宮野真守

宮野真守

【宮野真守 インタビュー】
一番伝えたいのは“今だからこそ
見れる夢を見ていこうよ”ということ

前作「透明」からわずか1カ月半で到着する新曲「Dream on」は、自身もメインキャストで出演するTVアニメ『うらみちお兄さん』のエンディングテーマ。コミカルなアニメ作品の奥底にあるシリアスなメッセージを宮野真守の音楽へと巧みに昇華させた、メロウでスタイリッシュなナンバーが“大人になった良い子たち”をやさしく包み込む。

大人が聴いた時にドキッとしたり、
懐かしく感じてくれたらいいな

新曲「Dream on」はとにかくメロウでお洒落なナンバーで、“コミカルな漫画を原作としたTVアニメのエンディングテーマが、こんなにカッコ良い曲!?”と一聴して衝撃が走りました。

オープニングテーマの「ABC体操」はキャラクターソングとして水樹奈々さんと一緒に担当しているのですが、そちらで明るくてコミカルな部分は十分出せているので、エンディングはノスタルジックなムードで対比を出してほしいというオーダーを、原作の久世岳先生からいただいたんです。実は『うらみちお兄さん』という作品の根底には、大人が抱える悩みみたいなところもテーマのひとつとしてあるんですよね。主人公のうらみちお兄さんも面白くはありつつも、子供たちに向かって教訓のように毒を吐いたりするんですが、それが大人からすると意外と的を得ていて共感できたりもするんです。なので、生きづらい世の中だけど生きていかなければいけないという、そんな大人になって分かる気持ちをやさしく包み込むような、そして子供の頃を懐かしむような気持ちになれるエンディングテーマにできればいいなと。さらに、それを宮野真守の音楽スタイルで表現しようということで、以前に心に染み入るメロウでグルービーな楽曲をstyさんと一緒に作ったので、同じ制作の流れで今回の曲も作れるんじゃないかと思い、楽曲制作をスタートしていきましたね。

それで今作はstyさんが作詞作曲を担当されているんですね。

そうです。styさんも原作のコミックスを読んで、作品の持つメッセージだったり雰囲気を加味して作ってくださった結果、曲の冒頭に学校の鐘のような音が入っていたりするんですよ。ちょっとだけ当時のファミコンっぽい音も入っていたりして、大人が聴いた時にドキッとしたり、懐かしく感じてくれたらいいなって。

歌詞を見ても《「そのままでいいんだ」》や《大丈夫》とか、人生に迷う人を安心させるようなメッセージがあって、まさしく包み込まれているような感覚になりました。

そうかもしれないですね。ただ、“言ってあげる”というよりも“共感してもらう”っていうイメージのほうが近いかもしれない。歌詞の中に《時間が作る大人のセオリー》って言葉がありますが、子供の頃に夢見ていたことはたいていうまくいかないっていうことを、大人になっていろんな経験をしていくたびに突きつけられていくじゃないですか。だけど、その培った経験があるからこそ、子供の頃より豊かに想像できるし、新たな何かを発見できる。昔に夢見ていたものとは違うかもしれないけど、また新しい、今だからこその夢が見られる…っていう、前向きなメッセージを届けたかったんです。そして、“それはもしかしたら前よりも素敵な夢なのかもしれないんだよ”という。

つまり、“Dream on”というタイトルは、かたちが変わっても夢は続いていくということ?

それもありますが、一番伝えたいのは“今だからこそ見ることのできる夢を見ていこうよ”ということですね。

なるほど。新しい夢は、今の自分をしっかり見据えることによって生まれてくるんだということですね。

そうですね。僕だって、例えば“あの人みたいにすごいパフォーマンスをしたいのに自分はできない”って気づいた瞬間、単に“できない”と諦めるんじゃなくて、“じゃあ、自分には何ができるのか?”というのを常に突き詰めていきます。それは歌に限らず、お芝居も同じです。才能やセンスはもちろん必要かもしれないですけど、やっぱり重要なのは技術だったりしますから、毎回さまざまなことに打ちのめされては頑張っていくの繰り返しで、今日までやってきたと思いますね。

それが分かっていても、なかなか“できないから諦める”から“じゃあ、何ができる?”に視点を変えられない人も多い中、宮野さんのストイックな精神力には毎度ながら感服させられます。

いやいや、生きていくのに必死なだけです(笑)。でも、これは自分の仕事をマイナスに言っているわけではなく、僕自身も子役時代に目指していたものはうまくいかなかったけれど、予期せぬ場所で声優のお仕事をいただけて、そこで新しい夢を見つけられたからなんですよね。“子供の頃に描いていた夢に破れた”みたいなことって、心に深く突き刺さるかもしれないけど、今いる場所で夢を見つけるほうがどれだけ大事かって、大人になると強く感じるんですよ。『うらみちお兄さん』でも、もともと体操選手だったうらみちお兄さんは怪我で競技からは引退してしまったけど、その経験があったからこそ今は子供番組の体操のお兄さんをやれていて、そこで子供の笑顔に癒されたりと素敵なものが見つかっていくんですよ。そもそも自分に何が向いてるかなんて、分かるようで分からないじゃないですか。そういう意味では『うらみちお兄さん』で描かれるメッセージにはすごく共感できますね。

そう言われてみると「Dream on」自体、作品のみならず、宮野さんご自身のバックグラウンドにもリンクする曲になっていますよね。styさんはそれも踏まえて作られたのかなと思ってしまうくらい。

それはどうだろう?(笑) でも、styさんって僕の心が透けて見えているかのごとく歌詞を書いてくださるんですよね。曲作りの上で、ちゃんと面と向かって言葉を交わして打ち合わせをしているのが大きいんでしょうけど、そこで出た何気ない言葉をすかさずメモってくれたりもして。同じ想いで歌詞を書いてくれるから、本当にいつも感動します。

こんなカッコ良い曲に、そんな深い想いやメッセージが押しつけがましくなく、あくまでも“さりげなく”込められているのが、また憎いんですよね。ヴォーカルも、いわゆる熱唱ではないじゃないですか。

真逆ですね。レコーディングでは限りなく小さい声の大きい声で歌ってます(笑)。ある意味、独り言のようなヴォーカルになっていて、それもstyさんと最近いろいろ試している歌い方なんですよ。以前に出した「Okay.」(2020年1月発売シングル「LAST DANCE」収録)もそうですね。

おかげで、よりチル感が際立って心地良い。

そうなんですよ。ボソッと窓辺で呟いている感じですね。
宮野真守
シングル「Dream on」

OKMusic編集部

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