鈴木このみ

鈴木このみ

【鈴木このみ インタビュー】
鈴木このみらしい
『ひぐらしのなく頃に』の
世界観に寄り添えた

“鈴木このみの芯”を残したまま、
変わっていかなくちゃいけない

コーラスやハーモニーに関して言いますと、実は「Missing Promise」以上にカップリングの「Reset」がすごいのではないかと思っていまして。

おおっ! このインタビュー、録音しておきたいです(笑)。今回、カップリングもすごくこだわりましたね。

まず楽曲全体のことで言うと、サウンドは決して新しいものではなく、ジャズロックと言ってもいいオールドスタイルだと思います。でも、まったく古びた感じがなくて、新しさがすごくあります。

この曲は狙いというか、目的みたいなのがすごくはっきりとしていて、まずサウンド的に言うと、今ってライヴで声が出せないじゃないですか。そう考えた時、私にはミディアムテンポの曲が少ないってことに気づいて。今のライヴ形式(公演中に声援や歌唱といった大声を出す行為は禁止)になってから出した新曲って、意外と“Wow Wow, Yeah Yeah”が多くて、頭を抱えて悶えているみんなの姿を見てきた…

声を出しちゃダメだから耐えているという(苦笑)。

はい。だから、声が出せなくても勝手に身体が温まるもので、なおかつちょっとお洒落なものに挑戦してみたいという想いがあって、楽曲を作ってくださる小倉しんこうさんに“オシャシティな感じでお願いします”とざっくりとお願いしたんです(笑)。リモートでイメージを伝えて、小倉さんにコードを弾いてもらいながら、“あっ、それだとちょっと暗いかもしれないです”とか、“それはちょっとお洒落すぎて、従来の鈴木このみを置いて行ってるかもしれないです”とか、そういうやりとりをしながら曲を作っていだきました。

今までとは違うライヴ映えを意識しながら新しい曲を作り上げていった感じなんですね。

そうですね。この間、Billboard Live YOKOHAMAで歌わせていただいたんですけど(2021年6月6日@『toku ×鈴木このみ×やなぎなぎSpecial Live「bouquet」』)、その時に“こういう場所で映える曲がほしい”と咄嗟に思って、そのまま小倉さんにエピソードをお話して作っていただいた感じですね。

なるほど。「Reset」はメロディーや展開がChicagoというアメリカのロックバンドを彷彿させるし、渋いロック感があるんですよ。

確かに渋さはあるかもしれないですね。いい意味で「Missing Promise」は世界観がどっしり、しっかりしちゃっているので、そこに続く2曲目はとても難しくて。1曲目を引きずりすぎると、一枚のシングルとしてすごく重いものになっちゃうから、ハッピーなかたちで終わりたいという想いもあって、「Reset」はこのサウンドになったとも思いますね。

「Missing Promise」はハーモニーが素晴らしいと先ほど申し上げましたが、「Reset」は頭からひとりアカペラで、“山下達郎か!?”というほど手の込んだことをやっていますね(笑)。

あははは。「Reset」は本メロとハーモニー、それぞれレコーディングしている時間が同じくらいだったと思います。ハモがとにかく多かったんで。

“いったい何声入っているんだ?”というくらい重ねてますよね。

確かに。5、6はあるんじゃないですかね。

ド頭からハモってドカン!とくるのは自信の表れですね。

あははは。でも、そうかも…“声がピカピカになりました”と言わんばかりに(笑)。

その意図は確実に感じますし、聴き手としては“攻めてるなぁ”と思ったところではあります。開拓している感じはビシバシしますよ。それでいて、Aメロやサビはファンキーなんですが、BメロではコンテポラリーR&Bの流れがあったりして、メロディーには緩急がありますね。

そうですね。ただ、個人的には“歌い上げない”というのがすごく難しくて。メロに緩急があるからワッと行きたくなるんですけど、今回はライヴで“みんな、ついて来いよ!”っていうテンションではなく、“そっと側にいるよ”みたいなテンション感なので(笑)、“あまり歌いすぎない”という課題が大きかったと思いますね。個人的にはそういう歌い方に苦手意識がある…自分はグイグイと行くほうが得意なので、そこがちょっと大変でしたね。

オケだけを聴くとギターは跳ねているし、シェイカーも入っていますから、そこで歌を抑制するのは大変だったでしょうね。

めちゃくちゃ大変でした。やっぱりグイッと行きたくなるんですけど、もともとの狙いがはっきりしていたので“今回は我慢しよう”と(苦笑)。何回も録り直しましたね。最後まで録り終えても“やっぱり頭のところは歌いすぎたかもしれない”と思って録り直したり、実験をしながら作っていった感じです。

ヴォーカルのみならず、サウンド全体で楽曲の推進力を与えている感じですよね。そういう意味では“新しい自分を開拓する”という点において、「Reset」はご自身でも確かな手応えがあるんじゃないですか?

