【鈴木このみ インタビュー】
鈴木このみらしい
『ひぐらしのなく頃に』の
世界観に寄り添えた
王道ではないけれども、
キャッチーな部分も残っている
ここから本題に移りまして、最新シングル「Missing Promise」の話をうかがっていきますが、基本的に褒めていこうと思います。
ありがとうございます! 褒めていただけると嬉しいです(笑)。
いや、真面目な話、前回インタビューをさせていただいた時、“新しい自分をどんどん開拓して、みんなを驚かせていきたい”とおっしゃっていましたが、今回のシングル「Missing Promise」は見事に新しい鈴木このみを開拓されたと思いますし、正直言ってちょっと驚きました。
ありがとうございます。やった!(笑) そもそも今回は『ひぐらしのなく頃に 卒』のエンディングテーマということで、これまではオープニングを任せていただくことが多かったので、エンディングを任せていただけたからこその遊びの幅みたいなものがあったと思うんです。個人的には今回は新しいチャレンジができたと思っています。
前作「Bursty Greedy Spider」(2021年5月発表のシングル)もアニソン感が薄い気はしたんですけど、今回の「Missing Promise」はそれ以上で、展開といい、サウンドといい、“アニソンもここまできたか!?”という印象ではありましたね。J-POPという観点で見ても、あまり他にない展開を持った楽曲ではないかと思います。
そうですね。言わば“王道ではない”という。けれども、キャッチーな部分も残っている感じもあって、絶妙なバランスだと思いますね。
アゲアゲな感じがまったくないわけではないのですが、しっとり落ち着いて聴かせているかと言ったらそうでもないという。
もともとエンディングテーマということで、バラードのつもりで制作を始めたんです。いろんな曲をコンペみたいなかたちで聴いていったんですけど、やっぱりこの曲だけが異質で。『ひぐらしのなく頃に 卒』という作品自体が異様な部分もすごく大きくて…結構グロテスクな作品なんですね。ショッキングなところがあったりして、アニメの中でも異端な作風だと思っているのですが、「Missing Promise」はだからこそできた曲というか。なので、作品に導かれて…じゃないですけど、そのおかげで新しい扉を開くことができた感覚がありますね。
エンディングテーマであり、タイアップのアニメ自体が異質な作風であったことが「Missing Promise」には影響しているということですか?
はい。コンペでいろんな曲を聴いていた時にこの曲が一番耳に残って、“ちょっと当初の予定とは違うけど、これでいこう”って私とスタッフ全員の意見が一致したので。
そうでしたか。「Missing Promise」は喉の手術を終えて最初のレコーディングでもありましたよね。
その意味でも、ここから新たにやっていこうという気持ちが、スタッフも含めてバシッと合った感じでしょうか?
バシッと合いましたね。みんな、攻めの姿勢だったんじゃないかと思います(笑)。
しっとりと聴かせる役割が多いように思うピアノやストリングスによるサウンドが、グイグイと全体を引っ張っている感じも面白いですよね。
ストリングスは豪華な仕上がりになっていると思いますし、緩急もついている感じなので、歌入れの時もそれに引っ張ってもらうじゃないですけど、そこで新しい歌い方みたいなものができたと思っています。
そんな「Missing Promise」において何が素晴らしいかと言ったら、やっぱりハーモニーじゃないかと。
おおっ! やったーっ! 今日、褒められているから、ちょっと歌がうまくなりそうです(笑)。ハモが結構多いので、サビの裏で合間に入ってくるハモを、本編とは別のキャラクターをイメージして歌ってみたりしたので面白かったです。
Aメロの終わりからBメロにかけてのコーラスワークは、いわゆるオクターブユニゾンですかね。あそこも超カッコ良いです。
ありがとうございます! レコーディングしていて、あそこはハーモニーのあるなしで印象がかなり変わると思いましたね。
そこから、今、おっしゃられたサビでのスキャットのハモが入るという。
そこはわりとソウルフルなイメージでした。ヴォーカル自体は無機質な感じで歌っているんです。神秘性みたいなものが大事かなと思ったので、感情を曝け出すというよりは、ジワジワと滲み出るくらいに止めておこうという感じだったんですけど、逆にサビのハモを歌っている人はすごく感情的なキャラクターでやってみたりして、いろんな人が渦巻いてます(笑)。
そうなんですよね。ハーモニーによって何人もキャラクターがいる感じなんですよ。で、歌詞も別れを予感させる内容ではあるので、アニメの物語において複数のキャラクターの身に何かが起こるであろうことを予感させるハーモニーでもあると思うんです。
そもそも『ひぐらしのなく頃に』という作品自体がすごく大きいものでもありますし、歴史もあって、その中へ新参者の私が入っていくということで、自分の中ではプレッシャーはあって。ちゃんと理解して歌わなくちゃいけないと思い、制作前に“『ひぐらしのなく頃に』の世界観の中で自分が歌って一番ハマるポイントはどこだろう?”みたいな話をたくさんした記憶がありますね。私の声って闇には染まりきらないと思うので、そこを突き詰めちゃうと、ちょっと偽物感が出ちゃうんじゃないかと。なので、わりときれいなところとか希望を残したまま、鈴木このみらしい『ひぐらしのなく頃に』の世界観に寄り添えたんじゃないかと思います。
なるほど。アニメ作品の世界観に完全に寄せることも不可能ではなかったとは思うんですが、それをやってしまうとアーティストとして歌う意味がないということでしょうか?
そうですね。手術したあとの声は透明度がすごく上がったと感じていたので、その意味でも“この曲は今の声で歌うとドンピシャにハマるんじゃないかな”と思っていました。