ミュージカルの授業を通して、それを
体現する“私たち”の魅力を届ける公
演に! ~明治座『SCORE‼』座長の中
川晃教とゲストの坂元健児・上口耕平
の取材会レポート~

アメリカン・ハイスクールの先生に扮した中川晃教が、様々なルーツを持つ個性豊かな生徒たちと一緒にミュージカルの世界を紐解いていく『SCORE!!~Musical High School~』(2021年7月24日(土)・25日(日)明治座にて上演)。中川と特別講師役の坂元健児、学級委員役の上口耕平が語る、セットリストや本作ならではの見どころとは?
ミュージカル界は混み合っている⁉
中川晃教
――中川さんが“先生”、坂元さんが“特別講師”、上口さんが“学級委員”としてミュージカルの世界を紐解く公演とのことですが、実際のところどんな内容なのでしょう?
中川:2部構成になっていて、第1部では僕が先生役として授業を行いながら、生徒役の皆さんと一緒に歌やミュージカルの面白さを届けていきます。しっかりとした脚本があるんですが、そこに皆さんの個性もプラスアルファされていく形ですね。そして第2部は、第1部で学んだことの回収みたいなものもありつつのショータイム。キャストの皆さんそれぞれの持っている素晴らしさが、存分にお客様に伝わるような構成になっています。
坂元:僕はアッキー先生の教室に招かれる特別講師ということで、生徒役の皆さんに対してはビシバシ厳しく行こうかなと(笑)。お客さんとの橋渡し的な役割でもあるので、お客さんも生徒になった気分で一緒にミュージカルの勉強ができるように、うまく巻き込んでいきたいですね。
上口:僕はもともと学級委員とか生徒会長をやってたタイプなので、そこはやりやすいのかなと。今回は、気付いたら宇宙のほうまで話がいってしまうスペシャルな先生お二人が揃っているので(笑)、学級委員として時にはツッコませていただいたりもできたらと思ってます。
――坂元さんと上口さんのご出演は、座長である中川さんからのご指名ですか?
中川:はいそうです! 近年のミュージカル界って割とこう……混み合ってるじゃないですか。
坂元・上口:ふははは!
中川:劇団四季や宝塚出身の方はもちろんのこと、声優の方々や2.5次元の方々や芸人さん、そこに僕と同じように歌手から出てきた方がいたりと、幅広い皆さんが集まっていて、ミュージカルシーンは今が一番熱いんじゃないかとさえ思います。そんななか、サカケンさんと言えば誰もが知っている「心配ないさ」という“ネタ”をお持ちの方で(笑)。
坂元:うん、かれこれ20年以上ネタにされてるね(笑)。
坂元健児
中川:この間の井上芳雄さんの“裏切らないフェス”(『井上芳雄 by MYSELF』スペシャルライブ配信)でご一緒した時、20年間しっかりと実績を積まれてきた上で今でも体を張っているサカケンさんのすごさを改めて感じたんです。だから今回ご一緒できてすごく嬉しいです。
坂元:ありがとうございます。アッキーとは『キャンディード』(’ 04)とか『アワ・ハウス』(’ 06)以来、しばらく共演してなかったから、お話をいただいた時は僕も嬉しかった。
中川:久しぶりですよね~。尊敬する先輩のサカケンさんと、今回は恐れ多くも先生と講師という対等の関係。いつかブチ切れられるんじゃないかって、内心ピクピクしてるんですけど(笑)。
坂元:いやいやいや、それはないです(笑)。
中川:はい、すごく優しいです(笑)。そして耕平くんは、共演は初めてなんですけど、かつて「歌のコツってありますか?」みたいに聞かれたことがあって。あれ、もう何年前?
上口:もう5年くらい前ですね。
中川:だよね。今やミュージカル界のホープだけど、そういうふうになるちょっと前にお話をする機会があって、これからさらに羽ばたこうとしてる耕平くんに来てもらえたら嬉しいなと思ってお声がけしました。
上口:すっごく嬉しかったです。先ほどおっしゃっていた、教えていただいた時間のことも鮮明に覚えているので、先生と生徒として稽古をしているとその時の気持ちがぶわって蘇ってくるんです。健児さんにも僕、前に共演した時にたくさん教えていただいていて。
上口耕平
坂元:『道化の瞳』(’ 14)の時? 俺、教えたこと何もないと思うけど(笑)。
上口:あるんですよ! だからお二人が先生という関係性は僕にとってすごくリアルで、学級委員として「聴けよみんな!すごいこと言ってんだからな!」って、胸を張って言えるんです(笑)。
坂元:確かに、学級委員はぴったりだよね(笑)。頼もしいなと思ってます。
――セットリストはどんな感じですか?
