎたような気もするが、76年にリリースされた2枚組ライヴ盤『ライヴ&オン・ザ・ムーブ』は、『100%コットン』をもっと強力にしたジェームス・コットン・バンドの最高の瞬間を収めた作品であり、現在ではブッダレコード3部作をセットにした安価なCDも出されているので、興味のある人はこの機会にぜひ聴いてみてください。

TEXT:河崎直人

アルバム『100% Cotton』1974年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.Boogie Thing
    • 2.One More Mile
    • 3.All Walks of Life
    • 4.Creepers Creeps Again
    • 5.Rockett 88
    • 6.How Long Can a Fool Go Wrong
    • 7.I Don T Know
    • 8.Burner
    • 9.'Fatuation
    • 10.Fever
『100% Cotton』(’74)/James Cotton Band

OKMusic編集部

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