チューリップ
『TAKE OFF(離陸)』に見る
“和製The Beatles”っぷりと
日本的情緒

歌詞に描かれた細やかな機微

と、徒然なるままに、楽曲解説をしてみた。もっとチューリップにもThe Beatlesにも詳しい人であれば、こんなものじゃない、深い考察ができるはずなので、ご興味を持った方は調べてみると楽しいと思う。それはそれとして、半可通な自分でも、この度チューリップがThe Beatlesの影響下にあることはよく分かったが、だからと言って、M1の時に少し述べたように、単なるThe Beatles好きのパロディーやコピーに堕してないところは、当たり前のことだが、決して見逃してはいけない重要な部分ではないだろうか。それはメロディーやコード、あるいは財津、姫野の歌声など、さまざまなファクターがあるはずだが、最も大きな要素は歌詞だと思う。

《君はもうみつけただろう/くちぐせだった 愛のくらし/ぽくは ずっとずっと同じ/くものようにただ浮かんでいる/しあわせは しあわせさ/ほんのささやかなものだって/汽車をまつ そんな時/ふと思い出す 君のほほえみ》(M3「そんな時」)。

《いつものように 君を駅におくる/だけど立ちされずに/僕はタバコをつけて 白いけむり/白い息がのこる/いつも いつでも 君と会える/でも別れは いつもいつもつらいものさ》《いつものように 君を駅におくる/だけど立ちされずに》(M5「サンセット通り」)。

《自分の大きな夢を追うことが/今までの僕の仕事だったけど/君を幸せにするそれこそが/これからの僕の生きるしるし》《ただ風の中に たたずんで/君はやがてみつけていった/ただ風に涙をあずけて/君は女になっていった》《君の家へ続くあの道を/今 足もとにたしかめて/今日から君は ただの女/今日から僕は ただの男》(M10「青春の影」)。

《若い日 この人生は/ぼくのものだと 信じてた/でも今 すべての人は/心をよせるべきさ/ぼくの人生は 君のものであり/君の人生は ぼくのものさ/だってほほえみは とてもみじかく咲いて/悲しみはいつもいつでも すぐにやってくるから》(M12「悲しみはいつも」)。

代表曲なだけあってM10がそれが顕著に出ていると思う。単なる男女の恋物語だけではないばかりか、そこにある機微も細やかに描いているのは、チューリップの大きな特徴と言える。この情緒を指して“日本的”と言い切ってしまうのはやや乱暴かもしれないけれど、その辺はリバプールでは生まれない、彼らの結成の地である九州・博多ならではものなのではないだろうか。

TEXT:帆苅智之

アルバム『TAKE OFF(離陸)』1974年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.TAKE OFF
    • 2.明日の風
    • 3.そんな時
    • 4.見すごしていた愛
    • 5.サンセット通り
    • 6.おしえておくれ
    • 7.セプテンバー
    • 8.あの、ゆるやかな日々
    • 9.ハートせつなく
    • 10.青春の影
    • 11.愛は不思議なもの
    • 12.悲しみはいつも
    • 13.ぼくは陽気なのんきもの
    • 14.笑顔をみせて
『TAKE OFF(離陸)』('74)/チューリップ

OKMusic編集部

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