『MARI & REDSTRIPES』からうかがう
日本のポップス職人、杉真理の求心力

『MARI & REDSTRIPES』('77)/MARI & REDSTRIPES

『MARI & REDSTRIPES』('77)/MARI & REDSTRIPES

6月23日、ビクターエンタテインメントの“マスターピース・コレクション~CITY POP名作選”の1作品として、杉真理のデビューアルバム『MARI & REDSTRIPES』がリマスタリングされ、「思い出の渦」のシングルバージョンを加えた『マリ・アンド・レッド・ストライプス+1』として再発された。今週はストレートにその『MARI & REDSTRIPES』を取り上げる。45年近くの長きに渡って、ソロでの活動はもちろんのこと、さまざまなユニットで活動してきた杉真理の原点とも言える本作。日本にポップスシーンの礎のひとつと言っても過言ではなかろう。

大学時代の音楽サークルが前身

MARI & REDSTRIPESは杉真理がプロミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせたバンドだ。ただ、そうは言っても、杉真理がソロになったのはMARI & REDSTRIPESが活動を休止したことに端を発して…とか、そういうことではなくーーいや、そうした側面が微妙にあったと言えばあったのだが、そもそもこのバンドの生い立ち、経歴は古今東西の“&”系バンド(?)とはちょっと違う。Paul McCartney & WingsやIggy Pop & The Stoogesのようにメインメンバーのネームバリューが必要だったからそれを前に出したというわけでもないし、Crosby, Stills, Nash & Youngのようにそれぞれが合わさってグループとなったということでもないらしい。Wikipediaには[大学時代に結成してライヴ活動やデモテープ作成などの活動をしていたバンド“ピープル”を杉のレコードデビュー時に名称変更したもの。実態は杉のソロ活動サポートメンバーであり、メンバーも流動的でバンドとしての一体性はなかった]とあることからすると、バンドではあるものの、杉を中心とした“プロジェクト”名に近いものだったかもしれない([]はWikipediaからの引用)。

日本のバンドで比較すると、あるプロジェクトに基づいたバンドという観点から言えば、杉山清貴&オメガトライヴに近いかもしれないし、大学時代の仲間が絡んでいるとすれば、世良公則&ツイストにも近いとも言えるが、やはりどちらとも微妙に違う(どこがどう違うが、ご興味のある方はお調べになってみても楽しいと思います)。今も残る文献を見る限り、独特のスタンスで活動していたバンドであったと言って間違いないようだ。

MARI & REDSTRIPESのメンバーは[青山 純(Dr)、新井田耕造(Dr)、竹内まりや(Back Vocal)、安部恭弘(Back Vocal)、平井夏美(Back Vocal)、永田一郎〈エルトン永田〉(Key)、内田龍男(Gu)、田上正和(Gu)、小池秀彦(Key) ほか 総勢16名]だったという([]はWikipediaからの引用)。ギターはともかく、ドラムが複数在籍している時点で特異なバンドであることが分かる。前述の通り、杉が大学時代に参加した軽音楽サークルで結成したバンドのピープルが前身で、杉のオフィシャルサイトを見ると、そのピープルはコンテストに参加することで名をあげていったようだ。興味深いのは、そのメンバー。のちの日本の音楽シーンを担うミュージシャンたちが揃っているのは、それだけ杉には学生時代から強烈な求心力があったということなのだろう。とりわけ注目したいのは平井夏美氏。氏は松田聖子の「瑠璃色の地球」や井上陽水の「少年時代」の作曲で知られる川原伸司氏のこと──つまり、川原氏の別名が平井夏美で、本名では参加できなかったので変名を使ったそうなのだが(なぜ本名で参加できなかったというと、氏がMARI & REDSTRIPESのディレクターであり、所属していたレコード会社の当時の規約でディレクターが作曲などに関わることが禁じられていたからだという)、どうやらこの平井氏=川原氏がMARI & REDSTRIPESの首謀者であったようだ。ウェブマガジン『大人のMusic Calendar』2019年3月25日付、“42年前の今日1977年3月25日、杉真理が「思い出の渦」でデビュー”と題された記事にこうある。[レコード会社の上層部は経費対効果を考え、スタジオ・ミュージシャンを起用するように指示を出したが、A&Rとして、制作現場の陣頭指揮をとっていた平井夏美こと、川原伸司(当時はビクターの社員だったため、アーティストとして関わる際には平井夏美と名乗っていた!)はそれを頑なに固辞している。彼は学生たちが集まって、何かを作り上げる、そんな瞬間をドキュメントしたいと思っていたそうだ。

ちなみにデビューが杉真理名義ではなく、MARI&RED STRIPES、杉真理&RED STRIPESなのは、竹内まりや&RED STRIPES、安部恭弘&RED STRIPES…と、続けてリリースする構想があったからだという]([]は『大人のMusic Calendar』からの引用)。その記事を読んで合点がいった。本作『MARI&RED STRIPES』に収められた音像はとにかく活き活きとしている。そこがまさにこのバンドの本質であったのだ。

OKMusic編集部

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