LAMP IN TERREN・松本と東海オンエア
・としみつ 友情から生まれた予測不
能イベントの行方は

TOSHIMITSU & Dai Matsumoto presents “FRI+END”

2021.9.2 渋谷CLUB QUATTRO
結成から数えれば15年にわたりバンドシーンをサバイブしてきたLAMP IN TERRENのフロントマン・松本大と、トップYouTuber・東海オンエアのメンバーであるTOSHIMITSU。企画時点では「異種格闘技すぎん?」とも思った、とMCで松本が振り返っていたように、『TOSHIMITSU & Dai Matsumoto presents “FRI+END”』はたしかに他に類を見ない組み合わせとなった。ただし、このイベントを語る上で重要なのは、それが決して奇をてらったり、業界に新風を吹かせることを意図したり、あるいはビジネス的要素が絡んだりして実現したのではなく、あくまで友情と音楽愛に端を発して生まれたものであり、実際に観ていてそのことがありありと伝わってくる内容となっていた点だと思う。
2年ほど前にフェス会場で知り合ってから親交を深めてきたという両者。松本が東海オンエアの動画に出たりBGMを制作したりと、仲が良いのは知っていた。が、リスナーの層はイコールではないだろうし、音楽性が似通っているわけでもないから、実際に対バンを行なったときにどんな空間が生まれるのかは予測不能。さて、どんなライブになるのだろうか?とステージを見つめていると、superJulyなるオープニングアクトに出会い頭の一発をかまされることとなる。
superJuly
揃いのデニムシャツに黒パンというコーデで決め、ふた昔前のロックミュージシャン的言動で笑いを誘うトシとか言うボーカルと、アコギを提げたマツ(前髪をアップにしてるのが超新鮮)は、いうまでもなくTOSHIMITSUと松本。ユニット名は多分、二人とも7月生まれだから。ただし、ひとたび歌が始まればちゃんとガチだから困る。CHAGE and ASKAの「LOVE SONG」とSMAP「SHAKE」のカバーを披露したのだが、抜群の声量といいハイトーンの力強さといいハモりの美しさといい、ネタ枠(?)にはもったいない仕上がりで、トシは熱いハーモニカソロまで繰り出したのだった。
続いて登場したのは、ゲスト的立ち位置となるHOWL BE QUIET。ハウルとテレンも長い付き合いで、過去にはスプリットツアーを回ったりもしていたから、友情の名を冠したこのイベントにはぴったりの存在である。まずはゆったりとしたAOR風味の曲調に、黒木健志(Gt)の弾くシングルコイルの歯切れ良いギターサウンドが良いアクセントになった「ベストフレンド」から。続く「ラブフェチ」は、冒頭から厚く激しく音をぶつけ合ってからの弾むような4つ打ちサウンドへの展開が気持ちいい。ミドルバラードの「名脇役」を竹縄航太(Vo/Gt/Key)が甘く、どこかほろ苦さも感じさせるボーカリゼーションで歌い上げた後は、「ここらで一発、渋谷クアトロをあっためていきたいと思うんですけど、準備できてますか?」と投げかけ、彼らのポップ面を象徴するカラフルなナンバー「MONSTER WORLD」と、一転してスリリングでエッジーなロックチューン「染み」を連打。主役2組の登場を前に、観客たちからの大きなリアクションを呼び込んでみせた。
HOWL BE QUIET
先にメンバーがスタンバイしたステージへと、ご機嫌なイントロとともに勢い良く躍り出るやいなや「渋谷、よろしくお願いします! YouTubeから飛び出してきました、TOSHIMITSUといいます!」と高らかに口上。「Freedom!」からTOSHIMITSUのライブはスタートした。返しのスピーカーに足をかけ拳を突き上げたり、随所で大きな身振りを交えたりするステージングは、先人へのリスペクトに満ちたロックスター然としたもの。それを借り物ではなく衒いもなくやってのけるのが痛快だ。ラウド&パーティーチューン「BAKANINARE」でシャウト混じりの熱唱を叩きつけた後は、クラップに乗って「Viva!!」の爽やかなポップネスが場内を席巻。とにかく楽しく、猛烈な勢いでライブは進んでいく。