中川:それぞれの代表曲もあるけれど、そこに縛ってはいないですね。みんな自分が歌いたい曲をいくつか出していて、その中から演出家の先生が選んだものもあれば、第1部にはアンドリュー・ロイド=ウェバーやロジャース&ハマースタイン、バーンスタインにスポットを当てるところがあるので、彼らの代表作からのナンバーを割り振ったりも。僕は……何歌うんだろう?
上口:ちょっと先生!(笑)
中川:あ、思い出した(笑)。僕がゲスト出演したマシュー・モリソンさんのコンサート(’ 18)で彼が歌うのを聴いて以来、いつか歌いたいって思ってた『南太平洋』の「魅惑の宵」と、ロイド=ウェバーの『ジーザス・クライスト=スーパースター』から「スーパースター」を歌います。
上口:楽しみ~! 僕は、希望を出させていただいた『魔法にかけられて』の「So Close」と、バーンスタインの『ウエスト・サイド・ストーリー』から「トゥナイト」を。「トゥナイト」は夢咲ねねさんと歌うんですが、昨年の『ウエスト~』で僕はリフを、彼女はアニタを演じてたんですよ。リフとアニタがトニーとマリアになるって、すごく面白いなあと思いますね。
坂元:へえ~、みんな自分から希望出してたんだ。僕は「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」(『オペラ座の怪人』)と「スターズ」(『レ・ミゼラブル』)と言われて、「あ、これ歌うんだー」って。
中川・上口:はははは!
左から 上口耕平、中川晃教、坂元健児
中川:さすがサカケンさん、何でも来いって感じですね! 懐が大きい。
坂元:いやいや(笑)、まあ今回一番年上だからね。みんなとのバランスで、僕にそういうドシっとした歌をってことになったのかなと。どっちもコンサートとかで歌ったことはあるけど、久し振りの2曲。希望を出すことになってたとしても選んでたと思いますよ。
中川:早く聴きたい! ほかにも、石川由依さん、夢咲ねねさんの『アナと雪の女王』だったり、全員での『RENT』や『グレイテスト・ショーマン』だったり、バラエティに富んでいるけれど、“ミュージカルのスコア”っていうところはちゃんと守ってる感じのセットリストになると思います。それと実は今、僕が“先生”として歌う今回のテーマ曲を書いているところで。それを聴いていただければ、お客様にもゲストの皆さんにも、今回のコンセプトが分かってもらえるのかなって。今はもしかしたら、「ゲストとして歌うだけだと思ってのに意外とハダカにされる、詐欺だ!」って思ってる方もいるかもしれないけど(笑)、意地悪でやってるわけじゃなくて、お客様が「またミュージカルを観たい」と思ってくださるためなんだって、分かってもらえるような曲にしたいですね。
突発的なことがどんどん採用されている稽古場
左から 上口耕平、中川晃教、坂元健児
――お稽古の様子などはいかがでしょうか。
中川:まだ第1部の稽古を何回かしただけなんですけど、耕平くんの踊ってくれた「クール」(『ウエスト・サイド・ストーリー』)がかっこよかったですね! 本番でも踊ってくれるかわかりませんが、徳永ゆうきさん、おばたのお兄さん、東京力車の皆さんという、「このメンバーで踊るの⁉」って顔ぶれなんですけど(笑)、実際にリフを演じてた耕平くんが稽古場で教えているから説得力があって。
上口:「ちょっと、みんなに教えてあげて」って振られた時はびっくりしましたよ! 本当に突然でしたから。ええ~⁉と思いながらもこう、(指を鳴らして)♪ボーイ、ボーイって(笑)。
坂元:いやぁ、あれは面白かったよ! 徳永さん、ずーっと指鳴らしてるし(笑)。
上口:そう! すごい勢いで指パッチンされてるから、「違う違う」みたいな(笑)。でもそれくらい、突発的なことがどんどん生まれてる稽古場なので、これからどうなっていくのか楽しみです。
坂元:台本自体、全部この通りにやってくださいっていうんじゃなく、色々付け足してってくださいっていうホンだからね。夢咲ねねちゃんなんかはそういう即興みたいなの、ちょっと恥ずかしいみたいなんですけど、僕としては、恥ずかしいなら恥ずかしいままやればいいと思っていて。その人らしさが出れば、それが一番面白いんじゃないかっていう気がしてます。
坂元健児
中川:“サカケン先生”的に、佐藤友祐くんとかはどうでした? 稽古してみて。
坂元:まだちょっと緊張してるよね。若い子がいきなりこういう特殊な現場に来てるんだから当たり前なんだけど(笑)、台本通りやろうっていうところが見えるから、これからの稽古で僕がほぐしていってあげられたらいいのかなと。
上口:まだお若いんですよね?
