フィルモア・イーストで
ライヴ録音された
タジ・マハールの異色作
『ザ・リアル・シング』
本作『ザ・リアル・シング』について
『ジャイアント・ステップ』に収録されていたインストナンバー「もうディキシーなんか吹くもんか(原題:Ain’t Gwine To Whistle Dixie(Any Mo’))」は9分以上に及ぶ熱演で、ジョン・ホールのギターソロとハワード・ジョンソンのバリトンサックスソロが素晴らしい。ちなみにこの曲「ファーザー・オン・ダウン・ザ・ロード」と同じ曲である。なお、チューバ4本のアンサンブル重低音は「スウィート・ママ・ジャニース」でたっぷり聴ける。ジャジーなブルースナンバー「ジョン・エイント・イット・ハード」でもチューバのアンサンブルは絶好調である。アルバムのラストを締め括るシャッフルナンバーの「これが、僕のブルースさ(原題:You Ain’t No Street Walker Mama, Honey But I Do Love The Way You Strut Your Stuff)」は19分近くあるが、タイトな演奏とメリハリのある構成でどんどん引き込まれていき、熱気あふれる大団円を迎える。ここでもジョン・ホールの好サポートが光っている。なお、収録曲は全部で10曲であったが、CD化に際して1曲(「シー・コート・ザ・ケイティ(アンド・レフト・ミー・ア・ミュール・トゥ・ライド)」)が追加収録されている。
本作のあと、このライヴ時のメンバーと『Happy Just To Be Like I Am』(’71)をリリース(ギターはジョン・ホールではなく、ホーシャル・ライトとジェシ・デイヴィス)し、4管チューバのほかスティールドラムを使うなど、タジがアメリカーナからワールドミュージックへと変わっていく予兆が見られる。
TEXT:河崎直人