情感にあふれた
陰影のある歌を聴かせる
マリア・マッキーの『永遠の罪』
ソロとしての活動
このデビューソロ作はローン・ジャスティス時代とは違って、カントリー系の要素よりもアメリカンロック的な要素が強くなっており、ボーカルはもちろんソングライティングやアレンジ面もよく練られている。ソングライターとして、また実直なロックシンガーとして文句なしの仕上がりになった。アルバムジャケットのマッキーのポートレートはとても美しく、当時ジャケ買いした人も少なくなかった。
本作『永遠の罪』について
また、バックはジェイホークスの他、ブルース・ブロディ(前作と同様)、黒人女性コーラス、スタックスでお馴染みのメンフィスホーンズ(泥臭さが最高!)、ジム・ケルトナー、ドン・ウォズ、ローン・ジャスティス時代の盟友2人(ドン・ヘフィントン、マーヴィン・エツィオーニ)、ベンモント・テンチ(ハートブレイカーズ)などのミュージシャンが参加している。
収録曲は全部で10曲。カントリーあり、サザンソウルあり、ロックあり、ポップスありとサウンドバリエーションに富んではいるが、全ての曲がマッキーのフィルターを通して解釈されているので、どのナンバーもバランス良く整然と並んでいる。フィリーソウル風の1曲目「アイム・ゴナ・スーズ・ユー」は絶品で、ストリングスをはじめ、バックの黒人女性コーラスもばっちり! また、これまで聴いたことのなかったマッキーのシャウトもすごいのひと言。ここから最後まで、息をつく間もなく彼女のヴォーカルに引き込まれてしまうのだ。印象的なのは、アルバム全編を彩るゲイリー・ローリスのギターワークで、決してうまくはないのだが、カントリーでもソウルでも彼ならではの歌心あるプレイがとても味わい深い。
僕自身、このアルバムを何回聴いたのか覚えてないぐらいたくさん聴いた。それなのに、飽きるどころかいつも新鮮な気持ちになるのだから不思議な作品だと思う。最後に、前作の美しさとは対照的な素のマッキーを捉えたジャケットのモノクロ写真は、デニス・ホッパーの手によるものである。
TEXT:河崎直人