崎山蒼志

崎山蒼志

【崎山蒼志 インタビュー】
自身の音楽を見つめた結果、
炙り出された多面性

崎山流モダンロックな「嘘じゃない」や「逆行」、いきものがかりの水野良樹と共作した「風来」、リーガルリリーと共同アレンジした「過剰/異常 with リーガルリリー」など、先行配信曲だけでも多面的な作品を予感させたアルバム『Face To Time Case』。やはりアルバムスケールでは、より意表を突くジャンルや表現も顔を見せる。ジャンル語りを無効にする19歳の脳内宇宙を覗く。

個人的には
より好きなことを表現できた

前作の『find fuse in youth』(2021年1月発表のアルバム)がさまざまな方向性を試行しているアルバムだったので、次作はその中から選んでいかれるのかなと思ったんですが、今回もまた多様な内容になりましたね。

タイアップの作品によってそれぞれ違う印象を受けながら曲を書いていっていたので、その後にこれらをまとめるアルバムとなると、多面的な感じになると思ったんです。だったら、振りきっちゃいたいという気持ちがありました。

今回は一個の軸みたいなものがあってアルバム感はあるなと。ご自身で違いは感じていますか?

個人的にはより好きなことをやったアルバムでもありますし、この一年間、高校を卒業して、音楽をちゃんとやってきた中で、曲の作り方も煮詰まったり、それをまた突破したりと音楽に捧げる時間が大きくなって、そこで今までとの表現方法の違いとか、やりたかったこともできたから制作は楽しかったですね。あと、本当にいろんな曲があるので曲順をどうしようかと思ったんですけど、今の曲順にした時にしっくりきたというか、前作に引き続き表題曲みたいな部分が最後の「タイムケース」にはあって、この曲のイメージがアルバムをまとめてくれた感じがありました。

少なからずミュージシャン一本になったことは創作に影響したわけですね。

そうですね。最初の頃はよりいっそう思っていたんです。責任感じゃないけど、音楽を今まで以上にやっていくんだという気持ちが。上京したのもあるんですけど。それで最初はわりと悩んだりしていて。でも、いろんな音楽が好きなので、広く音楽を聴いてこういう作品を作りたいっていう気持ちはあるんです。上京したからこそ振り返る時間も多くなったし、実は原点に立ち返ることもできたというのが今回のアルバムだと思います。

バンドアレンジでも前回より一歩踏み込んだり?

今作の1曲目「舟を漕ぐ」と10曲目「通り雨、うつつのナラカ」では、僕のアレンジを主体としたバンドレコーディングを行ないました。レコーディングメンバーはライヴでご一緒する方々だったからコミュニケーションもとりやすかったですし、テクニカルな方々なので柔軟に対応してくれて、出てくるアイディアもフレーズも面白くて。こういう録音方法は初めてでしたが、もともとやってみたかったんです。

akkinさんがアレンジされている「逆行」は、安定したコードとベースラインがつくといわゆる日本のロックになるという驚きがありました。

そうですね。「Helix」もakkinさんとやっている曲で。プロデュースとアレンジがakkinさんです。

「Helix」はその中でもちょっと混沌とした面もありますね。

もともと《Helix》というサビのフレーズが弾き語りの時点であって、ブラッシュアップしてアルバムに入れたいと毎回思っていたんです。で、akkinさんならうまくやってくれるんじゃないかと思ったんです。「逆行」の時もご一緒して感じたんですけど、「逆行」の時よりグリッチな、壊れちゃっているような部分と、だけど安定感もあるみたいな感じを引き立たせてくれていて、すごく素敵なアレンジだと思いましたね。

ちなみに“Helix”は“螺旋”という意味ですが、この1〜2年ぐらいで書くことが変わってきたと自覚される部分はありますか?

案外「Helix」は前の僕っぽいと思っていて。ちょっと攻撃的だったり混沌としている歌詞は今も書くんですけど、攻撃的っていうちょっと毒性がある感じが昔の自分っぽいと思っていました。

自分のことを俯瞰していますね。

ええ(笑)。でも、そんな感じがしていますね。最近は自然に書くと「舟を漕ぐ」のような歌詞が多い気はします。

この「舟を漕ぐ」の歌詞は時間に関する表現なのかなと思ったんです。

あぁ、確かに。ちょうど“自分の音楽って何なんだろう?”とか“自分の音楽をどうしようかな?”とかすごく思っちゃっていたんです。「Samidare」(アルバム『find fuse in youth』収録曲)という曲を作った当時は、自分の中で “あっ、これだ!”と思ったけど、そのあとに書いた曲に更新されていっている感じがしたんですね。でも、やっぱり「Samidare」はいろんな方が知ってくださっているし、意外と本当の自分、崎山蒼志の感じがすると思っています。16ビートで、ちょっと泣きにいくみたいな。で、この「舟を漕ぐ」は自分が幼少期に読んでもらっていた絵本とかをイメージして、立ち返って書いた曲なんです。

「Samidare」のイメージが強い中で“自分には他の面もあるのに”と思っていた時期もあると?

あるんですけど、やっぱりすごく自分らしさ全開の曲だったと今では思います。「舟を漕ぐ」で影響を受けた曲は「Samidare」ですね。違う感じになっているんですけど。

なるほど。あと、“舟を漕ぐ”って眠りそうな状態も指しますよね。

そうです。自分が影響を受けた『よるくま』(作:酒井駒子)って絵本があって。幼少期に読んでもらったんですけど、夢の中にいるのか寝ちゃったのか、実際に感じている状態なのか分からないというのが続く絵本なんです。“よるくま”っていう熊さんがきて、お母さんを一緒に探しに行くんですけど、最後はベッドにいるような幻想的な可愛い絵本なんですね。だから、眠りにいっている感じもあります。
崎山蒼志
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OKMusic編集部

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