中川:25歳とかだと思います。そういう若い子がどんどん出てくることに対しては先生、どうですか? さっきも言った通りミュージカル界、混み合ってるじゃないですか(笑)。
坂元:……早く潰したい。
中川・上口:ははははは!
上口:それ健児さん、7年前くらいに一緒に取材を受けた時も言ってましたよね、僕みたいなのを早く潰したいって(笑)。今それがフラッシュバックして、残ってて良かったって思いました(笑)。
中川:あははは! それくらい、お互い本気じゃなきゃいけないってことですよね。甘くないんです、ミュージカル界は(笑)。
上口:厳しいですね(笑)。あと稽古の様子っていうので思い出したのは、この大先輩お二人が時々ちょっと、“無”になってることで。あれってわざとですか?
上口耕平
坂元:違う違う、ただ次の展開が分からなくなってるだけ(笑)。
上口:ああ、確認してるんですね。いや僕、お二人を見てると緩急がすごいなって思ってて。パフォーマンスする瞬間に爆発するためには、抜くところは抜くのが秘訣なのかなって。
中川:さすが学級委員、よく見てるね!
坂元:本当に(笑)。でも抜くところ抜いてるのは今の段階だからで、本番ではそんなことないですから。僕は特別講師として、膨大なセリフ量があるアッキー先生をしっかり支えるつもりです。
中川:ありがとうございます。サカケンさんがそう言ってくださるので、僕はもう大船に乗ったつもりでいます!
――改めて、ミュージカルでもコンサートでもない『SCORE‼』ならではの見どころを今、どんなところに感じていますか?
坂元:ミュージカルの歴史とかを学べて勉強になるっていうのもありますけど、いちばんはやっぱり、幅広い方の声や個性に触れられるところじゃないですか? こういう公演だからこそ、それぞれが持っている、ミュージカルの舞台では観られないものがバンバン出てくると思います。僕自身、皆さんから色んなものを盗んでいきたいですね。
中川:そうですね、皆さんそれぞれの個性っていうのは強調できたらと思います。なぜミュージカルに興味を持ったのか、ミュージカルのどういうところが好きなのかって、僕が皆さんに聞くシーンが台本にあるんですけど、その答えがセリフを越えて本人の言葉になっていくと、そこに物語が生まれて新しい形の公演になるのかなって。
中川晃教
上口:その通りだと思います。色んなルーツを持つ方が、一つの“ミュージカル”というものの下に集まっているのが僕、とても面白いと思っていて。ミュージカルにはそれだけ色んな可能性が秘められているって、お客様に感じてもらえるような公演になる気がします。これをきっかけにミュージカルに興味を持つ方、出てみたいと思ってくださる方が増えたりしたら最高ですね。
中川:さすが学級委員、うまくまとめてくれてありがとう! お二人がおっしゃったように、僕が授業する歴史とか作曲家のことっていうのはきっかけに過ぎなくて、大事なのはそれを体現する“私たち”。授業の内容を踏まえて、それぞれが思う自分とミュージカルの魅力を自分なりに届ける場にできれば、お客様にとってもたくさんの発見や気付きがある公演になると思っています。
取材・文=町田麻子 撮影=中田智章

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