『Night Food』の
とらわれない音楽性に
EGO-WRAPPIN'本来の魅力を発見

『Night Food』('02)/EGO-WRAPPIN'

『Night Food』('02)/EGO-WRAPPIN'

6月30日、EGO-WRAPPIN'のヴォーカリスト、中納良恵の3rdアルバム『あまい』がリリースされたので、今週は本隊のアルバムを取り上げてみたい。こちらも3rdアルバム『Night Food』である。本文にも書いたが、EGO-WRAPPIN'と言うと「〜Midnight Dejavu〜色彩のブルース」や「くちばしにチェリー」がヒットした頃、ジャズや昭和歌謡と言ったキーワードで語れることもあったが、果たしてその見立てはどうだったのか…と言った辺りを調べてみた。

サウンドはお洒落というよりも泥臭い

本作『Night Food』、そしてEGO-WRAPPIN'というバンド自体は、一時期“ジャズや昭和歌謡の影響を受けた”などと形容されていたようで、ついぞここまで彼らの音源を聴き込んでこなかった自分でも、大体そんな感じだろうとぼんやりと考えていた。だが、同作を聴いて認識を改めた。改めたというか、新たにした…と言ったほうがいいかもしれない。アルバムのオープニングであるM1「BIG NOISE FROM WINNETKA~黒アリのマーチングバンド」は冒頭部分がディキシーランドジャズのカバーであるので、そう大きく間違いではないのだろうけれども、ジャズのフレイバーが強いのかと言えば決してそうでもないし、少なくとも“昭和歌謡”のイメージはないと思う。当時そう形容されたことに対して当のメンバーも戸惑いがあったようだが、今さらながらそれもそうだろうと同意するし、気の毒に…とすら思う。

それでは『Night Food』に収められた楽曲は何かと言えば、やはりロックという言い方が相応しいのでないだろうか。もっと言えば(やや乱暴だろうが)ヒップホップに近いものなのではないかと思ったところだ。何を指してそう思ったのか。以下、楽曲を解説していこう。

まずM1「BIG NOISE FROM WINNETKA~黒アリのマーチングバンド」。先ほども述べた通り、Bob Crosby And The Bob Catsのカバー曲から入ってオリジナルに展開していく。途中から聴こえてくるウォーキングベースは確かにジャジーな雰囲気ではあるのだが、それよりも何よりもド頭から鳴り響くドラムが強烈だ。これはアフリカンな印象がある。奥行きのある、実にいい音で録れていて、響きがとても生々しい。ジャジーでお洒落な雰囲気…というよりも、泥臭いと言ったほうがいい。ピアノもトランペットも重なっていくが、いずれも渋い感じだ。歌が入ってからは、最初のフレーズの音域がそんなに高くないこともあってか、中納良恵(Vo)の声が若干、昭和の懐メロがかっているような感じもあって、“まぁ、この辺は強引に昭和歌謡と結び付けられなくもないか…”などと思うのも束の間、ライヴテイクかと聴き間違うようなアドリブが飛び出してきて、そのレトロ感は一気に消し飛ぶ。とにかく歌にパンチが効いているし、ドライブ感に満ちている。さらには、密集していくバンドサウンドにヴォーカルが拮抗していく様子が極めてスリリングで、アルバムの1曲目からして、この人たちの音楽は決して耳障りがいいだけのものではないことを示しているかのようだ。ここだけでも、EGO-WRAPPIN'が昭和歌謡を標榜していないことは分かるだろう。歌唱を中心に据えているなら、こんなアンサンブルはない。かと思えば、その後のサックスのソロ~ブラスはメロディアスかつポップで親しみやすい旋律を放つ。楽曲全体はスカというか、ロックステディというか、ダンサブルに進行しつつ、アウトロに近いところでどんどんテンポアップしていき、後半は2トーンというか、ほとんどブラストビートのようになって終わっていくのも、ライヴ感があって面白い。

《踊れおんぼろなリズム/飲み込めや はきだせや/踊れおんぼろなリズム/踊れおんぼろな愛を》《踊れやジャングル/熱帯夜の綱渡り/踊れやジャングル/甘い水にたかって/踊れやジャングル/愛を土に返す/踊れやジャングル/あの黒アリのマーチングバンド》(M1「BIG NOISE FROM WINNETKA~黒アリのマーチングバンド」)。

M1が決して《おんぼろなリズム》だとは思わないけれど、聴く人の身体を本能的に揺らすビートがこの楽曲の本質であることを歌詞でも言い表しているように思える。

OKMusic編集部

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