そうですね。単純に最近はシングルを作るのがすごく楽しくて。今、ライヴがないからこそ、カップリングにもいつも以上に時間をかけて、いつも以上に“今回のシングルの意味とは?”みたいなところをちゃんと考えながら作れたというのは大きかったですね。ライヴができない今、自分ができることはこれだったので。いつもだと、海外を飛び回ってライヴをいっぱいしながら、その裏で制作をしていくというスタイルだったんですけど、今回は考える時間がたくさんあったというのも、自分にとっては良かったのかなと思います。

喉の手術もありましたし、“自分が歌手としてどうあるべきか?”というところも見つめ直したんでしょうね。

手術後のリハビリも含めると、時間だけはたっぷりある状態でしたから、そう思うと今年はいろいろと考えていましたね。

今回のシングルは表題曲「Missing Promise」、カップリング曲「Reset」とも本当に素晴らしいと思います。もっと言うと、ここから新しいものが始まっていく予感がありますから、ニューシングルのリリース前にこんなことを言うのもどうかと思うのですが、“この次は何を見せてくれるんだろう?”って。

おおっ! 私のキャッチコピーが“進化し続けるアニソンシンガー”で、デビュー時からそれを掲げてやってきたから、個人的にはそう言われるのが一番嬉しいです。やっぱり9年間応援してくださっているファンの方もいらっしゃるので、“鈴木このみの芯”みたいなものは持ち続けなきゃいけない…それを置いてきぼりにしてまで変わりたくはないという想いはあるんですけど、変わっていかなくちゃいけないという気持ちもあるので、そういうふうに受け取っていただけて、今、とても嬉しく思っています。

「Reset」は“こんなこともできるのか!?”という感じが強かったですし、それが取ってつけた感じがないんですよ。

自分としては“玄人受け”がしすぎるのは嫌だと思っていて。それはそれで素晴らしいとは思うんですけど、自分はあくまでもキャッチーなところを残しながら、自分とは違う要素を少しずつ加えたいというタイプなので、それが今回はうまいバランスでできたと思いますね。

「Reset」はそうではないですけど、思いっきりソウルに寄ってブラックミュージックを歌い上げたりすることは、また違うんでしょうね。

聴いてもらう人がいるということが念頭にあるので、“変わっていこう”とか“新しいことをして驚かせよう”というのも行き当たりばったりではなく、ちゃんと計画的に練ってやっている感じはありますね。

そうですか。「Reset」にしてもメロディーやサウンドは“おっ!?”と思わせる変化があるとは思いますが、歌詞は可愛らしいラブソングですので、そこはこれまでの世界観から大きくかけ離れているわけではないですもんね。

今回は歌詞のプロットを書かせていただいていて、シングル一枚を通して“約束と愛情”がテーマにあるんですね。「Missing Promise」は約束を破って変わっていく“君”が許せなくて愛情が捻じれていってしまった人という曲になっていて、「Reset」はいっぱい約束を破ったりされるんだけど、日々変わっていく“君”が好きだという曲になっているんです。だから、方向は真逆ではあるんですけど、“より鈴木このみらしいのはどっち?”と訊かれたら、私が考える愛情に近いのは「Reset」のほうだと思います。

だからなのか、「Reset」は聴いててちょっとホッとする感じですよね。「Missing Promise」はスリリングですから。

「Missing Promise」はドラマチックな愛情だと思います。で、「Reset」のほうは日常に溶け込んでいる愛情みたいな感じがありますね。

取材:帆苅智之

シングル「Missing Promise」2021年8月25日発売 MAGES.
    • 【アニメ盤】(CD+DVD)
    • USSW-0310
    • ¥1,980(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • USSW-0309
    • ¥1,430(税込)
鈴木このみ プロフィール

スズキコノミ:1996年11月5日生まれ、大阪府出身。11年に『第5回全日本アニソングランプリ』決勝大会でグランプリを獲得し、翌12年に「CHOIR JAIL」で15歳でデ ビュー。TVアニメ『ノーゲーム・ノーライフ』オープニングテーマ 「This game」、TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』オープニングテーマ「Redo」など多くのTVアニメ主題歌を担当。TVアニメ『LOST SONG』では田村ゆかりとW主演声優を務め、オー プニング主題歌「歌えばそこに君がいるから」も歌唱。16年より4年連続でアジアツアーを行なっており、上海、シンセン、香港、台湾、フィリピンにてワンマンライヴを開催。23年3月には4年振りのアジアツアーを台湾、香港、ソウル、上海」にて開催。23年7月の『鈴木このみ Standing Live ~CALL~』『鈴木このみ Standing Live ~RESPONSE』公演ともにソールドアウト! 自身の誕生日である11月5日にはEX THEATER ROPPONGIにて『鈴木このみ Birthday Live 2023 ~CHEERS BURGER~』開催。鈴木このみ オフィシャルHP

「Missing Promise」MV

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着