TOSHIMITSU
TOSHIMITSU
かつてバンドを組んでいた頃以来、対バンライブは5年ぶりだと嬉しそうに明かした後は、観客たちに振付をレクチャーしてからの「C.A.K.E」、「LOVE SONG」で場内の熱気はさらに上昇。「LOVE SONG」のサビ、マイクスタンドの前でやたらとシリアスな顔で正拳突きのポーズを繰り返す姿はまさに男……いや、漢そのものであった。後半の「浪漫ticSTAR」から「スーパースター」でもそのテンションは冷めやらず、オーディエンスもみな飛び跳ねて応える。全7曲、ノレない曲は一切なし。全曲ハイエナジーでハイカロリー。なのに終わってみれば清々しさすら感じさせるとは。筆者をはじめ、バンドのライブを見慣れた人にとっては、ちょっとしたカルチャーショックとでも呼びたい衝撃的エンターテインメントだった。
TOSHIMITSU
LAMP IN TERREN
LAMP IN TERRENがサウンドチェックに現れたかと思いきや、そのまま「みんなが準備できたら始めますんで」と松本。川口大喜(Dr)の前で全員が拳を付き合わせて気合を入れ、「(TOSHIMITSUのライブが)ただただカッコいいなと思ったんで、ガチで歌います」と「BABY STEP」からライブをスタートさせた。曲調でいえばロックバラードであり、陽性に振り切れた場内の熱を一旦自分たちのものに塗り替えるような立ち上がりだが、落ちサビで松本がオフマイクで歌う箇所の後、一気にバンドサウンドが弾けるあたりなどはテレン流のハイライト。拍動のようなドラムが会場を揺るがし、大屋真太郎が歌うようなギターを弾く。
LAMP IN TERREN
LAMP IN TERREN
6月にリリースされた「心身二元論」は、R&Bやシティポップを思わせる隙間の多いアンサンブルと抑揚の少ないメロディが新鮮で、アレンジの変化ゆえか静と動が際立ちよりソリッドな印象を受けた「New Clothes」では、大屋と中原健仁(Ba)がステージ前端まで進み出て演奏に熱を込める。「どうしてもこの曲を一緒にやりたくて」と、TOSHIMITSUとのツインボーカルが実現したのは「オーバーフロー」だ。彼らのレパートリー内でも屈指の疾走感を誇るこの曲は、TOSHIMITSUの声質や歌い方によくマッチしている。あと、観る側としては、テレンのライブのステージに、こんなによく動く人がいるのはとても新鮮。メンバーも楽しそうだ。
LAMP IN TERREN
LAMP IN TERREN
「憧れ」や「好き」を原動力に音楽活動を続けるTOSHIMITSUへの賛辞とともに自己との親和性を語った後、前日にリリースしたばかりの新曲「ニューワールド・ガイダンス」も初披露された。打ち込み混じりのクールな音像に始まり、やがて生音のサウンドが炸裂するこの曲。変わりゆく世の中で生きていくための指針たるメッセージを吠えるように歌う松本の姿とともに、観客たちに深く刻まれたに違いない。切り口こそ違うが、昨年の「EYE」もコロナ禍以降に世に出た、「生きる」ことを歌う曲。アンコールでは、高い光量で照らされたステージから同曲を高らかに歌い鳴らしたのだった。
TOSHIMITSU / LAMP IN TERREN
良い意味でノリで決めたっぽい要素やコラボもあって、お祭り感たっぷりなイベントだったが、個々のライブに目を向ければ、それぞれの流儀でそれぞれの表現を全うするものばかりだった。ひょんなことから出会い、真摯に音楽と向き合い憧れる者同士、いつの日かまた肩を並べてステージに上がってほしい。

取材・文=風間大洋 撮影=浜野カズシ
LAMP IN TERREN / TOSHIMITSU / HOWL BE QUIET

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